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蛍に迫る、女神の持つ大鎌

 カラオケを満喫し夕食を済ませた蛍たちは海老沢駅改札で別れた。


 充実した夏休みを素押せる普通という日常に在り、世界の命運を賭けた戦いの事を時々本気で忘れてしまいそうになる。


「あとどれくらい猶予があるんだろう……」


 冷房の効いた車内から栄える街並みを眺めつつ呟く。


 もし、自分たちが敗北すればこの街は……世界が灰燼に帰し、生きるべき生命の全てが消滅する。これは、クルトの救世の選択。この世界を滅ぼすことによって無数に枝分かれする世界を邪神から守る為の小さな犠牲。


 この非日常で得た掛け替えのない仲間達を失わない為にも蛍は早期に能力を開花し、練度を上げなければならなかった。


「大丈夫、なんとかなる」


 マイペースな性格故のモノか楽観主義なのか分からないと、俊哉と琴人に笑われたことを思い出しつつ、最寄り駅を降りる。

 ゆるやかな坂道を一人家に向かって歩いていると、背後に――もう真後ろに人の気配を感じ取りゆっくりと振り返る。


「どうして、ここにいるの?」


 蛍はこの場に居るはずの無い人物に小首を傾げ問いかける。


「ふふ、蛍君さぁ。今日ず~っとお姉さんの事気にしてなかった?」


 頼りない外灯に照らされた悠理が背の低い蛍の目線に合わせて前屈みになり、微笑んでいた。


「そんな事――」

「そんな事ない? じゃあ、お姉さんの気のせいだったのかぁ」


 それだけの理由でわざわざ帰り道がまったく違う蛍を尾行してきたというのか。そもそも、仲間内でメールアドレスや電話番号を交換しているのだから、要件はそっちで済ませた方が手っ取り早い。


 胸騒ぎがした。


 クルトは悠理という存在に疑問を抱き蛍に「もしかすると、彼女はこっち側の存在かもしれないね」と忠告をしていた。 

 なぜか、目の前で微笑みを見せる悠理は悠理であって悠理ではないような気がしてならなかった。彼女の内側に宿る深い何かが今にでも溢れてくるような感覚に蛍はゾッとし一歩引きさがる。


「あれ、蛍君どうしてお姉さんと距離を開けるのかなぁ。あっ……もしかして、顔が近いから照れちゃったの?」

「要件はメールや電話で済ませれば良かったんじゃないの?」

「まぁ……ね。でも、本題に付いては直接会わなきゃいけないから」

「本題ってなに」

「ここじゃ、アレだしこの公園でしようか」


 悠理が近くの広大な公園を指で示す。この公園は以前に殺人事件があり、それ以来日が沈んでからは誰も寄り付かなくなった場所。

 本来であれば断るのが正解なのだろうが、蛍はクルトの言ったていた言葉を確かめるべく首を縦に振る。


「静かな公園だねぇ」

「ちょっと前に殺人事件があったからね。皆好き好んで来ないよ。それで、この公園で何をするの?」


 蛍の言葉に悠理は肩を小刻みに振るわせて嗤う。

 それは、いつも皆にみせる優しさの欠片も感じさせない、鋭利な刃を首筋にあてがわれているような錯覚を抱かせる程の冷たく無情な嗤い声。


「ふふ……ふふふ、世界なんて壊れちゃえばいいのよねぇ。その為には貴方には退場願おうかしら」


 悠理の手にはいつ、どこから取り出したのか大鎌が握られていた。


 それは、死を振りまく女神の様に美しいと詩人は語るだろう。だが、蛍からすれば実に良い状況ではないのは確かで、向けられる殺意に身がすくみ上手く身体を動かすことが出来ない。


「二度と私はあの娘に負けないわ。魂の救済なんて今となってはどうでも良いのよねぇ。さぁ――始めましょう」


 悠理は軽々と大鎌を肩に担ぎ、舞うように地を跳び蛍に迫る。


こんばんは、上月です(*'▽')ノ


最近インフルエンザが流行っていますね。皆様は大丈夫でしょうか?

昨日は風邪でダウンしてしまい投稿が出来ませんでした。


さて、次回の投稿日は12月30日の夜を予定しておりますので、是非とも一読くださいませ^^

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