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納得のいかない勝利

 感覚時間のズレに加えて、脳からの電気信号の停止による行動の束縛。


 いくら彼女の魔力のうりょくと言えど、身体内部に作用されては獣の恩恵を受けた拳ではどうしようもない。


「……おいッ!?」


 この場を完全に支配したエーデルが突然、膝から崩れ落ち、地に伏せってしまい、ピクリとも動かない。


 エーデルの意識が途切れた事により、感覚異常の領域は消失し、雪斗の身体も自由が利くようになった。


「おい、エーデル! しっかり、しやがれ。まだ、戦いは終わってねぇ、こんな意味わかんねぇ、勝ち方で納得できっかよ!!」


 雪斗はエーデルの身体を抱き起こし、何度も呼びかけるが、まったく反応を示さない。


「チッ、息は……してるみてぇだが、いったい、どうなってやがる」


 遠巻きに観戦していた蛍達が駆けつける前に、宙から突如として現れたクルトが、エーデルの身体を触診し始めて、溜息を溢す。


「ああ、問題は無い。少し休ませればよくなるよ。まったく……あれほど、無理はするなと言い聞かせていたんだがな」

「おい、クルト。コイツは本当に大丈夫なんだろうな?」

「ん? ああ、今言ったように、問題ないよ。それより、初対面のキミがどうして、エーデルを心配するんだ?」

「んなの、勝負はまだ着いちゃいねぇからな。勝ち逃げされたとなっちゃ、俺のおさまりがつかねぇんだよ」


 雪斗の言った意味が理解できなかったのか、クルトは微妙な笑みを浮かべる。


「勝負は着いただろう? 戦闘中に意識を失って倒れたエーデルの敗北だ」

「いいや、俺の負けだな。コイツは俺を殺ろうと思えば、いつでも殺れたんだ。それなのに、勝手に倒れて、俺の勝ちってか? はっ、冗談じゃねぇよ」


 乱暴に吐き捨て、腕に抱えるエーデルに視線を落とす。


 彼女に向けられている瞳は、敵に向けるものではない。本気で心配しているかのような色が、ありありと浮かび上がっていたのを、クルトは見逃さなかった。


「まぁ、今回はキミの勝ちでいいんじゃないか? また次回、もし、エーデルがリベンジしたいと言った時にでも相手をしてやってくれよ。珍しく、コイツは楽しそうに見えたよ」

「仕方ねぇ、今回は勝ちを預かっておくか」

「ふふふ、素直だね。さて、残るは俺と、ヘルトの二人となったわけだが……おい、ヘルト。次の対戦相手に何か言っておくことはあるか?」


 クルトの閉じられた瞳は教会の入り口に向けられ、雪斗や蛍達が振り返ると、そこには和服を着こんだ老兵が静かに立ち、その視線は自分の相手となる、悠理へと向けられていた。


「言葉は必要ない。戦場で己の武をもって語るだけだ」

「そうねぇ、お姉さんも、そっちの方が燃えるかなぁ」


 隙などなく、言葉からは裏の無い。正々堂々と死合いを求める武人の覚悟が乗せられ、片や、全てを和ませてしまう、戦場には場違いな柔らかな声。


 双方とも、以前、海水浴場で激しいビーチバレーを繰り広げ、好敵手と認め合った仲だ。


 だが、今回行われるのはビーチバレーなんていう、遊戯ではない。


 紛れもない、命のやりとり、殺し合いなのだ。


 そんな、二人はそれ以上に言葉を持ち合わせることなく、ヘルトは機械仕掛けの協会を後にした。

こんばんは、上月です(*'▽')ノ


最近、夕陽が綺麗ですね。ええ、周囲に何もない職場から眺める夕日は、とても心和むものです。

さて、次回の投稿は……未定です(;´∀`)

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