運命を分ける銀の残滓との出会い
「また、変な所に……」
蛍の意識が覚醒すると、そこは今までの赤い世界でもなければ少女が泣いていた暗闇でもないし、ましてや草原でもない。
辺り一帯……いや、今蛍が存在しているこの世界全てが例外無く銀色に染め上げられ、生命の温もりや時間の概念を感じさせないほどにこの世界は冷たく……死んでいた。
建造物の残骸や構造から見てこの場所がヨーロッパ方面なのかな、と思いつつも自分がなぜこの場所に存在しているのだろうかという理由を求めて歩き始める。
街並みと呼べるものではないが、崩れた家々の残骸が地面に転がっており、時折足を躓かせながらも視線の先にそびえ立つこの街で一番大きな建造物である教会のような城を目指して苦労しつつ歩を進めて、ようやく協会のような城にたどり着くことが出来た。
「城壁もあるし、これはお城なのかな?」
これまた銀に染まり所々が朽ちているその廃墟同然の城に侵入するための入口を探すが、目の前の門は固く閉ざされており内部に行きつくことが出来ないでいた。
「う~ん、どうしようかな……うん、使おう」
蛍は髪に隠された紫色の瞳を門の上部に向け意識を集中させると、襲い来る浮遊感と瞳に刺す痛みに瞼を刹那の瞬間塞ぎ、晴れた視界には目線が高くなり、街全体を見渡せる場所にいた。
「うん、成功だね。後は降りるだけか」
再び瞳を中庭に向けると、無事着地することが出来ていたことに安堵の息を吐く。
草木や花も全て銀色で、中央の道の奥には城内へと続く大きな扉が少しだけ口を開けていた。まるで、蛍を誘っているかのように……。
「…………」
蛍の体形がちょうど通り抜けられる僅かな隙間を抜ければ、大きな広間がありその最奥に安置されている女神の像の真下。椅子に腰かける人型がピクリとわずかに反応を見せる。
その人物は銀色の長髪に色白の肌と誰もが振り返るような整った顔立ちをしていたが生気は感じられない。特徴的な翡翠色の双眸は力なく侵入者である蛍を見据えていた。
「貴公は……何者だ?」
その男は枯渇しているような弱々しい声を投げかける。
「僕は水無月 蛍だよ」
「水無月……蛍。その名前の響きは新日帝国の者か?」
「……ん?」
聞きなれぬ国の名に蛍は上手く反応が出来ずに固まっていると、男はため息とも笑いとも取れない音を漏らす。
「我の意識世界に干渉する貴公は何者だ?」
「意識世界って?」
「む……我の魂の残滓が創り上げた記憶の世界……と言ったところか」
「難しそうだね、でも、僕は気づいたらここに居たんだよ」
銀色の青年は「ふむ、そうか……」と呟くと何かを考える素振りを見せ一言告げた。
「では、一つ聞かせてもらう。何故、貴公からクリスティアの気配を感じるのだ?」
「クリスティアの知り合い?」
蛍の言葉に青年の瞳に強い感情を生み出した。
こんばんは、上月です(*'▽')ノ
久しぶりに……あの人物の登場にこんな喋り方だったかな?と思い返しつつ書いていました。ちょっと嬉しい反面、少し寂しさも感じています。
さて、次回もこの続きを書いていきますが……なんと! 次回は蛍と銀の青年のバトルを書きます(; ・`д・´)
次の投稿は1月12日の夜になりますので、よろしくお願いします!