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唐突な夏休み!

 感情を乱したカルディナールの放つ矢は高速で全方位から蛍に迫り、肉や骨を抉る……はずだった。


 だが、瞬きをした刹那の瞬間に目の前にいたはずの蛍の姿が見当たらない。


 それは遠巻きに観戦していた睦月達も同じで、蛍の行方を捜すが、見当たらない。


「カルディナールこっちだよ」


 背後からの声に振り向くと右の眼から血を垂れ流す蛍がいた。そして、その手には一本のナイフが握られていて、それを首筋に触れるか触れないかのところで突き付けていた。


「僕の勝ち?」

「そうですね……私の負けです」


 カルディナールは蛍の右目から逃れる様に視線を外し、小さく数音呟けば、一面の花畑から一変して、現実の世界に戻る。


「1つだけ聞いてもよろしいでしょうか?」

「うん」

「先ほどの攻撃を避けたのは、やはり……魔眼の力ですか? それに、あれほど深かった肩の傷も……」


 そう言って、カルディナールは蛍の右肩を見るが、傷どころか血のあとも見当たらない。まるで"最初から攻撃を受けていなかったような"状態だった。


「僕の眼はね、視界に入る範囲内での僕自身を転移と自身の身体の傷を癒す力……なんだよ」

「転送と治癒ですか? ですが、治癒は……」

 

 転移は納得したが、カルディナールの能力は治癒を無効にする能力、そこに矛盾が生じる。


 彼女の能力を上回るほどの力なのだろうか、それとも本人すらも知らない何かが、その眼には隠されているのか。カルディナールには分からなかった。


 既に蛍の右目はいつものように髪で覆い隠されていたが、カルディナールはそっと髪を退かしポケットから取り出したハンカチで涙のように流れていた血をそっと拭き取る。


「その眼はとても強大な力を有しているのですね」

「うん、でも今回はこの因果……なんとか? のお陰でまだマシな方だよ。以前は……」


 蛍は言葉を止める。


 魔力抑制の効果を持ってしても、使用者への負担が尋常ではない魔眼。


 カルディナールは出来ればこのような自壊を招く力を二度と使ってほしくはないと願う。


「蛍さん、出来ればその眼の使用は控えた方が――」

「この眼を使って大切な仲間を救えるなら、僕は何度でもこの眼を使うし、使用にもためらわないよ」


 カルディナールの忠告をやんわりと拒む。


 蛍の左目を見て、それが本気で言っているのだとカルディナールは理解する。


「わかりました。私は貴方がこの世界とお友達を守れることを祈っておりますね」

「ありがとう、カルディナール」


 礼を述べ軽く会釈をして、蛍は仲間が待つ場所へと駆けだす。


「まさか、ホントに勝ちやがるとはなァ」

「ええ、まさか私が負けるとは思いもしませんでした」


 蛍の背を見つめる二人の非常識カミは自身の荷が下りたような表情をしていた。


「だが、本当の戦いはこっからだ。所詮は俺達は前座……余興みてぇなもんだしなァ」

「きっと、大丈夫です。彼等は今までの世界に無い輝きを秘めています」

「輝きねぇ、そんなモンがいつまで持つか、分かったもんじゃねぇだろ?」

「ええ、後は彼等次第ということになりますね」


 


「蛍、やったね。おめでとう!」


 戦地から帰宅してきた蛍に睦月が出迎える。


「ちゃんと僕は勝ったよ」


 その表情には疲労が色濃く浮かんでいたが、そんなこともお構いなしに、蛍を囲んでは勝利の喜びを分かち合う。


「疲れた……」


 とうとう活動限界を迎え、膝から崩れ落ちるところを雪斗が支える。


「ははっ、コイツ寝ちまいやがった。しゃーねーな……っと!」


 悠理の手を借り、眠る蛍を背負う。


「蛍君、頑張ったもんねぇ~、起きたらお姉さんが美味しいご飯でも食べさせてあげようかな」

「ああ、そうだな。コイツはよく頑張ったよ。しかし、まさか、コイツの力が魔眼とはな」

「でも、不自然じゃありません? だって、先程蛍が言っていたでしょ、以前は……って、それって、その力は昔から使えてたって事じゃありませんか?」

「確かに……言われてみれば、そうね」


 怜央の私的に睦月は難しい顔をする。


「んな事どうでもいい。後はコイツが起きてから聞けばいい事だろうが」

「そうそう、今日の戦いも勝利したんだし、今考えるのは次の戦いだよ」


 蛍の能力への疑問が残るが、確かに悠理の言うように今は次なる戦いの事で意識を向けなければならない。


 そして、こういう話題が出るとタイミングを見計らって彼が現れる。


「やぁ、二回戦も勝っちゃうとはね。おめでとう、とでも言っておこうかな。さて、それはもういいとして、次の戦い何だけどね。ふふふ」


 勿体ぶるように笑う蛍と同じ容姿をした少年に雪斗が食って掛かる。


「なに、笑ってやがる! 話があんならさっさと済ませろ」

「ふふふ、世間は夏休みだ。学生の夏と言えば青春を謳歌し、普段の勉強から解き放たれる楽しい休暇だよね? なら、戦士にも休息は必要だと思うんだ。という事で、キミ達に五日間の休息を与えよう」


 予想外の言葉に唖然とした表情を浮かべる一同に、睦月だけは怪訝な視線を向ける。


「それって、どういう事?」

「どうって、そのままの意味だけど? まぁ、ちょっとこちら側のトラブルを解消しなくちゃいけなくてね。キミ達の相手をしている余裕は無いんだよ」

「トラブル?」

「うん、キミ達には全く関係ないとは言えないけど、まぁ、それはこっちで何とかするから、キミ達は思いっきり若者らしく遊びなよ」

「関係なくないなら、それがどういうトラブルか私達には聞く権利があるんじゃない?」


 以外にも引かない睦月にクルトは困ったような表情を見せては軽い溜息を吐き出す。


「今のキミ達に話しても理解できないだろうし、どうにも出来ない。もし、仮に僕を倒すことが出来たら教えてあげてもいいかな、だから、今はゆっくり羽を伸ばしなよ」

「…………」


 ここまで言われてしまえば、悔しい気持ちを忍ばせ小さく頷く。


「いい子だね睦月ちゃん。じゃあ、また何あkあればこちらから連絡するから。良き休日を」


 クルトが指を鳴らすと世界は暗転する。


こんばんは、上月です(*'ω'*)

さてはて、とうとう二戦目も突破した蛍達。

勝利に喜ぶ中でクルトからの予想だにしない言葉、それは夏休みを過ごせ。

次回はまったり日常となります。

次の投稿日は11月10日の木曜日となりますので、よろしくお願いします!

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