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未来創造――クルトの能力

 神・魔力・世界、万物全てが芽吹き始まった神代の楽園――常世の時代。


 高度の叡智と文明を築き繁栄した究極至高の世界。


「蛍君……いいや、蛍。もっと抗ってくれなきゃ未来は変わらないんだよ」

「…………」

「キミは俺達に誓ったよな。俺を倒し、クリスティアを救ってくれるって」

「…………」

「それが――」


 それが、こんな終わり方をして誰が納得できるか。


 蛍は瓦礫の残骸の力なくもたれ掛かり、腕は在らぬ方へ曲がり、肌を真っ赤に染め、ピクリともその身体を動かそうとはしない。


 呼吸はない。


「俺はもう先が長く無いんだ……頼むから起きてくれないか?」


 黄金の瞳を泳ぐ怒りの情。


 クルトの背後。


 避けた空間から伸びるノイズの巨腕。この腕が蛍を一方的に殴りつけ殴殺した正体。


「死んだのなら仕方がないか……ゲームは俺の勝ちだ。俺はこの最後の命を糧にこの世界を消失させるよ」


 結界の外。


 俊哉達は必死の表情で何かを叫んでいるが、防音効果を持つ領域内に彼らの声は届かない。


「はは……」


 クルトは笑った。


 分かっていた事だ。常識は非常識を超えられない。


「ケアリア レア アモリアーラ ストゥルト エヴァンジュ ローデ ヴァイド カウンテルト:常世の(ヴィヤージュ)因果終焉・セトメトラ


 理解不能な単語を区切り発音していく。その声を耳に聞き入れる者はいない。目の前には魂の抜け落ちた亡骸が一つあるだけ。


 クルトの描いた終焉の未来を形作ろうと、強制的宇宙意志が働く。


「ああ、お前は悪くはない。悪いのは俺達、古き世界だ。さようならだな……」


 世界は白い光に覆われていく。




「ん……」


 蛍は目を覚ます。


 とても静かな場所だった。電車や都心の喧騒もない。ただ、涼やかな風が全身を撫で、野原に続く草木が揺れていた。


「ここ……どこだろう」


 周囲を見渡しても、緑豊かな野原が続き、遠くの方に山があるだけの世界。


「ふむ、貴公は終わるのか?」


 突如として背後から聞こえた声に振り返る。


「あっ……」


 銀色の長髪。翡翠色の双眸を優し気に細めた長身痩躯の男性。


「アルベール?」

「うむ、我はアルベールだ。久しいな」


 枯木のように痩せ細り、つやの無いボサボサとした髪でもない。今、目の前には誰もが振り返るであろう美貌を持つ青年が腕組みをして立っていた。


「そうだ。アルベール、ここはどこ?」

「むぅ……なんて答えればよいか。うむ! そうだな、何処でもない隔離された世界とでも言っておこう」


 アルベールの言った意味が分からず、首を傾げる。


「僕は……死んだの?」

「うむ、貴公はクルトの手によって瞬殺されたのだ」

「そっか……約束、守れなかったんだ」

「それで、貴公は諦めるのか?」


 アルベールは静かに問う。


「諦めたくはないよ。でも、もう……」

「ならば、今一度目を覚ますといい。我の術式を破った時のように」


 どうやって。


 そう聞き返そうとしたところで、身体に違和感を覚えた。


「ん? 体中が凄く痛い」

「いや、貴公の言い方からして痛そうには聞こえぬのだが……」


 苦笑するアルベール。


 小さくだが微笑み返す蛍。


 痛みは熱へと変換される。胸の奥底から湧き上がる得体の知れぬ何か。


「僕、もう一度戻るね」

「うむ。もう二度と此方へ来るべきではない」


 アルベールとの距離がどんどんと開いていく。別に歩いているわけでは無い。距離を引き延ばされているといった方がいいだろうか。


 視界は暗転した。



こんばんは、上月です(*'▽')


今一度、蛍は戦場へ。

次回、蛍の信の能力が発揮します。


次の投稿日は明日の夜22時くらいをよていしております!


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