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第六章 炎導の─── 拾壱

 結果──

「わりぃ、親、父……」

 倒れたのは4人。エミニガの攻撃を受けたユーディットやガレスティたちと、エミニガの防衛に務めた老魔王。

(今、僅かに……)

 エミニガが残る『神器じんき 千槍鉄槌せんそうてっつい』を炎でどかし、防御魔術への攻撃を感じながら、視えない魔術へ僅かながら干渉した誓を見遣る。

 そこへ上から到着したのは、ララと戦っていた結たち5人。

「誓おっまたせー」

「思いがけず一気に魔帝戦ね、誓くん」

「結先輩、マキちゃん」

 その間に、本業ではないにせよ回復もこなせるセリフィーヌも動いていた。

(彼の炎で辛うじて即死は免れてる。今ならまだ!)

「爺、よくやってくれました。下がっていなさい」

「御意」

 蘇った老魔王は、しかし現状では──短い間隔で高火力爆発が咲き乱れる状態では──戦力外と戦線離脱を命じられる。 

 やはり消費がない訳ではないと思考し、止めに動こうとする誓たちだったが──

「させると思って?」

 エミニガの氷炎魔術と視えない魔術が壁となり、続く動きを封じられた。

「聞いてはいたけど、何だよあの攻撃。全然感知できないとか。それにあいつの周りも何か変だ。どうよリコ」

「……ダメ。鉄君は?」

 猛が特異能力で未来視を可能にする緒莉子に尋ね、それでも視えなかったと同じく特異能力で魔術の効力や効果を知ることが出来る鉄に希望を託す。

「……虚光術。碧き光夜作の時間系及び矛盾系に属する攻性魔術で、光速を超える理論上の粒子タキオンを軸として物理的にタイムスリップさせる魔術」

「「?!」」

「その効果は、対象の過去を攻撃して現在の対象にダメージを負わせているという事象を作り出す。対処方法は攻撃を過去の防御が常に上回るようにするか、理論上の粒子であるタキオン生成魔術そのものを無効化すること。一度放たれた魔術はその後、主に物理法則によって対象にダメージを与えるため、魔術無効化では僅かしか防げない。反射は可能だが、何かしら過去に干渉する働きがなければ反射が起きた時点で消されていた矛盾が生じ、術は消え去る」

「過去への攻撃? まさか──って、嘘、本当に傷ついてる」

 フィリエーナ側のリンクメンバーが虚光術で次々と倒される中、緒莉子は3秒過去を視れるがためにそのあり得ない光景をの当たりにする。

「防御は不死系概念魔術。創り出した距離が死なないようにすることで、自身との距離が縮まらずいつまでも攻撃が届かないという結果をもたらす」

 それらを聞いた律楼の顔に、乾いた笑いが張り付いた。

「やって来る攻撃魔術を無効化するならともかく、こっちの攻撃届かない魔帝が魔術放つ前に無効化しろって? しかも向こうは反撃気にせず撃ち放題。それなんて無理ゲー……そういや魔帝相手のリアル無理ゲーだったな。マジかよ魔帝半端ねーにも程があるだろ」

「有効手はなるべく常に防御を張り巡らせることですね。防御値の低いメンバーはなるべく動き回って、魔帝が過去への目測を外すのを期待するしかなさそうです。照準補正機能がなければの話ですが」

「加賀里たちじゃ鉄以外狙われた時点でアウトっぽいなー」

「……全員危険。例外は攻撃がある程度分散した時のみ」

 鉄がセリフィーヌの防御の上から傷つく術士たちを見て、力不足を告げた。

「そうですね。私も過去が見えたとしても、もう過去の自分は動かせませんし。そもそも光速を超えるスピードじゃどの道無理です」

 最大で3秒、未来と過去を視れる緒莉子だが、攻撃が過去の自分に対して働くものでは手の打ちようがない。

「「……」」

 沈黙が降りる。

「絶望しかありませんが、とにかく遠藤くんたちに伝えましょう」

『その必要はありません』

 風が言葉を運ぶ。

「クローネさん」

『既に先の話は皆さんに・・・・聞いて頂きました』

 クローネの言葉に続くように、誓の炎の熱がフィールドを満たし、風に係わらず魔帝視点で揺らめく陽炎となる。

「残念ですが、その程度で私の術は防げませんよ。それにしても、少々厄介な能力者がいるようですね?」

 追加で炎の守りを張る誓。

 しかし、エミニガは虚光術による後出しの利を存分に揮う。

 過去の誓が過去のエミニガの虚光術に合わせて守りを上げようと、現在のエミニガはそれに勝る適切な威力を放つだけでよい。

 無論、ブースト状態にある誓の防御力は半端ではない──

 ──が、視えない攻撃ゆえに面や球で受ける必要のある誓に対し、それを穿つエミニガの虚光術は線──つまりは点である。

 収束される力の不利は否めない。

 放たれる虚光術が、それを証明するかの如くリートリエルや猛たちに不可避の牙を突き立てる。

「ゴフ、ハッ……肉壁にも、ならねーとか、ウケ──」

「ごめ、遠藤く……」

「加賀里たちのことは、気に、するな。勝てよ、炎……導」

「ッ!!」

「母様! 回復は」

「ダメ、傷が殆ど治らない。これは──」

「不死系、概念魔術。生まれた傷が死なないようにすることで、治らない傷をつくる……。効力は高いが、絶対ではな──ぃ」

 ドサリと、立ち位置上は3人に守られる形で最後まで立っていた鉄の巨体も地に沈んだ。

 誓に美姫やクローネによって味方の被害が軽減された上でこれである。

 最早この場に立っている味方陣営は──

 壱、万能型。日本は火の第三位、炎導誓。

 弐、遊撃型。同じく金の第七位、金城拓真。

 参、道化型。同じく火の第八位、片倉結。

 肆、基地型。土の妖精術士、藤原美姫。

 伍、特異型。魔術士にして火の精霊術士、愛埜環。

 陸、幻影型。風の精霊術士にして水の妖精術士、セラフィルデ=スルーザブライドル。

 漆、御子型。アメリカは風の第十位、クローネ=バラドホルン。

 捌、特異型。風の精霊術士、風間見鶏。

 玖、攻撃型。火の精霊術士にして金の妖精術士、フィリエーナ=リートリエル。

 拾、防御型。ランカー歴を持つ火の精霊術士、セリフィーヌ=リートリエル。

 そして──


「繋げ。護湖 聖楯」

 拾壱、特異型。陰陽師にして木の妖精術士、児玉由紀。

 魔帝ぜつぼうを相手にした最終幕が、上がろうとしていた。


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