ルールなんて知らないから仕方ない!
非常識達も線香花火というものを理解し、みな手には一本ずつ持つ。監視の意味も含めて円形に顔を合わせる様にしゃがみ込む。
夕日は水平線に沈み、蒸し暑さと蝉のけたたましい鳴き声が公園を満たす。
不公平が無いように、各自の前にロウソクが置かれゆらゆらと灯が揺れている。
「うっし! じゃあ、始めようぜ。つか、負けた方はどうすんだ?」
円陣を組む全員の顔を見渡す俊哉。
「私的には、次の戦いを線香花火で決めた方が早くて楽でいいんですけどね」
怜央の何気ない発言にヘルトがいきり立つ。
「貴様! 武人の戦いを花火なんかで済ませろと?」
「ふん、怪我人が出るよりかはマシだと思うって言っただけよ」
「まぁまぁ、怜央ちゃんも挑発しないの。ふふ、大丈夫よ。ちゃんとお姉さんが戦うから~」
二人の険悪な雰囲気に割って入る悠理に、ヘルトはならばよしと口を閉ざす。
「まったく、ヘルト。お前も人間の挑発に乗るなんてな」
「黙れ、クルト。俺は誰であろうと戦士の戦いに水を差そうとするものを許さぬだけだ」
「そうかよ。だが、今日は楽しむのが目的だ。余計な殺気は持ち込むなよ?」
返事はしない。
その反応を肯定と受け取ったクルトは常識側に肩を竦ませて見せ、そろそろ始めないか、と言いたげな表情。
「チッ、睦月。今度は負けねぇ」
「その台詞は私にじゃなくてさ向こうに言ってやってよ」
「俺は誰にも負けたくはねぇんだよ」
「どうして、不良はそう勝ち負けにこだわるんですかね。所詮はお遊びじゃないですか、意味わかりませんわね」
「お高く留まったお嬢様には分かんねぇだろうな」
「あーはいはい。喧嘩は終わり。それじゃ、準備はいい? 一斉に花火をロウソクに付けるからね」
今度は雪斗と怜央が険悪な雰囲気を醸し出して来たので、もう面倒くさそうに睦月が強制的に花火大会を進行させる。
「じゃあ、いくよ。……せーの!」
同時に花火に火が点火し、次第に小さくパチパチと火花が弾け始めた。
「あー、地味なんだよォ! って……火の玉が落ちやがったァァァァァァ!?」
じっとしていることが苦手なムーティヒの線香花火の火玉が落ち、地面でジュッと小さな音を上げて消える。
「はい、お前の負け~。へっへん、俺達はまだ誰も脱落してないもんねぇ」
「このクソ人間ぁぁぁぁぁぁ! テメェも脱落しやがれぇぇぇぇぇぇ」
ムーティヒは魔力に干渉し、俊哉の足元に小さな爆発を生み出し、驚いた俊哉が後ろに倒れる。もちろん、花火は地面に放り投げて。
「おう、コラ! そりゃ卑怯だろ! もう一本だ! 睦月、もう一本くれ」
「えっ、人数分しかないよ?」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
「ははは、残念だったね俊哉君。まぁ、能力使うななんてルールは言われてないし、俺達は知らないから仕方ないよな」
クルトが笑う。俊哉もやってやろうと意地の悪い笑みを浮かべた。
こんにちは、上月です(*'▽')
ルールなんて言われてない。その言葉から両陣営が何でもありに発展していきます。
次回の投稿はまだ未定ですが、よろしくお願いします