兵器を手繰る能力
「なに……あれ、冗談でしょ!?」
睦月は無骨な造りをしたソレを見上げては、驚愕の表情を浮かべては頬を一滴の汗が伝い落ちる中でも、蛍は相変わらずの感情が読めない無表情でありつつも、その声には僅かばかりの高揚を宿していた。
「格好いいね、アレなんて言うんだっけ?」
「ふふん、蛍君はこの良さが分かるんだね? うんうん、私は嬉しいよ。私の仲間達はこの良さを全く理解しようとしなくてね。流石は私が見込んだ少年だ! これはね八〇センチ列車砲といってね、広大な射程距離と圧倒的破壊力を備えた逸品なんだよ」
嬉しそうに頬を綻ばせては、いつも以上に饒舌な弥生に蛍は一つ頷き、睦月の横顔をジッと見つめる。
「列車砲でも、睦月なら大丈夫だよ」
「えっ……いや、流石にアレは鎖でどうにかなるレベルじゃない気が……ううん、やってみる!」
睦月は意思を鎖一本一本に行き渡らせ、まるで手足のように自在に手繰り、その馬鹿でかい図体を絡め拘束する。
「うんうん、なかなかいい感じだね。でも――」
弥生は手を掲げ命令を下す指揮官のように振り下ろせば、上空を向いていた砲塔がゆっくりと鎖の束縛に抗いゆっくりと地に向き始める。
「高峰先輩、あの砲塔って下も向けるの?」
「私が手を加えたからね、ちなみにキミ達のいる場所は既に射程範囲内なのだよ」
にこやかに答える弥生に、睦月はさらなる鎖を召喚し一切の加減なく力技で砲塔を固定しようと魔力の全てを注ぐつもりで抗いを見せる。
「錬操:零式艦上戦闘機」
必死の抵抗を見せる睦月に見せつけるかのように、弥生は新たな兵器を生み出す。
「今度はなにっ!?」
上空よりけたたましいエンジン音が轟き、何事かと二人は列車砲塔から空に視線を移行させれば、かつて戦時中に使用されていた戦闘機が旋回していた。
「錬装:グロスフスMG42」
今度は戦闘機ではなく、自身の手の中に大きな黒い銃のようなモノが握られていた。
「冗談じゃない! 鎖がいくつあっても足りないじゃない!!」
今現在召喚した鎖は22本。その全てを列車砲の固定に回しようやく拮抗している状況で、これ以上他に回す余裕は無かった。
「くっ!」
上空よるい旋回していた戦闘機が降下しつつ両翼に二挺、機首に二挺の系四挺の機銃が一斉に地上を蹂躙すべく弾丸の雨を叩き付ける。
「大丈夫だよ、僕もいる」
不意に背後から蛍の声がしたかと思えば、襲い来る浮遊感に目を瞑る。直ぐ近くでは地面を抉る音が連続して響き、いつまでたっても痛みが襲ってこない事に恐る恐る目を開ける。
「あれ?」
先程まで自分が立っていた場所とは異なる場所に移動していた。
「僕の眼の力で移動しただけだよ。睦月はあの列車をなんとかして欲しい。僕は高峰先輩をなんとかする」
「待って! 空には戦闘機が飛んでるんだよ?」
「大丈夫、きっとなんとかなるよ」
それだけ残し、蛍は異質な紫色の瞳を戦闘機へと向けた。
こんばんは、上月です(*'▽')ノ
弥生の能力は兵器を生み出す力です。
文章中にあった錬装と錬操の違いとしては、錬装は自信に装備するもの、錬操は操縦するモノです。
次回の投稿は12月16日となりますので、よろしくお願いします!




