大鎌に彩られる鮮血の装飾
妖艶なる白銀の刃は真紅の血を纏い歓喜に脈動していた。
「あれ、おかしいなぁ。お姉さんちゃんと腕を切り落とすつもりだったんだけど……ふふ、まぁいいかな」
血の滴る刃を熱のこもった瞳で眺めては、その指で赤く粘つく血を絡めとり右腕の出血を抑える少年へとみせつけるように突き出す。
「蛍君の血だよ、ふふ、その表情可愛いわねぇ」
狂気の色香に憑りつかれた悠理に蛍の足は小刻みに震える。
「悠理、そろそろ終わりにしよう。明日もみんなで遊ぶんだよね?」
「そうね、そろそろ終わりにしたいならそれでも構わないわよ」
「うん、じゃあ――」
「さようなら、蛍君。来世では普通の人生を送れるといいわねぇ」
「……!?」
大鎌に廻旋させ貼り付いた血を払い、右半身を後方に引きその鎌首を蛍に突き付ける構えをとり距離をジリジリと詰めていき、それに合わせ蛍は一歩また一歩と後退する。
「あら、終わりにしたいんだよね? なら逃げちゃ駄目だとお姉さんは思うんだけどぉ」
「違う、キミは悠理じゃない」
「……何を言っているの? 私が悠理じゃ無かったら私は誰なのかしら」
「分からない、でもキミは悠理じゃない。悠理はそんな風に笑わない」
「…………」
この言葉に明らかな反応を示した。
それは沈黙。偽りを見抜かれた時のような無意識の行動。
「キミは誰?」
「…………」
呼びかけても言葉は返ってこない。その様子に少し不安になるがそれでも言葉を投げかけ続ける。
「悠理を返して」
返して――何故そのような言葉を言ってしまったのかは分からない。だが、その言葉に蛍自身引っかかり感を覚えた。
「私は……悠、ふふ貴女は私の傀儡で……違う! やめて。もう私の友達を……友達? 違うでしょ、彼は私の獲物」
頭を左右に振りながら、ぶつぶつと理解の出来ない独り言を呟き始めた悠理に蛍は恐る恐る近づきゆっくりとそのモデルのような身体を抱きしめる。
「悠理は悠理だよ、僕は言葉がそんなに上手くないけどこれでけは言える。悠理は友達を気づ付ける人じゃないし、僕らにとっての優しいお姉さんだよ?」
「蛍君……お願い、走って……逃げて」
「僕は友達をもう見捨てたくないんだ。だから話して欲しい、悠理の身に何が起こっているのか」
呼吸を荒げ何かに耐えようとする悠理に蛍は何とかしであげたいという感情に突き動かされていた。
「蛍君……聞いて、私……私は――ふふ、ふふふ、お馬鹿さんねぇ」
「あっ……」
悠理は抱きしめる蛍の身体を人間の領域を遥かに超える力で引きはがし突き飛ばし、後方によろめく小さな身体を手に持った大鎌で深々と骨を断ち肉を抉り切り裂いた。
蛍は痛みと精神的な衝撃に意識は暗転した。
こんばんは、上月です(*'▽')
次回は悠理に視点を当てた話しになります。
投稿日は1月6日の夜になりますので、よろしくお願いします。