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悠理の過去、生きるべき代償

 病院のテラスのベンチに怜央と悠理は並んで座っていた。


 顔を俯かせる悠理にいつもの笑顔や活気はない。


 それも、当然だろう。自分の制御できない人格――リリアン・ストリオスという殺人快楽主義者の魂を宿し、彼女の悦楽を満たさせるべく意識を乗っ取られたあげくに、大事な友人を意識不明の受賞にまで追い込んでしまったのだ。


 出来ることなら、この危険因子の存在を悟られたくなかった。


 だが、もう遅い。全て話したから。知られてしまったから。


 だから、もうみんなと一緒にはいられない。共に笑い合う事も許されない。


 きっと、今隣で慰めの言葉を掛けてくれている怜央も内心では……。


「ごめん、怜央ちゃん。もういいよ……無理して私の事を元気づけようとしなくて。私が怖いでしょ? 蛍君をあんな状態にした私が」


 これ以上、自分に構わないで欲しい。だから、突き放すように冷たく淡白に言葉を吐く。


「誰が誰を恐れてるって言うのかしら? 貴女のような笑顔振りまくだけのお姉さんキャラに、この秀才である私が恐れおののくと思っているの? ふふ、笑わせないで」


 何を言っているんだ? という曖昧な表情をして、小さく笑う。


「一つ……いいえ、二つほどお聞きしていいかしら?」

「うん……いいよ、なに?」


 視線は足元に向けたまま。


「その、リリアン? って言いましたっけ。その人格はいつから貴女の中にいますの?」

「私が高校に入学した時くらいかな。もう、五年の付き合いだよ」

「それで、蛍を襲ったみたいに一般人も襲ってたりしてましたの?」

「うん、襲った。最初は……そう、ちょうど蛍君を斬り付けたあの公園だったよ。怜央ちゃんも知ってるでしょ? あの女子高生猟奇殺人事件」

「……知っているわ。あれほど世間を騒がせた事件なんて、後にも先にも、あれくらいしか知りませんし」


 遺体は細かく綺麗にバラバラに切断され、唯一、片方の眼球が見つからないという異常な趣向の殺人事件だったと世間で大きく取り上げられ、地元警察や自衛隊が派遣され、犯人確保の包囲網を敷き、市民の安全確保で常時海老沢付近を大規模な人数の武装した大人達が見回っていた。


「最初は私、死ぬ予定だったの――ううん、違うね。死ぬ運命だったの」

「どういう意味?」

「原因不明の心臓の病気でね。治療法も無い。日を追うごとに身体は衰弱していって、もう意識不明になって……お医者さんやお母さんとお父さんは、安らかにって……」

「安楽死?」

「そう」


 悠理は一泊の間を置き、ようやく顔を上げた。


「でも、私は死ななかった。ううん、死ねなかった」


 虚無の色に侵された、生気を感じない乾いた笑いをこぼす。


「暗い、とても暗い場所でリリアンに出会ったんだ。そして、彼女に生きたいかって聞かれた、もちろん私は頷いたよ」


 誰だって死を目前に、生きたいかなんて聞かれたら、何をしてでも生きたいと願うものではないだろうか。


 たとえ、それが悪魔との契約だったとしても……。

こんばんは、上月です(*'▽')


今回から少し、悠理が何故、魔王リリアンの魂うぃお宿すことになったのかというお話をしていきます。


次回の投稿は1月28日になりますので、よろしくお願いします!

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