表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/144

夢とは……

 全身をベッドに放り投げ、天上に取り付けられた蛍光灯の眩しさに目を細める。


「……やり直したいこと」


 ポツリと蛍の口からこぼれる。


 どうして、あんなコトを聞いてしまったのだろうか。聞いて意味などあったのだろうか。蛍は妙な胸のざわつきに眉根を小さくひそめる。


「みんなにもやり直したい過去ってあるのかな……」


 中学からの付き合いである俊哉を始め、睦月、玲央、悠理。


 皆誰しも、胸の奥底に潜めた後悔というモノはある筈だ。もし、やり直せるなら――。


「……ん?」


 ズボンのポケットから伝わる微振動。


 携帯の着信だ。


 ディスプレイには、これは珍しくも玲央の名がドット文字で記されていた。指は自然と通話ボタンを押していた。受信口からは少々イラついているような溜息が漏れ聞こえる。


「遅い……まぁ、そんなコトはどうでもいいわ。変な事を聞くようだけど、ここ最近変な夢って見たかしら?」

「……夢?」


 確かに変な質問だ。


 蛍は何て答えるべきか、低く唸り悩む。


「そのままの意味よ。別に夢を見ていないならそれでいいんだけど。どうなのよ、見たの? 見てないの?」


 少し前に、そう。この街が――世界が崩壊する夢ならば見た。


 だがそれは、夢であり夢ではない。クルトの見せた別世界の映像。


「見てないよ」

「そう……なら、いいわ。夜分遅くにごめんなさいね。おやすみなさい――」

「待って」


 早々に通話を切ろうとする玲央を蛍は反射的に呼び止める。


「……?」


 受信口の向こう側から聞こえる驚きに息をのむ音。


「なにかしら?」

「うん、ごめんね。玲央の見た夢ってどんな夢だったの?」

「夢……そうね。通話料金が高くなるわ。明日、暇かしら?」


 蛍は暇だと伝える。


「明日、朝十時に国佐田くにさだ駅の改札に来なさい。私の最寄り駅よ……そう、そこから四つ先の駅。ええ、待ってるわね」


 駅の確認をした蛍は通話を切る。


「玲央は国佐田駅が最寄なんだ」


 都心海老沢市の中でも群を抜いた一等地で、高級車を見せつけるかのように駐めてある、無駄に広い一軒家が立ち並んでいる区域。以前に一度、俊哉が金持ちの生活を視察しに行くと言って、着いて行った記憶がまだ真新しく残っている。


 結局、金持ち(セレブ)の生活の様など確認できず、途中で飽きた俊哉に振り回される形で海老沢に戻り、一方的に愚痴を聞かされながらラーメンを啜る始末。


 あれが、日常だ。


 本来、蛍達が送るべき常識じんせい。きっと、また返れる。その為にも戦わなければならない。


「うん、返りたい。退屈で色の無い世界だけど、今の僕には友達がいるから……」


 それ以上に至高のかがやきはあるだろうか。


 一人一人と最近になって増えた仲間たちの顔を思い返してると、途中で睡魔に襲われ、意識は微睡の中へ沈みゆく。


こんばんは、上月です(*'▽')


次回の投稿は明日になります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ