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常識の希望達

 クルトの宣告。


 それは、自分の命の期限。


 蛍との戦いが最後だと絶対の預言者は口にした。確かにクルトは敵ではある。だが、彼女には彼女の譲れないものがあって、悠久とも思える長い時間をクリスティアと世界を救い出す為に世界を滅ぼし続けてきた。だが、その命も終わりを迎えるという。


「本当……?」

「ああ、本当だよ。だから、俺はこれ以上、クリスティアの侵攻を防ぐために世界を壊すことも、彼女を救い出すことも出来ないんだ。だから蛍、キミ達に後を託したいんだ。その為にキミを完全に覚醒させなきゃいけない」


 死を目前にして穏やかな声音。


 まるで、死を恐れていないよう。


「ど、どうして、死ぬと分かってるのに平然としてられるんだよ! だったら、戦わなくてもいいじゃんか! 一緒にクリスティアを倒そうぜ。そうしたら、少しでも……」

「ありがとう、俊哉君。キミはとても優しい子だ。素直で真っ直ぐな非常識である俺が眩い程に……そういえば、俺のいた時代にもキミと同じように真っ直ぐな人間がいたな」

「なぁ、どうなんだよ。俺達とお前達が力を合わせればなんとかなるだろ?」


 涙ぐむ俊哉の迫る言葉に、クルトはゆっくりと首を振るう。


「確かに、キミ達と共闘すれば大きな力になるだろうね。だが、無理なんだ。俺がこの世界に張った結界は俺の命が尽きたと同時に瓦解する。彼を覚醒させるには、俺が最後に本気でぶつかるくらいしか手段はないと思う。だから……切り札となりえそうなキミを万全の状態にすることが、今の俺の存在意義だ」


 蛍の能力の覚醒。


 アルベールの銀化の能力でその命が凍え潰えようとした時、自身でも何が起こったのか理解が出来ない力が発揮し、気付けば蛍はアルベールの能力から解放されていた。


「クルト、その役目は他の人じゃダメなの?」

「ああ、きっと無理だろう。キミの心底に死を理解させるには少々役不足だ」

「ちょっと待ってよ。貴女が死ななきゃ結界は崩壊しないのよね。だったら、貴女の力で自分が生きてる未来を創り出せば……」

「それも無理なんだよ。何かの力がそれを拒んでる。俺も死にたくはない。何度も試したさ……だけど、結局は思い描くだけで、俺の寿命は変わらない。むしろ、能力を使う事によって死を早めていた。さて、ここからが本当の本題だ」


 クルトは追加でデザートのアイスを四つ注文した。


「いやいやいや、まじめな話してるのにどうしてアイス注文したんだよ!」


 俊哉のツッコミに表情を崩したクルトがテーブルを指さす。


 そこには、食べ終わった食器が並んでいた。


「食べ終わったのに責を占領しているのは、店にとって迷惑だろうからね」

「クルト、貴女って……」


 睦月は半笑い。蛍と俊哉はなるほどと頷く。


「キミ達の能力の中で、クリスティアに唯一対抗できそうなのが、睦月ちゃん、俊哉君、蛍君。キミ達三人なんだよ」

「えっ……俺達三人?」

「そうだよ。まず睦月ちゃんの鎖、これは神々を力ごと押さえつけ断罪する代物だ。であれば、クリスティアの動きをある程度までは封じられるかもしれない。そして、俊哉君は歴戦の英雄や神々が使用した武器の召喚。もしかしたら、効果的な武器があるかもしれない。そして――」


 クルトは黄金の瞳を開く。


「蛍、キミが一番重要だ。あのアルベールの銀聖の力を無効化した。常識が非常識の中でもさらに別格であるアイツの力に対抗したとなれば、それはもう期待せざるを得ないだろ?」

「……かもね」

「だから、言いたいんだ。常識ニンゲンはいつも俺達の斜め上をいった行動をしてくれる。だから、何があっても諦めるなってね。ふぅ……話が長くなったね。年寄りの長い話は終わりにしよう」


 クルトは運ばれてきたアイスを満面の笑みで口に頬張り始めた。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回はとうとう蛍とクルトの戦いを書いていきます。

投稿日はまだ未定ですが、一応水曜日までに投稿できればいいなと思っております。

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