表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/144

少女が交わした死神との契約

 少女には、友人と呼べる存在がいない。


 視界に映るのは、白い部屋と、キャスター付きの竿からチューブが自身の腕と連結し、液体を一定の間隔で送り込んでいた。


 窓に顔を向ければ、寒空の下で、枝先で休息する2羽の小鳥が仲睦まじげに身を寄り添わせている。


「お外に行きたいなぁ」


 それは、少女がいかに切望しようと叶わぬ願い。


「どうして、私ばっかり……」


 将来に対する悲観は、言葉にすれば惨めな思いに馳せられるので、己の胸の内に無理押し込む。だが、それも限界だった。


 時折、お見舞いに来る家族からは諦観の視線と溜息が、見舞いの品の代わりだった。


「私、死んじゃったほうがいいのかな?」


 未だ、十一歳の少女は死という概念を甘美な救済と捉え始めていた。


 そんな、時だった。


 ある時、不意に自分を呼ぶ声が聞こえたのは。


「あらあら、お嬢ちゃん。そんなに死が恋しいかしら?」

「だっ、だれ!?」


 病室には自分以外誰もいない。


「まさか……幽霊?」


 少女は怯え震える。布団を頭からかぶり、身を縮こませ、何も視界に映らないようギュッと強く瞼を閉じる。


「私が幽霊? ふふ、そんなモノよりもっと質が悪いわよぉ。もし、私が死神だって言ったらどうする?」

「――ッ!?」


 布団が大きく跳ねた。


 それは、少女が驚きに布団を殴り飛ばしてしまったからだ。


「可愛いわねぇ。じゃあ、貴女に選択させてあげるわ。今この瞬間に病気を治して、ほかの子達みたいにお外で遊ぶか、それとも……今この場で――死ぬかよ」


 死という単語より、少女は前者の言葉に惹かれていた。


「私の病気、治るの?」

「ええ、簡単よぉ。どうする? 直ぐに決めてね~」


 これが、悪魔の提示した選択であっても、幼い少女は何一つ疑う事も後先考えることなく、受け入れる。


「ふふふ、契約完了ね。じゃあ、悪いけどぉ、お姉さんの魂も入れさせてもらうわね~」


 声はそれっきり、ピタリと止んだ。


「夢をみてたの?」


 自分の身体に異変という変化が見受けられない。


 そう――翌日の検査を受けるまでは……。

こんばんは、上月です(*'▽')


こちらも少し間が空いてしまって申し訳ありません。

明日は、『地平線に沈む夕日は、明日への希望』を投稿します。


次の投稿日は活動報告でお知らせします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ