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満たされたその身に誓う救済

 蛍は階段を上り廊下を走りまた階段を上ったり下りたりを繰り返し、自分が何処にいるのかが分からなくなり、近くの部屋に籠り身を潜ませていた。


「あの狼にはきっと勝てないし、アルベールには攻撃が通らないし……どうしようかな」


 身体を休ませるために、部屋のさらに奥に置かれた机の裏に座り込み、圧倒的な力を持つ魔王相手にどのように立ち回るべきかと、頭を悩ませていた。


「いま、僕が使えるのはこの瞬間移動できる魔眼だけだし……」


 転移は色々と便利なのだが、物理攻撃が有効打とならないのであれば意味を成さない。


「まだ、死にたくないし。やっぱり能力が覚醒しなきゃダメかな……頭痛くなってきた」


 頭の中がごちゃごちゃしてきて、これ以上の思考は不可能だと判断し考えるのを放棄し、休息に専念することにした。


「……お?」


 自分がウトウトとしていた事に気が付き、頭を振るい意識を覚醒させる。


「もう、いいかな?」


 蛍はゆっくりと立ち上がり、この場に居てもいつかは見つかるし、見つかった際には逃げ場がないという事で移動しようと扉を開く。


「……あっ」

「……む?」


 扉を開けたら、アルベールが廊下を歩いていた。それもタイミングが悪くちょうど開けたその場所にいたのだ。


「やばい」


 蛍は即座に首を横に向け廊下の端に視線を合わせ、魔眼を使い逃げようとするがアルベールの手で視界を遮られてしまい、不発となる。


「ふむ、なるほど。視界を塞いでしまえば跳べぬのだな」


 もう、成す術が無かった。


「この時間で良い案は浮かんだか?」

「…………」

「……そうか、実に残念だ。人という種は常に我を驚かすほどに成長するものだと思っていたが……すまないが、時間切れだ。貴公の魂を我に取り入れさせてもらうぞ」


 落胆の色を濃くその瞳に映しだしては、銀の魔力は更なる高次元的段階に飛躍していた。


「案ずるな、痛みは感じない。ただ、ゆっくりと冷たくなり感覚が無くなっていくだけだ」


 アルベールの足元から複雑な魔法陣が展開し広がっては銀色の淡く発光した。


「どうなってるの?」


 蛍は後ずさりしようとするが、足が動かず視線を下に向けると、既に膝くらいまで自分の足が銀に染まり身動きが取れなくなっていた。


 焦らすようにゆっくりと銀は身体を這い上がっていき、三分とかからずに蛍は銀に支配され、物言わぬ存在となる。


「水無月 蛍。貴公の魂は我が無駄にはしない。必ずクリスティアを救済すると約束しよう」


 アルベールは銀の像と化した蛍の頭部に触れると、手を伝って全身に潤いと呼ぶのが相応しい魂の熱が流入してくるのを実感した。


「クルト、シオン、シン……皆が守りたかった我らが少女を我が救い出す。どうか見守っていて欲しい」


 その瞳には先程までの疲労と死を間際にした弱々しいモノではなく、生命と使命に満ちた力強いもモノとなっていた。

こんばんは、上月です(*'▽')


えっ……今回の主人公退場!? 


続きは1月19日の夜になりますので、お楽しみに!

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