睦月と弥生、異なる力の衝突
睦月は弥生が一体何者で何が狙いなのか分からぬまま共に行動することとなってしまい、睦月の内心では深い溜息を何度も吐いては意気消沈していた。
「おやおや、睦月ちゃんはお疲れなのかな?」
弥生が含みのある笑みを浮かべながら隣を歩く睦月の顔を覗き込む。
「いえ、別に……それより、弥生さんは私達をどこに連れて行こうとしているんですか?」
ゲーセンを後にすると、弥生は「キミ達にぜひ見てもらいたいものがあるんだ」と告げては半ば強引に二人を連行し、繁華街からズレた市街地を歩いていた。
「ふふ、それは観てからのお楽しみさ」
午後の日差しは一層強く、止めどなく溢れ出す汗を拭いながら人気の無い小さな公園にたどり着いた。
「高峰先輩、見せたいものって公園のこと?」
「残念ながらその答えは不正解だよ。私が見せたいのは――」
刹那の瞬間に公園一帯を包み込むような得体の知れない力に、睦月はこの状況下で何一つ狼狽えた様子を見せない弥生から蛍の腕を引き距離を取る。
「蛍、絶対に私から離れないで」
「うん、分かった」
その力はムーティヒやカルディナールといった非常識達と対等もしくはそれ以上のモノだと感覚する。先程までの暑さは打って変わり全身を異様な寒気が走り抜ける。
「高峰先輩も力を持ってるの?」
「まぁ、キミ達とは異なる種類の力だけどね。私はある人物に頼まれてキミ達の実力を見極めてほしいといわれてるんだ」
「私達の実力? そのある人物って言うのは誰?」
「それは言えないなぁ」
睦月と蛍は肌で感じる膨大な力量差に固唾を飲む。
「さぁ睦月ちゃん、蛍君。キミ達の実力を見せてもらうよ」
場を支配する力の流れが変わり、それは弥生を中心に渦を巻き、まるで意思を持って彼女を守護するかのように包み込む。
「そんなに私の実力がみたいなら見せてあげるわよっ! 反意せし罪業を侵せし神、汝だんざいの鎖に繋がれ四肢は離別の道を辿るだろう……エヴァーランジェ フリーデ《無慈悲にして荘厳なる鎖》」
睦月の放出した魔力は鎖へと姿を変容させ、地表や空間から軋轢音を鳴らしながら無数の鎖が召喚される。
「発動時に手首の模様が発光……か。うん、実に興味深く面白いね。なら、私の力も披露させてもらおうかな」
まるで実験体をマジマジと観察する研究者のような眼で睦月と鎖に視線を向け、弥生を取り巻いていた力が爆散する。
「探求の叡智――始まりは無であり、有は歴史である。人は終を避けるべく有を技術と化し、やがて衰退し終を迎え破滅する……オルヴァーハイデ クロック リーラ《繁栄を願う技術は自壊へ至る》」
弥生の手には小さな破片状のモノが早急に集まり出し、何かを形造っていく。
こんにちは、上月です(*'▽')ノ
今回は睦月と弥生の戦いとなります。
書いてて気づいたんですが、1月と3月の戦いじゃないか! まぁ、どうでも良い事ですが(;´∀`)
次回はこの戦いの続きを書いていきますので、よろしくお願いします!
次の投稿日は12月14日となります