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花火の誘い

 究極の入道雲とは、どんなものだろうか。


 自室の窓から大空を気持ちよさそうに、少しずつ形を変えながらゆっくりと流れる入道雲を見て、俊哉が以前言っていた究極の入道雲についてぼんやりと思考していた。


「とっても大きい雲のことかな」


 蝉のけたたましい鳴き声。陽炎で揺らぐ街並み。リビングから聞こえるテレビの音。


 それらすべてが、変哲もない日常を証明してくれている。


 日常に在りつつ、日常から外れてしまった夏休み。


 蛍はベッドから身を起こし、ぐうたら過ごすコトへの勿体なさを感じて、枕元に置いてある携帯を開けば、メールが一件と通話着信が一件入っていた。


「メールが俊哉で、電話が悠理。なんだろう?」


 メールの方は大した要件ではなかったので、悠理に折り返しの電話を掛けると、ワンコール終わる前に女性の声が聞こえる。あまりの速さに携帯を弄っていたのだろうか。


「蛍君、こんにちは。さっき、連絡した時って寝てたのかな?」

「サイレントマナーだった」

「どうりで、電話に出ないわけだ。お姉さん、悲しいなぁ。っと、そうだ、蛍君、今夜って空いてたりする?」

「うん、空いてるよ。どうして?」

「これから、皆の予定も聞いてみるんだけど、せっかくの夏休みだし、花火でもしたいなぁって」


 悠理の案に蛍は頷く。


 確かに、夏と言えば海や花火だ。


 海は以前、ビーチバレーをしにいったが、花火はまだしていなかった。と思い至る。


「僕は賛成。じゃあ、僕は俊哉と雪斗に聞いてみる」

「じゃあ、私は睦月ちゃんと怜央ちゃんに。じゃあ、また連絡するねぇ」


 通話は切れた。


「……花火」


 まずは、俊哉と雪斗に連絡をすべく、アドレス帳から二人に向けて一斉送信。


「花火買いにいかなきゃ」


 究極の入道雲についてなど、すでに頭の片隅にもなく、花火を入手すべく財布をポケットに押し込む。いざ、コンビニへ。


 コンビニは自宅マンションの目の前の大きな自然公園を抜けた先にある。夜間は以前あった殺人事件のせいで人一人姿をみせないが、昼間となれば子供たちが賑やかに走り回っていて、活気と真夏の熱気に満ちている。


 容赦なく照り付ける真夏の日差しを避ける様に、木々の影を散歩気分で歩いていると、最近見慣れた姿を目にする。


 彼女は、この時代この世界では浮いてしまうような白いローブ状の衣服をまとい、木陰のベンチから遠巻きに子供たちのはしゃぐ姿を楽しそうに観察していた。


「クルト、なにしてるの?」

「やぁ、蛍。奇遇だね。俺は少し休暇を満喫している所だよ。そういうキミこそ一人で何をしてるんだ?」

「今日の夜にみんなで花火をするから、花火を買いに行くところ」

「そうか、花火ね。この国では夏に風鈴や花火、スイカと風情を楽しむんだよな」

「年中風情を楽しんでるよ」

「いいことだね。この世界は平和だ。俺が見て回って来たどの世界よりもね」


 苦笑するその姿は、見た目をとても若く綺麗だが、ひどく年老いて見えた。が、言葉にはしなかった。クルトはこれまで、長い間、彼女――クリスティアを助けようと身をすり減らして戦ってきたのだ。その戦いがどのくらい過酷なものかは蛍には分からない。だが、クルトは疲れ切っている。


「クルトも、花火一緒にやる?」


 せめて、彼女に少しでもリフレッシュさせてあげれればと考えた末の一言。


「ははは、俺は敵だぞ?」

「敵でも、一緒にビーチバレーしたり、腕相撲したよね?」

「む、確かにそうだな。じゃあ、キミの仲間達から許可が下りたら、お言葉に甘えさせてもらうよ」


 蛍はさっそくポケットから携帯を取り出し、クルトの件を全員に一斉送信して、クルトの隣りに腰を下ろす。

こんばんは、上月です(*'▽')


最近、戦闘シーンが多かったので、日常パートです。


次回の投稿は未定です!

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