地に落ちた火玉
どうしてこうなった……。
常識側のさらに常識者である睦月と雪斗は周囲の惨状に唖然とさせられていた。
海浜公園はまるで戦時空襲を受けたかのように至る所にクレーターができ、木々がなぎ倒されていた。もちろん、地に伏せる玲央やムーティヒ達と双方の陣営が伸び切っている。
そして、この惨状の中で未だに線香花火に興じる螢、クルト、エーデルの三名。
「ははは、花火大会というのも楽しいものだな。そうは思わないか、エーデル?」
「ええ。なかなかに、楽しいわ」
「僕も楽しい。残ってるのは僕達三人だけだね」
戦争状態だった中でさえこの三人は今みたいに語り合いながら花火に興じていた。
「あ……私の落ちた。あとはクルトとキミだけ。頑張って」
しゃがみ込んでいたエーデルは名残惜しそうに線香花火の残骸を水バケツに放り入れ、非常識側で唯一無事だったヘルトと琴人に並び、残った二人の花火に目を向けては、どちらが勝つかと盛り上がる。
「オイ、俊哉起きろ。いつまで伸びてんだよ。まったく、だらしがねぇ、睦月悪ぃけど、コイツ引っ張んの手伝ってくれるか?」
「うん、いいけど。はぁ……この公園どうするの? 警察とか消防がそろそろ来ちゃうんじゃないの?」
「あぁ、そのことなら心配しなくてもいいよ。ここら一帯は俺が結界を張ってあるから。それに、治すのは簡単だしな」
視線は花火に向けたままクルトは当然のように告げる。
「クルト、そろそろお互いに終盤だよ」
「そのようだね。ふふふ、俺は今凄くワクワクしているよ。こんな平和な戦いで胸躍るなんてね」
「この花火に勝ったら、試合は僕たちの勝ちでいい?」
「試合? ああ、それとこれは別問題だよ。俺はこれ以上世界の崩壊を進行させるわけにはいかないからね。それに――」
「クリスティア?」
「ああ、キミに……キミ達に彼女を救える血あkらがあるかしかと見極めなきゃいけない」
「そうだね。僕も助けるって約束したし……あっ、花火」
「勝負ありか……うん、楽しかったよ」
両者の視線の先はクルトが持つ花火の先端に向けられていた。赤い火玉は地面に落ちていた。
「さて、俺達の負けだ。なにかご褒美をあげなきゃいけないな。おっと、その前に――」
クルトは伏せた金眼を開く。
どうやら、力を行使する際には眼を開けるようで、その視線は空に向けられている。
こんばんは、上月です(*'▽')
次回の投稿は未定です。