悠理の動揺
話しを黙って聞いていた怜央は、ふぅ、と息を静香に吐き出し空を見上げる。
悠理は話が終わったというように、黙して、ただただ、地面に視線を向けていた。
「――それで?」
「……え」
ポツリと怜央が漏らした言葉の意味を悠理は理解する事が出来なかった。
「ですから、それで貴女はその話しを私にしてどうしたかったんですか? まさか、この話をしたら私やあの人達が貴女を仲間から外すなんて、思ってないですよね?」
「思ってる」
その時、悠理の頬に小さな破裂したような音と共に痛みが走った。
「馬鹿ですか!? そんな下らない昔話しを聞かされただけで、今まで一緒に過ごした仲間を――友人を切り捨てるはずないじゃない!!」
涙目になって胸ぐらを掴みかかる怜央に悠理は困惑し、周囲からは何事かとチラチと視線を集める。
「怜央ちゃん、その……他の人たちがこっち見てるよ」
「そんなの関係ないわよ! いいですか? 貴女は貴女でしょ? よく分からない化け物に生かされてる? 全然違うわね、悠理、貴女が化け物を利用して生きているのよ。ちゃんとその主従関係をはっきりさせるべきね」
「主従関係?」
「そうよ、何を勘違いしているのか分からないですけど、そのリリアンとかいう化け物は低俗にして低能ですね」
「えっとぉ……」
「あっ、言い忘れてましたけど今の会話全て包み隠さず睦月達も聞いていますわよ」
そう言って、ポケットから携帯電話を取り出し見せる。
「院内で……あっ」
「ふふん、気付いたようね。私達がいるここは携帯の使用を許可されている場所で、蛍の病室も携帯が使えるのよ」
怜央は携帯に耳をあてて、短いやり取りをしたのち通話を切りベンチから立ち上がる。
「さっ、行くわよ」
「行くって?」
「もちろん、睦月達のところよ」
何かを言いたげな悠理にお構いなく、怜央は無理やりに手を引く。
エレベーターに乗り、廊下を歩き進むと水無月蛍という表札の入った部屋にたどり着く。
悠理はこのまま逃げ出したい、怜央のこの手を振りほどけば逃げ出すことは容易だが、彼女の先程の言葉が呪縛となり、逃げだすことが出来ない。
「入るわよ」
怜央がドアを開ける。
室内にはベッドに横たわる蛍と三人の仲間達が椅子に腰かけていて、戻って来た二人に睦月は静かに立ちあがる。
「悠理こっちに来て」
言われるがままに悠理は睦月の傍に歩むが、やはり視線を交わす事は出来ず、居心地の悪さと罪悪感で顔を少し俯かせてしまう。
「悠理、ごめんね」
「えっ、え? 睦月……ちゃん?」
睦月は深く頭を下げた。なぜ、自分が謝られなければいけないのか分からず、動揺を隠せず視線を激しく彷徨わせる。
おはようございます、上月です(*'▽')
久しぶりの投稿です。
色々と忙しく、書きたいのに書く暇がなくモンモンとした一週間でした(;'∀')
次回の投稿は今夜です!
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