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発現した能力

 空気が凍てつく――世界が呼吸を止め、生きることを諦めたかのように。


 身に刺すような脅威――対峙する銀の魔王の放つ魔力が全身を撫でる。


 死にたくない――自分の身体が冷たくなっていく理不尽な死に対する反発。


 アルベールの展開した術式は古き銀を新たな銀で塗り固め、新たな世界を形成していく。その場に存在する、ありとあらゆる物質を魂を世界法則さえ染め上げる、不浄を嫌う銀聖の理。


 一度体験したあの感覚と恐怖が再び呼び起こさせられる。


 世界を呑み込む速度は先程のような死を体感する時間を延々と感じられるような速度ではない。


「くっ……」


 転移の魔眼でアルベールと術式から距離を取る。


「僕の能力は……」


 上手く発動しなければ、今度こそ敗北という死が自分を抱擁し、二度と離さぬだろう。


「蛍、再び我の前に立ったのは逃げる為なのか? 力の行使を恐れるな、死を感覚するな。常に守るべき者達や自分の居場所に意識を向けよ!」


 こんな、相手にアドバイスを与える魔王がどの世界に居るのかと、蛍は嬉しさにハッキリと頷き、覚悟を決めた。


「アルベール! 僕はキミに認めさせる。僕の強さと意志を」


 こんなに大きな声で喋ったのは、いつ以来か。


 自分でも驚きだった。


「うむ……ならば見せてみよ! 我を倒せぬようでは、クリスティアを救うなど夢のまた夢であるぞ!」


 アルベールの感情が昂っている。


 蛍はそれを感覚した。


「銀の世界は、とても綺麗だったけど……寂しいね。僕が新たな世界を見せてあげる」


 蛍は願った。


 この世界が本来あるべき姿に戻ってくれることを。


 たった、それだけの事だ。


 願いは閃光となる。


「……これは一体!?」


 肌を温かい風が抜け、陽気な日差しと、小鳥たちの囀り。草が揺れ擦れる音、楽しそうな音楽や人々の賑わい。

  

 この銀の世界に無かったものが、今目の前に返り咲いていた。


「アルベールの世界って温もりに溢れてるんだね」

「貴公、一体何をしたのだ?」

「うん? 僕は願っただけだよ。アルベールの大切な世界が元通りになればいいなって」

「願った……だと」


 信じられないという驚愕の表情をする魔王に、蛍は可笑しそうに口元を少しだけ綻ばせて笑う。


「幻想……ではないのか?」

「だったら、誰かに話しかけてみたら?」


 アルベールは狼狽えつつも頷き、近くにいる人に話しかける。


「すまぬが、ここは中央協会でよいのか?」

「アルベール様、一体何をおっしゃっているんですか? もちろん、此処は中央協会ですよ」

「そうだな、そうであるな」

「おかしな、アルベール様だ。おっと、僕は配達の途中なのでこれにて失礼します」

「ああ、引き留めてすまなかった」


 青年はアルベールに手を振り、街の人ごみの中に消えていった。


「生きている……ここは、確かに我が生きた世界で、仲間たちと過ごした国だ」

「そっか、良かったね」

「貴公の力は一体……」

「まだ、分からないんだ。ただ、もう僕も戻らなきゃいけない気がするから、帰るね」


 蛍はもう一度、願う。


 みんなの居る、自分が生きるべき世界を――。 

こんばんは、上月です(*'▽')


今回ようやく、主人公、蛍の能力の一部を披露することが出来ました。

彼の能力は正確にどのようなものなのかは、今後の物語で少しずつ明かされていきますので、是非ともお楽しみに!

次の投稿は1月26日の夜です

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