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契約に生かされる少女

 信じられない――医師が発した言葉だった。


 精密検査の結果を見た医師が、頭を抱えるように困惑しながら悠理の顔と診断書を交互に視線を移している。


 その様子が可笑しかったのだろう、悠理が楽しそうに微笑みを浮かべた。


「…………」


 今まで、この少女が笑ったところを見た事が無かった医師は、何かを考える様にペンで頭皮を掻く。


「悠理ちゃん、キミの病気は治ったようだ」

「ほんと!?」


 病気が治った――これで外出許可が貰える。いつも窓から眺めていたように同い年の子達と遊んで元気よく駆けまわれる。今の悠理を空想に耽らせるには十分な言葉だった。


「お外で遊んでもいいの?」

「ああ、構わないよ。でも、最初は看護婦のお姉さんと一緒だよ」

「うん、わかった!」


 医師は悠理を病室に戻るように伝える。


 清潔な院内の廊下を悠理は足取り軽く、自分の病室に向かって歩いていた。


「へへ、いっぱいお友達作れるかな」

《あら、随分と楽しそうじゃない?》

「……えっ?」


 悠理は周囲をキョロキョロと見回すが、悠理に話しかける人物の姿は見当たらない。


《あらあら、何処を探してるのかしらぁ?》


 その声はクスクスと可笑しそうに笑っている。


「……だれ?」


 姿なき声に悠理は恐ろしくなり、先程の楽しい表情は何処へ、今は恐怖に歪んでいた。


《だれ? はないんじゃないかしらぁ? 昨日、私と契約したでしょ?》

「ケイ……ヤク?」


 そういえばと、昨夜の事を思い出す。


 あれは、夢ではなかった。


 悠理の背筋を冷たいモノが走り抜ける。それは、まるで、命を刈り取る刃。


「私……」

《大丈夫よ、安心して。ふふふ、貴女は殺させないわ。でも、私のお楽しみの邪魔だけはしないでね~》


 邪魔したら? と聞きたい衝動を無理やり飲み干す。


《素直な子供はお姉さんは好きよ。悠理ちゃんが大きくなるまで、私は少し眠ってるわね。せっかくの人生だし、楽しみなさい》


 その言葉を最後に、悠理の背を撫でる悪寒は消え、女性の声も止んだ。

こんばんは、上月です(*'▽')


悠理の過去編二話目です。次回は悠理が少し成長した話となりますので、是非ともよろしくお願いします!

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