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病室に響く睦月の怒声

 ある一室で何かを強く叩き付ける音が響いた。睦月が悠理の胸ぐらを掴み力強く白い壁に叩き付けたのだ。

 

 悠理は睦月の眼を直視することが出来ないでいたが、睦月はそんなこともお構いなしに射殺さんばかりに自分より身長が高い女性を睨みつけていた。


「おい……睦月ちゃん。流石にそれ以上は止めようぜ、ほら悠理ちゃんだって故意でやったわけじゃないんだし……な?」

「分かってるッ! そんな事は百も承知だよ。私が許せないのはそんな大事な事を今まで黙っていたことよ! だって、そうでしょ? そんな危険な人格を宿していて制御も出来ないのに今まで普通に接していたんだよ!? ねぇ、何か言って……言えよ悠理ィ!」


 再び悠理の背を壁に叩き付けると、ゆっくりと顔を睦月に向け小さく呟く。


「ごめんね……」

「……ッ!?」


 悠理の頬を鋭い平手が打ち抜く。


「謝って……誤ってそれで済むと思っているの!? あんたのした事は――」

「オイ、止めろ睦月。わりぃ、怜央。悠理連れて少し外に行っててくれるか?」

「えっ……ええ、分かったわ。悠理さん行きましょう?」

「…………」


 怜央に付き添われ悠理は病室を出ていくが、それでも睦月はその扉を悔しそうにただ睨み付けては奥歯を噛みしめる。


「はぁ……おい、睦月。よく聞けよ、確かに悠理は伝えなきゃいけねぇ事を黙ってたのはアイツの非だ。だがよ、話しを聞く限り邪アイツは俺達に助けを求める時間はあったはずだ。それをしなかったのはアイツにも問題があるだろ? それに俺達も悠理自身の事を詳しく知ろうとしなかった……」


 雪斗の言っていることも分かる。だが、それでも睦月は心の奥底で納得することを拒んだ。


「それでも……それでも!」

「ああ、分かってる。分かってるから取り敢えず落ち着け」


 俯き、震える声で叫び出したい衝動を無理やり抑え込むと視界がぼやけ、床に雫が一つ二つと続けて流れ落ちる。


「睦月ちゃん……」


 俊哉は睦月の涙にうろたえ右往左往するが、雪斗は軽い溜息を吐くと優しげな声で睦月の頭を撫で始める。


「取り敢えず今はコイツが目を覚したら全員で快気祝いでもしてやろうな」

「うん……うん!」


 睦月の我慢は瓦解し、嗚咽を漏らし次々と床に涙を落とす。


「悠理にも少し時間が必要だ。この件でアイツ自身も精神的に追い込まれちまってるだろうしな」

「雪斗、俺は今どうすればいいんだ?」 

「お前は……知らね。暇だったらソイツの寝顔でも眺めてろ」

「お、おう! そうだな。目が覚めて時に親友の顔を視れれば少しは安心するだろうしな」


 そう言うと、雪斗の冗談を真に受けた俊哉はベッド脇の椅子に腰かけ、マジマジと食い入るように蛍の寝顔を一心に眺め始めた。その姿を見て雪斗は重い溜息を吐きやれやれと頭を悩ました。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回は蛍がある人物に出会うお話しです。

次の投稿は1月10日の夜になります!

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