睦月と蛍、休日のデート
支度が済みリビングに行くと珍しく母親が朝食を作っていた。
こうして朝に母親と会うのはどれくらいぶりだろうかと考えながら言葉を掛ける。
「おはよう、お母さん」
「あら、おはよう蛍。今日は早いのねお出かけするの?」
「うん」
笑顔で息子に答え、ちょうど出来た朝食を皿に盛り付け手渡す。
それをテーブルに持っていき冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注ぎ目が覚めて喉が渇いていたため今日初めての水分を摂取する。
夏場は部屋も暑く、目が覚めれば汗で全身が濡れていることが多く、水分を多く摂取しなければならなかった。
朝1番に喉に流し込むお茶は格別に美味しく2杯目もすぐに飲み干してしまう。
母親と朝食を摂り最近の友達との出来事や学校の事などを話し親子の時間を有意義に過ごした。
九時半に家を出ていつもの待ち合わせの海老沢では無く、今日は小森ヶ丘公園で睦月と待ち合わせをしたいた。
俊哉達は都合は悪いらしく、非常識な神々との戦いはどうなるのだろうかと思っていたが、昨日のお寿司屋さんで、明日はあちら側も何やらやらなくてはならない事があるらしく今日一日はフリーとなった。
小森ヶ丘公園は蛍と睦月が仲間になった場所でもある思い出の場所といっても間違いがない。
待ち合わせといってもその土地は広大で外周を散歩すると二時間くらいはかかる場所だった。だから睦月とは公園内にある小森ヶ丘美術館入口で待ち合わせをしていた。
蛍がちょうど美術館に着くと睦月は既に到着していたらしく、どうやら待たせてしまっていたようだった。
「おはよう、睦月待った?」
「ううん、大丈夫。そんなに待ってないよ」
いつもの漆黒のロック衣装ではなく普通の女の子のようなスカートを履いていた。
「今日はいつもの格好良い服じゃないんだね」
「うん、まぁ……今日くらいはたまにはこういうのも良いかなって思ってね、変かな?」
「凄く似合う、可愛いね」
お世辞とかが苦手な蛍の発する言葉が睦月は素直に嬉しかった。
今日の誘いは睦月からで、どうしても今日一緒に二人で出かけたいとのことだった。
昨日は布団の中でどういうスケジュールにしようか悩みに悩んで、結局睡眠時間は3時間と短くなってしまった。
「睦月はどこにお出かけしたいの?」
「今日はいつもの海老沢じゃなくて小森ヶ丘を巡ろうと思ってね、どうかな?」
「僕はそれでいいと思うよ」
蛍は睦月に連れられ小森ヶ丘の街を散策する。
いつもの海老沢は若者が多く行き交い賑やかな雰囲気の街だが、ここ小森ヶ丘は自然をメインに白を基調としたお店が並び、どちらかといえばオシャレを重視した街だった。
きっと俊哉であれば直ぐに飽きてしまうだろうな、とそんなことを考えながら睦月に手を握られ街を歩いていく。
初めに入った店は海老沢にもある映画館だが、内装は海老沢のものと違ってやはりどこか品があり高級感が漂っていた。
「私がちょっと気になってる映画があるんだけど……付き合ってくれる?」
「うん、僕は観れるならなんでもいいよ」
「ありがとう!」
受付で券を二枚購入し六番部屋の指定された席に座り、上映前に交代でトイレを済ませ、数分くらいの予告が終わった後に本編が始まる。
睦月が見たかったのは恋愛もののようで物語が展開されていく。
流れるシーンにどこか引っ掛かりを覚え、この跡の展開を知っているような気がして、案の定思い描いていた展開通りになった。
何故自分がこの映画のことを知っているのか疑問に思ったが今は映画に集中したかったので考えを放棄し、スタッフロールが流れるその間も睦月は食い入るように映像を見つめ、その視線には熱を感じた。
二人は物販を少し眺め映画館を後にする。
「あ~面白かった! なんか久しぶりに本気で感情移入した気がするなぁ」
睦月は満足気な表情で照りつける太陽に手をかざしながら見上げ、蛍もそれに続き太陽を見上げるがあまりにも眩しく直ぐに下を向いてしまった。
「うん、僕も楽しめたから良かった」
「なら、良かったかな! 私だけ楽しんじゃうのも悪いかなって思ったんだけど、次行きたい所とかある?」
「本屋に行きたい」
今日という与えられた休息の時間、二人は時間の限りを遊びつくし、やがて日は暮れ始めていた。外灯に明かりが灯され、店から流れるBGM、ゲームセンターやパチンコ店の騒音、行き交う人間たちの会話、昼間とは違う活気がこの街に生まれる。
蛍と睦月はその賑やかさから少し離れた小さい公園のベンチに腰を下ろし、ジュースを片手に一息ついていた。
「今日が終わっちゃうね」
「そうだね、出来れば今日のような日常がこの先もずっと続けばいいのに……」
飲みかけの飲み物を脇に置き睦月は意を決したように立ち上がり、その姿を片目で追う。
「その……えっと、変なこと聞くけど、私って君の目からしたらどんな感じに映ってるのかな?」
「……?」
意味があまり分からないといったように首を傾げる。
その反応に睦月は顔を真っ赤に染め上げ俯きながらも言葉を発する。
「だから、私はどんな風に思われてるのかなって………」
ようやく意味を理解し今一度自身が睦月をどのように思い見ていたかを思い出してみる。
「カッコいい、でも中身はやっぱり女の子なんだなって所があって可愛いと思う」
「………」
拙い言葉だが、それでも睦月には十分だった。彼は変にお世辞を言うことがなく、ただ聞かれたことには正直に答える、だからそれだけで十分だった。
「そっか、ありがと」
完全なる夜になり駅まで一緒に行きそこで別れた。
こんばんは、上月です(*'ω'*)ノ
いやはや、デート……どんな風に書けばいいんだっ!
悩みに悩んで書いていました。これは、編集していきます。
さて、次回は10月25日の火曜日となります