ふんどしに生きる武人
「よォ、奇遇だな。まさか、こんなところで出会っちまうとはなァ」
彼らが海水浴に来ていることが驚き言葉を失っている雪斗と怜央。
「えっ、どうしてお前らがここに居んの?」
皆が思っている疑問を俊哉が代表して口にすると、ムーティヒとカルディナールは困ったような表情をする。
「その。我が主に夏休みを満喫してくるよう言われてしまって」
「まァ、そういうこった。んで、せっかくだし海にでも行ってみるかってなったんだわ」
「デート?」
蛍の言葉にカルディナールは顔を赤くし、ムーティヒは呆れたように笑う。
「おいおい。この俺がよォ、どうしてこんな……!?」
「あら、何を言おうとしたのですかムーティヒ?」
「あァ? いや、何でも……」
真夏の暑さなど何処かへ飛んで行ってしまったかのようにガタガタと震え始めた。
「風邪かな?」
「おい片目、余計な事は言わなくていいんだよォ! 分かったか?」
蛍は取り敢えずコクリと頷く。
「おい! ムーティヒ、カルディナール。貴様等は何故荷物を放置してこんな場所に……」
重みのあり威厳に満ちた声で自分たちの名前を呼ばれた二人は振り返ると、気難しそうな顔の男がいた。
「あの人……」
その肉体は常に己を線上に身を置いていた者の証である傷が全身に痛々しく飾り立て、威圧的な目つきは他を圧倒する闘気と殺気にギラついていた。
ヘルト・パラディースだった。
「小僧ども、また会ったか」
「ぷふっ……」
ヘルトが言葉を発した時、俊哉は噴き出す。
「何を笑っている」
「へ? いや、だって……ぷふふ」
不愉快そうな表情を浮かべるヘルト。
「だって、くくく、海水……海水パンツが」
言われてみなも視線を下に向ける。
「ぐふぅ!?」
雪斗は一瞬で視線を外すが、笑いをこらえるのに必死で肩がわなわなと震えている。
「ふんどしだね」
蛍はたんたんと告げる。
「おいおいおい、流石にこの時代にふんどしは、ぷぷ……ねーだろ」
「おい! 俊哉、やめろ。くく、生きてた時が……くく、ちげぇんだ。仕方ねぇだろ」
ヘルトが静かに殺気を垂れ流している事に気づかない二人に、流石にこれ以上は不味いと判断したムーティヒとカルディナールが仲裁に入る。
「落ち着け、ヘルト。初戦がガキ共のいう事じゃねぇか、なァ? 俺はカッコいいと思うぜェ」
「そうです、とても貴方らしく凛々しいと思いますよ」
彼等のフォローにただ一言。
「なら、ムーティヒ。貴様も履け」
「え……いや、それは遠慮しとこうかなァ」
「俺は、初めてここまで侮辱され辱められた!」
意外とこういうキャラなんだなと頷く蛍達にもはや収拾がつかない状態となり、諫めるのにしばしの時間が掛かった。
「せっかく、お会いできたんですし、今回は敵味方を忘れて一緒に遊びませんか? もうすこしすれば琴人さんもクルト思いますし」
「え、まじか!?」
俊哉が反応し、カルディナールは頷く。
「やったね、俊哉。また、琴人と遊べるよ」
「お……おう、なんか緊張しちまうぜ」
ソワソワとし始める俊哉に蛍は頷く。
「確かに今日は敵味方関係ねぇ。だが、勝負はしてもいいんじゃねぇか? たまたま、ここに一つビーチボールがある事だし、ビーチナレーでもしねぇか?」
雪斗の提案を全員が受け入れ、早速準備に取り掛かる。
こんばんは、上月です(*'ω'*)
投稿だいぶ遅れてしまいました(^-^;
次回はビーチバレーが開始されます。
次の投稿は11月17日の木曜日となりますので、よろしくおねがいします