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失望の武神

 武神ヘルトの世界にはこれまでの非常識達のような凝ったモノは一切なく、この世界にすむ蛍達もよく目にする学校の体育館のように広い道場のような場所だった。


「へぇ、ヘルトさんの事だからもっと死体が散乱している野原かと思ってたんだけどなぁ」

「俺の戦場に邪魔なものは必要ない。こういった場所の方が地の利というものに関係なく戦えるだろ」

「そうだねぇ。うん、じゃあ……そろそろ、始めちゃおうよ」


 緩やかな口調と相反する妖艶な輝きを放つ大鎌を両の手で持ち、真横に振り抜ける様に腰の位置で構える。


「俺は、この世界で久しく忘れていた感情を思い出すことが出来た。俺と渡り合える実力を持つお前の存在が、武人としての喜びを与えてくれたのだ」

「今の私の中にはリリアンはいないけど、ヘルトさんを失望させないくらいには頑張ってみようかなぁ」


 離れた場所で二人の様子を見守る蛍達は、空気の重さが変わっていくのを、その肌で確かに感じていた。これから始まるのは今までのように能力同士の派手な戦いなんかではない。


 己の人生を経てたどり着く業の打ち合い。


 リリアンの居ない悠理が、どれほどの業を持ち得ているのかは誰も知らない。


「ゆくぞッ!」


 引き抜かれた柄の無い刀剣は曇りない孤高の煌き。


 意識を反らしてはならない。そんなことは百も承知ではあるが、その美しすぎる刃に眼を奪われてしまい、ヘルトに必要以上の接近を許してしまった。


「おっと、危ない危ない」


 我に返ると同時に大きく一歩後退し、目測で自分と相手の距離感を計算する。


「シッ!」


 短く息を吐く。


 足のバネを使い大きく前方に飛躍し一気に距離を詰め、刀剣を振り下ろす。


 自分の得物の間合いとヘルトの距離を計算していた悠理は、今までの思考全てをご破算にされ、ほぼ、条件反射に大鎌を薙ぐことなく、柄を持ち上げ刀剣の一撃を受け止める。


「ッ!?」


 予想を遥かに凌駕した重量と全身の骨が潰されるのでは、という衝撃に表情が険しくなる。


「馬鹿者がァッ!」


 刀剣を持たぬ右拳を悠理の腹を打ち抜こうと迫るが、柄を傾けては刀剣の軌道を反らし、拳を柄で受けるが、先程の刀剣の一撃程ではないが、腕から背に突き抜ける衝撃と左の前腕部から変な音が聞こえたのは同時だった。


「痛ぅ~これは、折れたかなッ!」


 勢い任せに右手だけで超重量の大鎌を振りぬき、距離を取る。


「両手でなら軽く振り回せるけど、片手だと……う~ん、ちょっと不味いかなぁ」

「俺を失望はさせないと言ったな」

「え……なにかなぁ?」

「戦場に思考なんて邪魔な因子は捨てろ。お前は俺とお前の距離を測っていたな。それは功を成したか?」

「成さなかった……ねぇ」


 戦場とは常に不測の事態が起こる場所だ。故に、いちいち細かく考えて何になるというのか。ヘルトはそう言っていた。


「もし、次、俺を失望させるコトをしてみろ。お前より先にあの小僧どもを殺すぞ」 


 ヘルトは本気で言っていた。


こんばんは、上月です(*'▽')


次回の投稿は火曜日か水曜日を予定しております


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