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ホットミルクの甘い味

 あと三日。


 それは、唐突なカウントダウン。


 刻一刻と迫るその時を蛍は廃教会の貸し部屋にて、体力の回復に努めていた。


 軽いノック。


「蛍、具合はどうかな?」


 濡れた髪をタオルで拭きながら睦月が部屋に入って来た。


「うん、なんとか。でもまだ、頭がぼんやりする」

「そっか、別に焦る必要とかはないからね。今はゆっくり体を労わってあげて」


 優しく語り掛ける声音。蛍は真っ直ぐに睦月を見上げて頷く。


「うん、ありがとう。俊哉達は?」

「みんなも今は身体を休めてる。カルディナールさん達は……」


 言葉がつっかえる。


 非常識である彼等は自分たちが何を成すべきか。もう、考えるまでもなく決まっていた。


 非常識達は最期のその時が来るまで、互いに語り合い本当の仲間として共に逝くべく酒を酌み交わしていた。そう、彼等には迎えるべき未来は無いのだ。


「睦月……」

「ん、なに?」


 部屋に備え付けられているコンロでお湯を沸かしていた睦月が振り返る。蛍は一度視線を天井に向ける。


「僕は嫌だな。カルディナール達が死ぬの」

「……うん、私もいや。確かに彼等は敵だったけどさ、別に憎み合っていたわけじゃないし、互いに譲れない想いがあったからこそぶつかったわけで、どっちかといえば、好敵手ライバルだと私は思ってる。だから、私も彼等が自爆するなんて本当は……させたくないよ」


 睦月は俯く。


 声も若干震えていた。蛍はこの話題を口にしたことを少しだけ後悔したと同時に、睦月の非常識かれらに対する本音が聞けて良かったとも思った。


「この運命って決められていたものなのかな?」

「どう……かな。私は運命って言うのは自分たちで切り開くものだと思うし、何事にも絶対なんてないよ」

「じゃあ、まだ何とかなるかな。非常識かみさま常識ぼくらも生存している未来を創りだせるね」


 そうだ、まだ決まったわけじゃない。


 運命は変わるのだ。


 クルトの力は未来を創り出すという絶対的なものであった。だが、それを蛍は打ち破ったではないかと、睦月は思い出す。


「そうだよ! きっと誰も死なないハッピーエンドを迎えられるよ。だから、今は休んで。はい、これ」


 ベッド脇の小さな丸机の上に湯気が立つカップを置く。


「ホットミルク?」


 ほのかに香る甘い匂い。


「紅茶とかの方が良かった?」

「ううん、ありがとう。僕は諦めないよ。どんな結末でも最後まで僕は抗うよ」

「もちろん、私達も一緒に付き合うから。蛍は一人じゃない」


 壁に掛けられた時計は既に零時を回っていた。


 流石にこれ以上の滞在は彼の為にならないと判断し、睦月は軽く手を振って部屋を出て行った。


 残された蛍は、身を起こしてホットミルクをチビチビと啜っていた。


こんばんは、上月です(*'▽')


次回、とうとうクリスティアと蛍が対面します。

彼女は蛍の夢に出てきた優し気な少女ではなかった。


次の投稿日は明日を予定しております


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