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月夜に出会う、黒衣の少女

 小森ヶ丘は最寄駅から海老沢とは反対方向に4駅進んだ所にあり、改札を出て信号を渡れば目の前に大きな公園があり、そこが小森ヶ丘公園で、都心でバードウォッチングやハイキングコースをするのに適している場所だと言われており、春になれば満開の桜に花見をする人達で賑わっていた。


 現在は21時過ぎで一回家に帰る時間も無く、そのまま直接向かっても時間に余裕が出来すぎる為に仕方なく一回電車で終点まで行き往復して帰ってくればちょうど良い時間だろうと計算し、タイミング良く来た電車に乗り込む。


 車内は帰宅するサラリーマンや遊び帰りの若者でごった返していたが、それも数駅までの辛抱だった。


 大きな駅を過ぎれば後はイスに腰掛けながら終点までの微妙な時間をゆったりと過ごし、軽く仮眠をとりながら21時47分に小森ヶ丘駅に到着した。


 改札を抜け道路を横断し公園の入口に到着する。


 心許ない程度の該当が夜の公園を照らすが、それがかえって不気味で人間という臆病な存在の侵入を拒むかのような雰囲気を醸し出していた。


「……さっきのメール誰からだろう」


 今更な事を考えながらも1人闇にそびえ立つ美術館を目指してトボトボと歩く。


 だいたい22時だろうか、携帯を取り出し時間を確認するのも面倒だったので取り敢えず指定された美術館の入口で待ってみるも誰も来なかった。


 悪戯だったのだったのかなと電柱の明かりの下で近くの自販機で購入したペットボトルの紅茶を飲みながら一息つく。


 ただ自分の直感で自身を危険な場所まで運んでしまったが、来てしまったのだからしょうがないかと諦め帰ろうとしたところで、誰かがこっちに向かって歩いて来るが、明かりが少ないために人の形もはっきり視認出来ない。


 ようやくその姿を視認できるほど近づいてくると、その正体は先ほど帰りにぶつかったロック衣装の少女だった。


 お互いがお互いを顔を視認できるくらいの場所まで近づいたところで向こう側は歩を止め、ポケットから何かを取り出し、それはなんの変哲もない普通の携帯電だった。


「こんな場所に私を呼び出して何か用かな……というより、なんで私のアドレス知ってたの?」


 彼女は携帯のメール画面を開き此方に見せつけてくるが、少し距離が離れているために内容までは読み取れない。きっと彼女も自分と同じ内容のメールで呼び出されたのだろう。


「私の下らない夢の中だけの存在だと思ってたんだけど、まさか実在していたんだね」


 彼女の言っている事が理解できなかったが、刹那脳裏に同じような体験をしていた事を思い出した。


 先ほど街で初めて会ったのに睨みつけられ、今のセリフからすると彼女も夢の中で彼にあっているという事だ。


 そして彼にあったということはほぼ確実に……。


「世界を地獄に変えられると私も少々困るから貴方を殺してこのゲームにチェックメイトをかけさせてもらうね」


 彼女はポケットから折りたたみナイフを取り出し、彼目掛けて突進してくる。


 彼女の身体能力は特に秀でたものではなく、一般女性の物と変わらぬ為間一髪にナイフの攻撃を避けることに成功するが、少女も最初の一手が駄目だったら次に刺突からの薙ぎ払いを交互に繰り返し、時折タイミングをずらしてからの刺突、刺突、薙ぎ払い、刺突と休む暇も与えることなく攻撃を繰り出してくる。


 蛍は相変わらずの無表情だが、普段があまり運動をしない為に息が上がってきていた。


 月明かりを鈍く反射させる銀の刃だけを注視し、繰り出される連撃を躱すので精一杯だが、避けるだけでは解決の糸口にならない。


「もらった!」


 彼女の攻撃を読み謝り、右腕を軽くナイフが撫でその通り道には紅い線が引かれ重力に従い地面に向かい流れていく。


「……待って、キミは何か勘違いをしているよ」

「今更命乞い? 世界を壊す力があるなら使ってみればいいじゃない」


「ちょっと意外な展開になっているじゃないか、僕的には2人を合わせて新たな仲間にと思ったんだけど睦月ちゃんは何か間違った答えを導き出してしまったようだね」


 夜空から声が降り注ぎ、睦月と呼ばれた少女と蛍は同時に見上げると月を背にした蛍と同じ容姿の少年が2人を見下ろし、挨拶なのか軽く手を振っていたが睦月も蛍もソレを無視し、ただ黙って見上げていた。


「睦月ちゃん。僕がキミや世界の敵であって、蛍君は君の味方なんだよ」


「えっ……どういう事?」

「彼も僕のゲームの参加者ってことだよ。つまり、キミが今行おうとしている事は睦月ちゃんにとって一切の得はないって事だね。というより、なんでキミたちがこんな時間にこんな場所にいるんだ?」


 睦月と蛍は顔を見合わせて、携帯を取り出す。


「差出人が分からない人から呼び出された」

「私も同じ」


 送られてきた文章も時間もまったく同じものだった。


「貴方が送ったんじゃないの?」

「いや、残念だけど僕じゃないな……うん、今日はもう遅いからそろそろ帰った方が良い。じゃあ、また近いうちに」


 少年は闇夜に溶ける様に消えてしまい、蛍と睦月はメールの差出人が分からぬモヤモヤした気持ちのまま、その場に残された。


「じゃあ、僕も帰るね」


 彼はそれだけ言うと彼女の横を通り抜け帰えろうとするも彼女は彼の腕を掴み帰宅を許さぬといった行動をとる。


「待って! 腕を見せて」


 睦月は彼の服の袖をまくりあげパックリと開いた傷とご対面し衣服や腕周りは血に濡れ紅く染まっていた。


「ごめん、私が早とちりしたせいでこんな傷をキミに負わせちゃった……」

「気にしなくていいよ」


 お互いあまり喋る方でもないので、直ぐに会話は途切れてしまうが2人ともそういう雰囲気を気にする方でもないので特に気まずいとは感じていなかった。むしろ静かで居心地がいいとすら思う。


「でも……」

「もういいよ」

「よくなんて……ないよ。だって、私の起こした行動のせいで、もしかしたら世界の未来があの地獄みたいに……」


 自身の行動に胸の内より溢れ出てる怒りという感情が今の彼女を支配し塗りつぶしていたが、それに対して蛍はいつもと変わらない感情の起伏すら見せぬ声で涙を流し自身を責める少女をなだめる。


 その効力はあまり成果として現れない為、後は時間に任せようと静かに夜空を眺めながらも冷静さを取り戻すのを待った。


 しばらくして、ようやく落ち着きを見せ、やっと会話ができる状態になり、彼女の口からは唇を思いっきり噛んでいたのであろうか血が滲み出ていた。


「もう大丈夫?」

「……うん」

「今の僕らに必要なのは仲間なんだけど、今、僕を含めて3人しかいないんだ、だからあまり心強いとは言えないから、出来たらキミにも僕らの仲間になって欲しいな」


 彼女の返答を待つが、彼女はただ俯き地面を見つめるだけでなかなか返答が返ってこない。


「やる……ううん、やらせて。私も貴方たちと一緒に戦う」


 ようやく発した言葉は震えていたが、どうにか会話は成立しそうだった事に安堵する。


「これで四人目だね」

「さっきの二人も能力を使うの?」

「僕と雪斗はまだ……模様はあるんだけどね」


 そういい自分の手首を見せ、彼女もゆっくり肯き返してくれて染められたブロンド色の髪が風になびく。


 暗い夜の公園に奇妙な組み合わせだが、どことなくお似合いの2人がイスに座り、夜空に煌く不変の月が照らす優しさい明かりは胸に残るわだかまりは浄化され、清々しい気持ちにさせてくれる。


 その後携帯の連絡先を交換し互いに帰宅することにした。


こんばんは上月です(*'ω'*)ノ

早くも四人目の仲間です。これから、仲間探しと能力の覚醒が主な物語となります。

次回は睦月の能力が披露されます!

ちなみに、ツイッターのアイコンは今日仲間に加わった睦月ちゃんです(;´∀`)

次の投稿は9月17日の土曜となります

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