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舞い降りた終末の聖女

 蛍は夢を見ているのだと思った。


 吐き気を催すような究極の白色に塗りつぶされた大空。今が朝なのか夕方なのか夜なのか、それすらも分からないほどに歪んだ白だった。


 全ては唐突だった。


 廃教会の一室で非常識達を交え、来るべき終末の聖女への対抗策を話し合っていた時の事だ。


「み、皆さん。そと……外を、空を見てください!」


 お茶を入れに席を立った琴人が息せき切って、部屋に転がり込んできたのが始まりだった。


「琴人ちゃん、いったい空がどしたんだ? まさか、俺と一緒に星を――」

「アホか、俊哉。今は昼だっつーの」


 俊哉の本気のボケを真顔で返す雪斗。


「一体、どうしたというのだ琴人。今は外より来るべき……」

「えっと、その……お願いです、空が真っ白なんです!!」


 一瞬にして非常識達かみがみの顔色と空気が変わったのを鈍感な俊哉を含め全員が気付いた。いや……気づかない方がどうかしているだろう。


 非常識は琴人を除いた全員が殺気立っていたからだ。


「空が白いと何か問題でもあるの?」


 息苦しい程の張り詰めた空気の中でさえ、蛍は淡々とした声音で問う。


「あァ!? 問題だと? 大アリに決まってんだろうがァ! 奴が来やがったんだよ……邪神クリスティアがなァ!!」


 蛍や他の常識側が口を開く前に非常識達は席を立ち、机や椅子を突き飛ばして部屋から出て行ってしまう。


「俺達も追うぞ!」


 行動力のある雪斗が呆然とする仲間に声を掛け、遅れて席を立った。


「おい、エーデルゥ! 奴が来るのは三日後って言ってやがったよなァ! どういう事だこりゃよォ。まだ二日だぞ!」


 蛍達も廃教会の外に出ると、ムーティヒがエーデルに掴みかかっていた所だった。


「止めなさい、ムーティヒ! 今は仲間内で争っている場合ではありません!」


 二人に割って入ろうとするカルディナールだが、混乱状態のムーティヒに突き飛ばされてしまう。


「止めんか馬鹿者がッ!」


 非常識側で最大の武を誇る武神ヘルトの拳がムーティヒの頬を打ち抜く。


「アガァ……ッ!」


 吹き飛ばされたムーティヒは、エーデルから手を放して地面を転がっていく。


「ふふふ、ヘルト殿も相当に焦っておいでのご様子で」


 突如としてラインがネットリとした声音で、両者の間に立つ。


「ムーティヒ君の気持ちも私は理解していますよぉ。ですがね、エーデル君を責めるのは筋違いだ。いや、むしろ邪神が近いうちに訪れると助言してくださっただけ功績者でしょうね。それと、ヘルト殿。我々は仲間です。もっと手を抜いてあげても良かったんじゃありませんかねぇ」

「ならば、貴様が止めればよかったのだ。それと言っておくが、俺は貴様だけは仲間と思った事は一度もない。武を愚弄し、立ち向かう戦士を悪戯に芸術という馬鹿げた思想の下に醜態を晒させ殺す。そんな奴とどうして仲間になれようか!」

「ふぅ……まったく、私の芸術を誰も理解してくれないんですねぇ。あぁ……神よお許しください、彼等はただ目が曇っているだけなのです」

「神だと……? いま、この場にいる神はあれだろう?」


 ヘルトの視線は真っ白な空に向けられていた。


「えぇ、あれは崇拝対象ではありませんよ。そうですよね、敬虔なる信徒であるカルディナール君」

「当然です。あれは人々のよりどころとなる神ではありません」

「もういい。今はあれをどうするかを決めるのが先。こちらから仕掛けるか、動くのを待つか」


 どうでもいい話を打ち切るエーデル。


「チッ、仕掛けるも待つもよォ……向こうからお出でななったみたいだぜェ」


 殴り飛ばされたムーティヒが天空の一点を睨み付けていた。


 一同はムーティヒの見る先へ視線を送る。


「あれが……」

「邪神クリスティアなのか?」


 天空を割って、純白の六翼を携えた少女が地上を睥睨していた。


 遠くからでも分かる。


 白を基調としたドレスのような修道服。クリーム色の髪が揺れていた


 その瞳は誰もが身震いするほど機械的で、感情という余計なモノを削ぎ落し、盲目的な使命を遂行するという一点によって生きていなければ、あのような冷たい瞳を持つことは出来ない。


 邪性を排した歪んだ聖性。


「…………」


 クリスティアの視線が動いた。


「僕を……見てる」


 感情の無い瞳と感情が希薄な瞳が見つめ合う。

こんばんは、上月です(*'▽')


とうとう現れたました前作のヒロインでありラスボスのクリスティア。

古き世界の魔王たちを容易に屠った力の前で、蛍たちに成す術はあるのだろうか!?


次回の投稿は明日の夜を予定しております!

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