柔らかな感触に微睡から覚める
意識がぶっつりと途切れた。
痛みは無く、自分の身体が冷たくなっていく感覚を味わいながら死を体験した。
「ここが死後の世界?」
途切れた意識もつかの間、後頭部に感じる柔らかな感触。
眼を開けば誰かが顔を覗き込んでいた。
「クリス……ティア?」
「あっ、お目覚めですね! おはようございます」
「えっと……僕はいつからここに居たの?」
「う~ん、そうですね。気づいたら私の膝を枕にして寝ていましたよ?」
「…………」
取り敢えず、このままって言うのも悪い気がしたのでムクリと起き上がる。
そして、自分に何が起こってどうしてこのような状況になってしまったのか考えること数秒。
「分からない……」
「何が分からないんですか?」
「僕は、さっきアルベールに銀にされて殺されたはずなんだけど……」
「……ッ!? 蛍君、今何て言ったの!」
唐突に食い入るように身をグイッと寄せてくるクリスティアに、蛍は呆気に取られた表情で瞬きをする。
「うん、アルベールに僕の力の覚醒の手伝いをしてもらってたんだけど、僕に希望を見出せなかったら僕の魂をあげるって約束して、それで、僕は銀に染まって……気づいたらここに居たんだ」
上手く伝えられる自信が無いが、クリスティアは真剣な面持ちでウンウンと頷いていた。
「アルベール君は私が消滅させたはずなのに……どうして」
ブツブツと考え込んでいるクリスティアをよそに蛍は自分がいるこの場所をぐるっと見回す。
部屋の窓際に大きな執務机が一つ置かれ、隅のにはベッド、そして自分がいる中央部には小さなテーブルと両側にソファーがある。
窓際に寄って外を見渡すと、その光景は先程銀一面だった場所と酷似していた。
だが、家屋の一切も壊れてはいない。それに城下には人が行き交っていた。
「蛍君、どう?」
「どうって、なにが?」
「この国の景色」
「うん、温かいと思う。まるでファンタジーの世界にいるみたい」
「ふぁんたじぃ?」
聞きなれない単語にクリスティアは可愛らしく小首を傾げる。
「ううん、なんでもない」
「蛍君の世界だって、温かいんじゃないの?」
「僕の世界は、そうでもないよ。とても冷たくて中身が無い空っぽの箱庭にしか視えない」
それでも、と蛍は頭を振る。
「とても、大切な人たちが居るから、僕は守りたい」
「なら、アルベール君に負けちゃ駄目だね!」
「うん……でも」
「僕は負けて魂を奪われた?」
「うん」
「じゃあ、ここにいる蛍君は誰かな? どうして、ここに来れたのかな?」
ヒントと言いたげに少しづつ蛍に言葉を聞かせるクリスティアに、蛍はそれを理解した。理解した――と言ってもその全ての仕組みを把握したのではなく、確証はないがこうではないかと強く感覚するモノがあった。
「これが、僕の?」
「かもしれないね。私が手伝ってあげるから最後に開花させるのはキミ次第だよ」
クリスティアが蛍のおでこに軽く口づけをすると、脳に衝撃が走り視界がぼやけては意識が微睡に沈んでいく。
こんばんは、上月です(*'▽')
昨日は申し訳ありませんでした(´;ω;`)
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