瞳のない死体
静かな夜だった。
生から死へ――動から静へ移り変わるその瞬間でさえ、悲鳴を上げる事叶わずに虚無へと返っていった。
《悠理ィ、話しが違うんじゃない? 私は楽に殺していいなんて言ってないわよねぇ?》
「私は……嫌なの……彼らの死の間際に私を見る眼が……」
《そう、怖いのね? ふふ、なら取るべき行動は一つじゃない?》
「え……クッ!」
腕が勝手に動く。
腕だけじゃない、足も体全体が悠理の意志に反した動きを取る。
「なっ、なにするの!?」
《悠理ちゃんを見る眼が怖いのよねぇ?》
リリアンは嗤う。
悠理の白く綺麗な指は血だまりに沈み、まるで生きているかのような表情をした少女の瞳に指を這わせる。
「いや……やめて!」
《だ~め》
そのまま、プツっと指を眼窩と瞳の間に無理やりねじ込む。果たして普通の人間に、このような芸当が出来るだろうか。
指先にかんっじるヌルヌルした感触に、粘着音がその耳に貼り付くように、いやらしく聞こえてくる。
「うっ……お、おえ!?」
腹の底から込み上げてくる異物を飲み干す。
《あらあら、悠理ちゃんには刺激的過ぎたかしらぁ?》
「そう思うならやめてよ!」
《そう……ねっと!》
眼窩に沈む指を思いっきり引き抜くと、視神経が繋がった眼球が飛び出す。
《せっかくだし、貰っちゃいましょ》
「……ひッ!」
リリアンは指を宙で振るうと、その場に歪みのようなモノが生まれる。
《この空間にしまっておきましょうね。いつか、またこの日を思い出して快楽に浸る為に使うかもしれないしねぇ》
その狂気じみた彼女の思考と思想に嫌気がさしていた。
いつまで、こんな危険人物と共にしていなければならないのだろうと、生きていることにうんざりとさせられていた。
それからも、気紛れなリリアンの殺人快楽思想に振り回され数年の月日が経ったある日、悠理は彼らに出会った。
不思議な力を持つ、輝かしい少年少女たちに……。
悠理は彼等と過ごしているウチに生きている楽しさを久々に思い出す事が出来た。できれば、このまま何事も無く彼等と日常を過ごし、楽しい人生を送れればとも思った。
だが、こんな美味しい獲物をリリアンが黙ってはいなかった。
こんばんは、上月です(*'▽')
今回は少々グロい表現をしてしまいました。
さて、次回からは俊哉や睦月達の時間軸に戻ります