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非常識達の覚悟

 クルトは消失し、彼女の戦場も霧散し風景は寂れた協会のモノに置き換わる。


 カルディナールは瞳を伏せる。


「話しって?」


 珍しく疲労の色を濃くした表情の蛍が、俊哉と雪斗に支えられながら訪ねる。


「我が主……いいえ、旧世界の英雄まおう――クルト・ティアーズがこの世界に張っていた結界と、これから立ち向かわねばならない大いなる聖性についてです」


 大いなる聖性とは、きっとクリスティアの事だろう。だが、この世界に張った結界とは……。蛍も初耳だった。


「大いなる聖性ってクリスティアの事だよね。結界って言うのは?」

「ええ、結界はクルトが最期の意地で……希望である貴方達の為に張ったものです。大いなる聖性……いえ、クリスティアでしたね。彼女の行いは世界に生きるモノ達にとっては惡性でしかありません。ですが――」


 カルディナールは深く息を吐き出す。


「世界にとっては救済なのです」

「はぁ!? そりゃ、どういう意味だよ!」


 雪斗が反射的に食って掛かる。


「世界にとって私達は悪性因子でしかないのです。人は木を切り、既存の自然環境を破壊して汚染物質を生み出します。そんな、彼らが星にとって害悪以外のものではありません」

「つーことはよぉ。クリスティアか? そいつはただ純粋に害虫駆除をしてるだけってか? だから何だってんだよ。俺達は――」

「オイオイ、ガキ。よぉく思い返してみろよ。オメェラの家にゴキブリが出たら見て見ぬふりするか?」

「…………」


 ムーティヒの言葉に雪斗は押し黙る。


「そういうこった。俺達がゴキブリを殺すのと、奴が人を殺すことに大差はねぇんだよォ」

「ゴキブリの例えはどうかと思いますが、そういうことです。えっと……話が逸れてしまいましたね。つまり、クルトは世界とクリスティアにとってマイナスとなる因子をこの世界に残しました」

「……マイナス?」

「はい、未来創造です。クルトの力は強大な摂理の前には効果がありません。であれば、対象をクリスティアではなく世界そのものに限定すれば、直接的ではなく間接的にクリスティアを弱体化できると言っておりました」

「へぇ、じゃあ俺達ってちょっと優位に立てるって事? マジか! なんか、希望が見えてきた――」

「黙りなさい、顔面底辺」


 浮かれる俊哉をピシャリと玲央が黙らせる。


「弱体化ってどれくらい効果があるのかしら?」

「わかりません。ですが、今や百パーセントの実力は発揮できないはずです」

「はぁ……つまりは、あまり期待するなということね。無いよりはマシと考えておけばいいのよ。分かったかしら、顔面底辺?」

「お……おう」

「もちろん、私達も最後の切り札は残してあります」

「切り札? 俺達との死合いには使わなかった代物か?」

「はい」


 雪斗の表情は険しくなる。


「つまり、だ。テメェ等は俺達と戦う時、全力を出してねェってことだよなぁ!!」

「いえ、それは違います! 私達の切り札は貴方には一切の効果がないものなんです」

「そりゃ、どういった業なんだよ?」

「…………」


 黙するカルディナール。


 代わりに雪斗と死合った時間逆行の力をもつエーデル・ヴィンターが答える。


「私達が爆弾になる。私達の最大魔力を奴にぶつける。奴の魔力を不純物わたしたちで満たす。貴方達の力は魔力じゃない。だから効果がない」


 そうすれば、奴の力は衰えるはずだと。


「爆弾になったテメェ等はどうなる?」

「死ぬ」

「死んでどうする! もし効果が無かったら無駄死にだろうがッ! 自爆特攻? 今時流行んねぇんだよ!」

「意味はある。私たちは最後まで立ち向かった。諦めなかった。だからいいの。でも……」


 淡々と話すエーデルは口ごもる。


「貴方達は生きて欲しい。これは、私達全員が強く願ってる」


 この言葉に雪斗の表情は一層に険しくなり、溢れんばかりの感情を盛大に吐き出した。


「クソッ! 死にたいなら勝手に死ね。俺達は死ぬ気はねえ……それに、テメェ等のことも忘れねぇ」

「ありがとう。……ッ!」


 蹲るエーデル。


「すぐ近くまで来てる。あと、三日で……この世界に舞い降りる」

こんばんは、上月です(*'▽')


投稿日を二日も過ぎてしまい申し訳ありませんでした。

次回の投稿は今夜を予定しております

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