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悠理に潜みし嘲笑の影

 血だまりに沈み、ピクリとも動かない蛍の姿に悠理は呆然とその姿を見下ろしていた。


「そんな……私が、蛍君を……どうして、どうしてこんな事するのよッ!」


 普段の彼女からは想像もつかない怒声を張り上げるが、世闇に響くだけで返答は返ってこない。


「まだっ、今から病院に連れて行けば……ううん、その前に止血をしなくちゃ」


 悠理はズボンのポケットから緋色の小さな石を取り出し魔力を込めと、意思は闇夜の中で淡く発光したのを確認すると蛍の胸元に押し付ける。


「お願いだから死なないでっ!」


 その石から放たれる光は蛍の傷をゆっくりと塞いでいく。


《あらあら、無駄な事に労力を割くのは賢い子のする事じゃないわよ悠理?》


 聴覚を経由せず直接脳内に語り掛けるその妖艶な声は悠理を小馬鹿にしたような色が滲んでいた。


「どういうつもり!? 私の友達に手を出すなんて……」

《友達? ふふふ、先程も言ったけど私からしたら獲物に過ぎないのよね》

「ふざけないで!」

《ふざけてなんていないわよ、私は私で目的を持って彼を切り裂いたんだから》

「目的?」

《気になる? 教えてあ~げない》 

「チッ……」


 悠理は小さく舌打ちをして、これ以上彼女に構っているだけそれこそ労力の無駄だと判断し、今は蛍の怪我の治癒を優先し石に途絶えることなく魔力を注いでいく。この石は術者の魔力を糧に怪我を治癒させる因果創神器だった。


「蛍君、ごめんね。お姉さん……ううん、私が弱いせいで――」

「違う……よ、ゆ……うりは悪く……ない」

「蛍君!?」


 微かに瞳を開き焦点が定まっていないのか視は宙を泳いでいたが、悠理は表情を一瞬だけ和らげる。


「大丈夫だよ! 今から病院に運ぶからね」

「……ゆ……りは、悪くな……」


 何とかして言葉を紡ごうとしていた蛍だが、再び静かに瞳を閉じ浅く息をするだけで悠理の呼びかけにも反応する事が無かった。


 傷口がある程度癒えたのを確かめた悠理は先程の緋色とは違う蒼色の意思を取り出し、今やったように魔力を注ぎ込み、海老沢市が誇る病院を脳裏に描けば身体に纏わりつく重力という法則から解放され眩い光に包まれる。


 悠理は目を開ければ静寂に包まれていた薄暗い公園ではなく、都市の中心部にある巨大な病院の前にいた。


「成功したわね」


 すぐさま蛍を抱きかかえて緊急搬送口に駆け込むと、尋常じゃない様子の訪問者に待機していた医師が何事かと駆け寄り、衣服を真っ赤に染めた少年を見るや、近くにいたナースに早口で次々と指示を出していた。


「大丈夫かね!? 今緊急手術の手配をしたから、その子を……早くストレッチャーを持ってこい! 何してるんだッ!」


 医師の怒号にナース達は慌てながらもストレッチャーを用意し蛍を乗せては手術室へと運ばれていった。


「一応キミには彼に付いての説明を聞きたいのだが?」

「はい……」


 医師は蛍の手術を行うため、悠理は手の空いている看護婦に任され応接室のような場所に通された。

  

こんばんは、上月です(*'▽')


物語的にはあまり進展はないお話しでしたが、次回かその次に蛍にとって重要な人物と出会う話しを掻きたいと思います。

次の投稿日は1月8日の日曜日となりますので、よろしくお願いします!

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