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第二話 君の本音が聞きたくて 第三章 一石二鳥

 誓、由紀、結、環の4人で飛行機に乗ってアメリカへと向かう。

 誓の纏めた大きめの荷物は環が空間魔術で引き受けてくれたので、実質荷物は2人分と少なめである。

「お~、私の分もお願い!」

 結が瞳をキラキラさせて環に言うも──

「結お姉様の分はあっちに着いてからですね。今の所、距離殆ど無視できるのは私自身と誓くんくらいなので、元の場所が日本だと魔力足りませんから」

 申し訳なさそうに断られた。

 束の間の空の旅を満喫し、4人はアメリカに降り立つ。

「結ちゃんアライヴインズィアメリカー! 控えおろ~。んぅ~と、あれが噂の霊道? かなぁ?」

 大陸を駆け巡る術士専用の高速道、その霊道を見る元気な結。

「です。料金は税金で取られてるんで基本無料ですけど、事故ったりしたらきっちり請求されるので火遊びは程々にお願いしますよ。下手すると国中の術士を敵に回しますからね」

「だいじょぶだいじょぶ」

 誓の説明に気楽な返答をしつつ、結が先頭に立って霊道へと向かおうとする。

「待ってください結先輩。その前にまず携帯の国変くにへんとコインロッカーに荷物を預けるのが先です」

 現在の世界情勢下では、基本的に外国へ通じるのは政治家や軍の持つAやS設定の携帯電話のみ。

 その他は国内か、親しい隣国までがせいぜい。

 故に、携帯の国変は外国に入ったら一番最初にしておくべきことの1つになっている。

 仮にそのままにしていても、外国から元の国にはどの道通じないので意味がない。

 防御や施錠魔術など、術の施しOKなコインロッカーにかさばる荷物を入れ、係員立会いの下、環が魔術を設置する。

 危険な魔術でないか確認するための魔術判定は問題なくクリア。

 身軽になった誓たちは、空港内にある携帯ショップに入って国変を行う。

「え~、数字下がるのぉお!?」

 我先にと乗り込んだ結が、オーマイガッとリアクションを取る。

「申し訳ありません。G種ですと、あくまでアメリカ本国での活動が基準となりますので。片倉結様の場合、登録されてある中で一番高いGシックスを鑑みてもGスリーとなってしまいます」

「そんな~」

 あんまりだーと泣く泣く国変に応じる結。

 炎導家所属となり、魔王討伐貢献もあってG5からG6に上がった矢先にこの仕打ち。

 短い我が世の春にお別れを告げながら、結が帰って来る。

 同じく、先日G2からG3に上げたばかりの環は初期のG1となり、結と慰め合った。

 由紀もG4から初期のG1へ。

 最後に誓も元がG8だからG5かなと思いながら、携帯を差し出して確認を待つ。

「遠藤誓様ですね。確認致しますので少々お待ちください」

「お願いします」

「……!? 確認終わりました。炎導誓様、登録されてある日本ではG8ですが、我が国ではGA3が認められております」

「GA3?」

 聞きなれない言葉に誓は首を傾げる。

「はい。G9の権限を持ち、同時にA3の範囲でのアクセスも可能となります」

「それは凄いです、ね?」

「ええ、凄いです。滅多にあることではありません。……こちらをどうぞ」

 変更の処理が終わった携帯を渡される。

「あ、どうも。ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ。我が国を救って頂きありがとうございました。小さな英雄よリトルヒーロー

 合点のいった誓は、店員に差し出された手をしっかりと握り、一度上下に振ってから席を立ち、みんなと店を出る。

 その際、マニュアルなのだろうが店員全員が深く礼をしていたのが印象的だった。

「にゃー、なんか凄かったね~。最後誓だけ特別扱いだったし」

「流石誓くんね」

「いや、拓真もあそこで国変したら同じことになると思うよ」

 早速、フィリエーナに電話してやはり繋がらないのを確認しつつ、誓はこれなら拓真もこっちで登録した方がいいなと思考する。

「誓様たちは昔この地で、一日に魔王33体討伐を成し遂げていらっしゃいますからね」

「流石私の誓くんね」

「ええ、流石私たちの誓様です」

 環の主張と由紀の度量が笑顔の裏で牽制し合う中、改めて結を先頭に霊道へと向かう誓たち。

「外国の術士だね。説明は?」

 霊道へ入る前のドデカイゲートらしき場所で、係員に確認を取られる。

「俺は利用したことありますけど、彼女たちは初めてなんでお願いします」

「オーケー。この道は霊力を通わせた特殊合金で作られている。ここのように各所に点在するゲートには係員がいるけど、基本的には別に何処で乗り降りしても構わない。ただ、耐久面では霊力密度40換算で霊力値約2万で傷がつく。妖力の場合も同じだ。だからそれ以上の負荷を与えないように」

「2万? 随分低いのね」

 自分たちの年齢ならまだしも、全年齢で考えた場合少し低過ぎるのではと思える値に、環が疑問を呈するが──

「道そのものは、ね」

「ああ、なるほどね」

 係員のその言葉だけで即座に理解を見せる。

「道幅から出ない範囲、つまり空中でなら、他の利用客に迷惑を掛けないこと。道への余波で耐久超え。この二点さえ気をつけてくれたら他に制限はない。スピードも出し放題さ。あと、大丈夫だとは思うけど設計上魔力は度外視されているからね、精霊術と妖精術以外は使用しないように。最後に、係員が何組かパトロールしてるから、何か問題があれば待機かこれらの番号に連絡してくれ。以上、グッラック」

 各ゲートに通じる電話番号の載った紙を渡され、ゲートの通過を見送られる。

「さてと、私は補助型になれるし誓くんや結お姉様はいいけど。由紀はどうするの?」

 精霊術と妖精術以外は使用しないように言われた手前、陰陽術を使う訳にはいかない。

「ああ、それについては大丈夫」

 誓が視線を送って促すと、由紀が木の妖精術で絨毯ばりに大きな蓮の花を作る。

 それを上昇気流を操って浮かせ、宙を漂わせる誓。

「おお~」

 幼子が新しい玩具を貰った時のようにキラキラと、結が瞳を強く輝かせた。

「これなら俺たち全員乗っても2人も担当すればいける。耐燃性の高い樹脂と由紀の妖力で覆われているから多少の無茶も利くし。休憩ありの操作で全員移動出来るだろ」

「誓、誓。私にもやらせて。お~、にゃはははは、こんな感じかぁ。確かに人型を飛ばすよりらっくちーん。面白~い」

 わひゃーと、ブンブン飛ばして遊ぶ結。

「いやだからって火の玉にして遊ばないで下さい」

「にゃははゴメンゴメン。上側はどうなってるのか気になっちゃって」

 最初は結と環がペアとなって動かすことに決まった蓮の上側に、誓が手を引く形で全員乗り込む。

「行っくよぉ皆ぁ、出発しゅっぱあつ!」

 結の元気一杯な掛け声と共に意気揚々と向かったまでは良かったが──

「現在フィリエーナお嬢様への来客はお断りさせて頂いております。言伝でしたら私共が後程・・お伝え致しますが?」

 結が再三フィリエーナ本人に会いたい、今すぐ伝えて返事貰えないのと食い下がるも、返答は変わらず。

 あっさりと門前払いをくらった。

「いえ、後程・・また来ます」

 相手の慇懃でありながらまるで取り付く島もない様子に、何を言っても上手く伝わらないだろうと判断した誓は余計な情報を与える前に引くことに決める。

 これで嫌な予感的中確定かと思い、踵を返した。


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