好敵手として認め合い、再戦の約束を交わす
海は夕暮れに染まり、肩で息をしては吹っ切れたように爽やかな笑みを浮かべる二人の戦士。
「へぇ~……すごいねぇ、まさかここまで私に着いて……はぁ、来るなんて」
「貴様……いや、はぁはぁ、其方も人の身で俺をここまで追い詰めるとは大したものだ」
「人間の輝きは……はぁはぁ、未知数なんだよぉ」
「ふっ、そうか……だが、次の一撃で終わらせよう」
ボールを持つヘルトの手に力がこもる。
長く続いたこの死闘と呼ぶに相応しい人領域を超えたビーチバレーも終焉の兆しが見え、その様子を距離を置いた場所から見守っていた睦月達は固唾を飲む。
「ゆくぞォ!」
指揮官を思わせる空気を揺さぶるかのような掛け声と共にボールは高く上空へ投げられた。
悠理はそのボールを視線で追いながらも、身体が直ぐに反応でき動かせるように姿勢を低く身構えていた。
「受けてみろッ! 俺の渾身の一撃だァッ!!」
ヘルトのごつい岩のような掌がボールに叩き付けられたその瞬間。
とうとう耐久値を振り切ったボールがその場で風船を割ったかのような音で破裂し、ヘルトはサーブをした姿のまま、悠理もキョトンとした表情で何が起こったのか分からないといった風に固まっていた。
「ふぅ……ボールの破損により、この勝負はお預けですね」
審判の怜央がジャッジを下す。
「あはは~、この勝負はお預けになっちゃったね。ふふ、じゃあ続きは本番でってことかなぁ?」
「……そのようだな。だが、死合いともなればこのようにはいかぬぞ」
「ええ、そうねぇ。その時は楽しみにしてるわ」
両者は固く握手を交わし、再戦の時を心の底より楽しみにし審判席に帰ってくる。
「う~ん! いい運動だったぁ。どう、俊哉君と雪斗君は?」
「命に別状はないみたいだから、大丈夫だと思うわ」
睦月が答える。
「ヘルトさん、凄かった……です。その、お疲れさまでした」
「久方ぶりに良き汗を掻き、良き戦いをした。俺は今日味わった感動を一生忘れないだろう」
砂で汚れ、痣だらけになったその強靭な身体を琴人は水で濡らしたタオルで優しく吹き始めた。
「おい、俺はまだ介護を必要とする――」
「いいじゃありませんか、ヘルトさん。琴人さんがしたくてしているんですし、ね?」
「むむむ、そうか……」
ヘルトはそれ以上言葉を発する事無く、夕暮れを眺め砂浜に腰を落ち着かせては少女にその身を任せていた。その姿を離れた場所から眺める蛍はこれを俊哉が見ていなくて良かった、と内心で思いながら北区の準備をはじめる。
「運動したらお腹空いちゃったぁ~」
「一応、お昼の残りが残っていますので、それで良ければ」
怜央はカバンにビニール袋の中から焼きそばとお好み焼きを取り出して、悠理に手渡すとそれを美味しそうに食べ始める。
「まったく、ホント悠理さんは何者なんですか?」
呆れ顔の怜央に悠理はウインクするだけで、何も語らない。
そう、悠理の能力もそうだが彼女自身の事をこのメンバーはあまり知らない。
こんばんは、上月です(*'ω'*)
ちょっと長かったビーチバレーが終わり、ヘルトと悠理はその試合を通じて互いを認め再戦の時を楽しみに握手を交わしました。
次回は、睦月と蛍のデート(?)を書いていきます。
次の投稿日は11月29火曜日の夜になると思いますので、よろしくお願いします。