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剣と爆発……奮い立たせる勇気

 廃協会の天上には天使の絵が描かれ、壁にも似たような像やら絵画が飾ってあり、部屋の奥には跪いては祈る姿勢をとる一人の女性がいた。


 名をカルディナール・ヴァイン。何度か顔を合わせ、戦いとは無縁そうで優しい包容力を持つ女性。


 彼女はいつもの修道服で何やら祈りの祝詞を唱えているようだった。


「遠い所からわざわざご足労ありがとうございます。」


 カルディナールは静かに立ち上がり彼等に向き直る。


「本日ご足労願ったのは――」

「ああ~、別に分かってっからいい。今日から戦うんだろ?」

「……はい」


 あまり乗り気ではないカルディナールは目を伏せ縮こまってしまう。


「今日戦っていただく相手は以前にも貴方達と戦ったことのある序列第6位ムーティヒ・イェーガーです」


カルディナールは人間には理解できない言葉の羅列を紡ぎあげる。


地面に魔法陣が展開され、彼等の意識は遠のいていく。


意識が戻り周囲を見渡すとまるで戦争によって荒廃したような街が映り天空に向かって伸びる炎や黒煙。


「これがムーティヒの生きていた世界であり戦場です」

「それってここが戦う場所ってこと?」


 蛍の質問にカルディナールはただ首を縦に振る。


 すると、突如爆発音が轟き、目には眩い閃光が発し、視界を奪われる。


「クックックック、死ぬ覚悟は出来たみたいだなぁ~ガキ共ォ!」


 立ち昇る黒煙と炎の奥からムーティヒが姿を現し、余裕の笑みを浮かべていた。


「あー……なんつったっけか? 剣を使うオメェだよ。お膝ブルブル震えてんじゃん」


 俊哉の方を見ると顔を真っ青に染め上げ、膝どころか全身が小刻みに震えていた。


「なっ、なにをそんなに怖がっていますの? こっちは5人も戦力がいるんですよ、恐れるものなど何もないわ!」

「あのチンピラ野郎に以前俺たちは敗北してんだよ。そのせいで一時仲間の絆が壊れかけたり、俊哉はもう戦いたくないなんて事があったんだ。正直俺もトラウマとまではいかねぇけどよ、若干の抵抗はある」


 完全なる敗北。


 他人とは違うモノを持っていると心の何処かで知らず有頂天になっていた時に現れ、死の一歩手前まで弄ばれた。


「まぁ、基本は一対一って言われてたけどよォ、今にも泣き出しちゃいそうで可哀想なガキがいるから全員で掛かってこいよ。その代り興冷めだけはさせてくれんなよ」


 中指を立て何処からでも掛かってこい、と言わんばかりな態度に一番初めに沸点に達してしまったのは雪斗だった。


「上等じゃねぇか! 俺もようやく能力が覚醒したんだ。昔の俺と一緒にすんじゃねぇぞッ!!」


 駆け出そうとする雪斗の腕を誰かが引き止める。


 その制止する腕を辿っていくと、先程まで震えていた俊哉だった。


「んだよ……邪魔すんじゃねぇよ」

「俺1人で戦う……」


 そういい雪斗の脇を抜け、最前線に立ち詠唱を読み上げる。


「我亡国の英雄にして反逆の騎士、我が剣は義を軽んじる不敬の刃、今此処に断罪と反逆を…アグリンスト フォーバエイゲン《反逆せし騎士の剣》」


 発現させるは、かつてある一族にとって呪われた妖刀といわしめた日本刀。


 禍々しい気配を帯びる得物をしっかりと握り締め構える。


「俊哉……勝てるんだな?」

「おいおい、一番のビビリちゃん一人で何が出来るんだよォ? 下がってた方が良いんじゃねいかァ?」

「お前等、うっせぇぇぇぇぇぇ!! 俺はやるって言ったらやるんだ! 邪魔なんてさせねーし、負けねーから見てろ!」


 俊哉の大声に二人とも黙る。


「よし、わかった。行って来い! だけど、俺たちが無理だと判断したときはテメェの意志関係なく戦いに割り込む。いいな?」

「おう、任せとけ!」


 俊哉は振り向かず、あくまで相手の方を向きながら返事をして、ムーティヒとの距離をすり足で詰めていく。


「さてさて、今度は炭化させちゃうけどいいよなァ~。今回はお遊びじゃなくって本当の殺し合いなんだからよォ!」

「うっせー馬鹿、消し炭になんてされてたまるかよっ!」


 ムーティヒは普通に歩きながら近づき、手には魔力を宿し、いつでも爆破させる準備が整っていた。


 雪斗達はそんな二人の戦いを固唾を飲み、じっと見守る。


 手に汗が滲み、剣を取り落としそうになるが、手の震えにより剣先が震え、上手く斬れる気がしない。


「ああ、言っとくけど俺の爆破はどんなものだって溶かすぜ」


 そう言うや、魔力の篭った拳を顔の位置にまで持ち上げ見せつけるように手を握っては開く動作を何度かするが、俊哉はなるべくその恐怖を直視しないように視線を下げながらすり足を持って距離を詰める。

 

 互いに纏う魔力は反発し合いながらも、互いを飲み込もうとぶつかり合う。


 その初めて感じる感覚に俊哉の身体を甘い刺激が、電撃のように迸り思わず身震いをしてしまう。


「なんだこの感覚は……」

「クハッ、どうよこの互の魔力がぶつかり喰らい合う感覚、たまんねぇだろォ!!」

「魔力のぶつかり合い?」

「ああ、折角だ観戦者のガキ共も聞いておけ、自身が能力を使用している間は周囲に魔力の領域ってモンを張るんだ。んで、その領域同士がぶつかって相手を支配しようとぶつかり合う。そして、支配された方は相手の領域内で戦わなきゃならねぇ。ようは相手の土俵で戦う分、支配された方は不利になるってことだ、わかったか、ガキ共」

「へっ、俺に難しいことを説くんならもっとわかりやすく説明しやがれッ!!」


 ムーティヒが領域について語っている隙に距離を詰め、俊哉の間合いは完成し剣を構え斬りかかる。


「クク、お前が距離を詰めていたことに気づいていないとでも思ったかよ。喰らわせて貰うぜお前の領域をなァッ!」


 その時俊哉の内側でなにか警告を発していた。


 だが、その警告を感じた時にはすでに全てが遅すぎた。俊哉の周囲に展開された魔力の領域は消滅し、辺りはムーティヒの支配領域と化していた。


「ヒャッハー!! 爆ぜやがれ! クロシック・オヴァーレンスゥゥゥゥゥゥッ!!」


 地面には紅蓮の色を輝かせる魔法陣が浮かび上がり、領域内は空気の熱量は上昇し陽炎のように揺れる。


「なっ、なんだよコレ!?」


 周囲は瞬間的に連続的爆発を引き起こし、耳を塞ぎたくなるような音と閃光、そして熱。距離を置く蛍達でさえ目と行内が乾いていく。


 一瞬も止むことなく爆ぜ、爆音や爆風が辺りに被害を与え広がっていく。


 風が黒煙を払い、展開された魔法陣には俊哉の呼び出した妖刀が地面に転がり本人の姿は見当たらない。


「俊哉ッ!!」


 雪斗が睦月が悠理が怜央が消えた仲間に悲痛に呼ぶが、返事はない。


「早い終幕だったな。あっけねェ……興冷めだな」


 つまらないものをみるように転がる剣を蹴り飛ばす。


 だが、この戦場で蛍だけは見ていた。

 

 黒煙が立ち上る漆黒の天を……。


こんばんは、上月です(*'ω'*)ノ


ようやく開始された世界の命運を賭けた戦い。

初戦は爆発をツあkサドルムーティヒと俊哉です!

次回の投稿は10月29日土曜の夜を予定していますので、どうかよろしくお願いします!

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