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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第8章 南の国境街へ向けて
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再び買い物へ

急いで書き上げたのでちょっと短いですが、

拙作を読んでいただけたら幸いです。

 昨日夜更かししたせいで、今日は全員少し遅い起床になってしまった。結局昨日は姫様とトニアさん以外は宿の部屋でベッドを繋げて寝て、起きた時にはいつもどおりピーリィが乗っかっていた。



「おはようございます」


「おはよう、沙里ちゃん。他の人はもう起きてるの?」


 周りを見ると、すでに俺とピーリィ以外はいなかった。


「ユウさんとベラさんはニアさんに連れられて訓練に、美李は畑を見た後訓練に参加するって言ってました」


「あー、じゃあ俺とピーリィが最後だったのか。ピーリィ、朝だよ」


 まだぼーっとしてるピーリィの身支度を沙里ちゃんにお願いして、俺も居住袋に入って和室で着替えてから身支度をした。

 今日は起きたのが遅すぎて宿の朝食は終わってしまった。だから、買い込んだ荷物整理と仕込みと一緒に朝食も作ってみた。


 いや、訓練後にシャワーで汗を流したメンバーが集まった頃には12時前だったから、これはすでに昼食だわ。少しおかずを増やそう。




 ベーコンエッグとパン、そこにシーチキン入りのポテトサラダとコーンポタージュを用意した。ベーコンと魚の油漬けであるシーチキンは沙里ちゃんが頑張って作ってくれた。

 火魔法と木片チップを使って燻製を作るとか万能すぎるわほんと。一応俺も袋を提供して煙と熱が逃げない箱を作ったけどね。



「さあ、遅くなっちゃったけど今日こそ生鮮市場行こう!明日は鍛冶屋行って出発予定だから、チャンスは今日か明日の朝しかないんだよね」


「ヒバリお兄ちゃん、あとででいいからあたしの畑に来てもらっていい?」


「ん?何か作るの?」


「んー、前に作った味噌と醤油がそろそろいい感じだから見て欲しいの。でも、醤油がなんか違う気がするの」


 そういや仕込んでたの忘れてたな……


「分かった。じゃあこの後移動中に見に行くよ。ニアさん、すみませんが、」


「御者はお任せ下さい」


 全部言い終わる前に了承してくれた。




「えーっと、どんな感じになったのかな?」


「んーっと、こんな感じになりました!」


 馬車を走らせている間、さっそく美李ちゃんの畑部屋に来ていた。すっかり忘れてたけど、味噌と醤油って普通はそんな早く出来ないから忘れちゃっててもしょうがないよね!



 よいしょという声とともに目の前に置かれた複数の樽型の袋。まずは味噌から開けてみると、麦の残る田舎味噌特有の美味そうな匂いが広がった。


「これは……いいね!味はどうかな?」


 攪拌するために持って来た木ヘラで味噌を掬い、

少しだけ手に乗せて食べてみる。


「味もいいねぇ。これなら買う味噌より美味しいや」


 興味があったのかついて来たユウとピーリィの手に味噌を少し乗せてあげた。


「確かに、この世界に来て一番味噌っぽい味噌だと思う!」


「きゅあー!」


 ピーリィは一気に食べちゃってしょっぱいしょっぱいとじたばたしてたので、美李ちゃんが慌てて水を魔法で出して飲ませてあげていた。



「さて、問題の醤油か」


 味噌よりかなり緩い状態の醤油。正確には絞る前だが。


「んー……ちょっと塩水足りなかったかもだけど、まだ絞ってないから何とも言えないかなぁ」


「え?醤油ってこれで出来たんじゃないの!?」


「まだだよ。ここからゆっくり絞って、さらに休ませてから余分なものを取り除いて完成なんだよ。と言っても、醤油は俺もTVで見た程度だから曖昧なんだよなぁ。やり方は間違ってないはず」


「醤油って大変だねぇ」



 沙里ちゃんに醤油を絞るための漉し布を借りて、畑の端にあった石と大きい桶を洗って、全部消毒魔法をかけてもらう。

 あとは布に醤油の元を入れて、新たに作った樽袋の中に逆さにした桶を置いて、その上に醤油の元入り袋と重石を置いてから閉じた。


「これでゆっくり醤油を絞って、上澄みと底に沈んだのを避けて掬えばいけるはず。ちょっと今回はなんとも言えなそう感じ……まぁ次回はもっと塩水増やしてみよう!」


「はーい!」


「じゃあヒバリ、今日は味噌で何か作ってよ!」


「みそ、おいしくたべたい!」


 引率の先生になった気分だけど、ユウは確か沙里ちゃんより年上だったよね?思考回路が3人一緒じゃん……



 せっかくだから味噌の樽袋を1つ運び出し、試しに大根の味噌汁とねぎ味噌の焼きおにぎりを作ってみる。さっき朝ご飯食べたばかりだからちょっとだけ。


 の、つもりだったけど、試したら皆も食べたいと騒いだので、軽食にしては量が多めになっちゃった。これは市場行っても屋台で食べる事はなさそうだなぁ。



「焼きオニギリ、美味しいですね」


「この少し焦がした所が香ばしくてすばらしいです」


 せっかくなので居住袋の外にいた姫様とトニアさんにも持って行った。さすがに揺れる馬車では焼きおにぎりだけだが、それでもかなり気に入ってもらえたみたいだ。




 なんとか昼前には生鮮市場に到着し、さっそく食材を買い漁る。いくつかの店は売り切れになっていたが、それでも葉物野菜に魚介、ハーブに茶葉と昨日に引き続き仕入れまくった。


 いやこれほんとに商人って言って問題ないくらい買い込んでるよね?でもいつ孤立するかわからないし、備えておいて損はないはずだ!ほら、場所取らないし腐らないし!


「この辺りは茶葉が名産ですので、良い品が手に入りましたね」


「へぇ〜。茶畑でもあるんですか?」


 姫様が嬉しそうにスーパーの袋ほどの大きさの麻袋を抱えていた。

それが話しにあった茶葉で、自分で運びたかったそうだ。


「畑と言えば畑、なのでしょうか……」


 ちょうどこの先の越境手前の山の麓に、茶の木が自生してるらしい。そこへ冒険者ギルドからの採取依頼として冒険者が摘みに行き、その採り方の良し悪しで褒賞金が変動する特殊な依頼がある。

 以前街で栽培を試みたが、かなり品質が劣化したらしく、それからは冒険者達に任せることになったそうだ。街の外は魔物もいるので、そこは冒険者専門依頼にするしかないのだろう。


「茶の木は群生しているので、一見畑のように見えるかも知れませんね」


「それならうちには専門職がいるので、是非採取したいですねぇ」


 畑に関してはスキルというチートな能力でなんとかしてしまう美李ちゃんにお願いするしかないな!せっかくだし緑茶が飲みたい!

 確か茶の木って皆同じ種類で、育った環境や製法で紅茶や中国茶や日本茶のように変わるって聞いたことあるし。

 ただ……さすがに茶葉の製造方法は知らないから手探りになるんだろうなぁ。乾燥は沙里ちゃんがいるから楽なのは間違いない。


「サリスさん、是非茶の木を採って来ましょう!」


「……あっ。はい、是非に!」


 よし、これで1つ楽しみが出来たぞ!


「それでしたら、先ほどの店で紅茶の製造方法を教えて頂いたらどうでしょう?」


「あ、それいいですね!ちょっと交渉してきます」



 店主にお願いしたらお茶の製造工房の見学を取り付けてくれた。さすがにあれだけ購入したら二つ返事で了承してくれたから、ついでに茶葉を使ったお菓子を食べた事があると話してみた。

 店主さんが新しい商売の匂いにテンションが上がってしまったので、俺達はそそくさと茶葉の工房へと移動した。


 同じ商業区でも少し外れにあったため20分ほど馬車を走らせて着いた工房にはすでに話が通っていたため、子供も多い俺達を見ても丁寧に案内してくれた。

 おかげでかなり分かり易く、そしてここの工房がしっかりとした生産体制を築けている事に納得した。


「ありがとうございました。ここのお茶が美味しい理由がよく分かりました」


「いえいえ。なんでも菓子に茶葉を使うお話も頂いたそうで、私共も大変有意義な時間を過ごさせて頂きました」



 俺達を案内してくれたのは工房主の男性で、終始落ち着いた雰囲気を纏ったまま対応してくれた。自身も普段から作業に加わっているらしく、商品に携わっていないと落ち着かない根っからの職人だと従業員に言われて照れ笑いをしていたのが印象的だった。



 工房を後にした俺達は、一度遅い昼ご飯をと思ったが、さすがに朝が遅かった上に途中で焼きおにぎりを食べてたので皆パスでいいと言っていた。


「じゃあ少し早いけど宿に戻りますか?」


「早いといっても午後4時前だしいいんじゃないですかね」


 沙里ちゃんが時計を出して確認する。

あ、そういや時計あったな。忘れてたわ。



「では、ユウさん達は朝出来なかった訓練をしましょう」


「そっか、今日は体動かしてなかったね!おっけ!」


「いえ、魔法の訓練ですので……」


 トニアさんの訓練という言葉に、ユウが拳を作って答える。

ユウは脳筋か。分かってたけど。



「あたしも!魔法の訓練!」


「ピィリもー!」


 少女コンビも訓練参加、っと。


「わたしは食材の整理、ですかね」


「ああ、手伝うよ」


「お手伝いは私が。ヒバリさんは字の訓練をお忘れですか?」


「……あ、はい」


 沙里ちゃんと姫様が食材整理、っと。



 俺は……字の訓練ですか。




 宿に戻った俺達は、さっそく各自やるべき事へと動いた。



 俺は、ダイニングキッチンで沙里ちゃんと姫様がせっせと動く横でせっせと字を書き続けている。まるで自宅で1人宿題をやらされてる感すごい!




 途中で飛び込んできたピーリィが、


「ルースがヒバリにおねがいあるって!」


 と、交換日記を見せに来たので、すぐにその用件に対応するために作業を開始した。



 決して書き取り練習に飽きたからではない。



 …………すみません、飽きました!




 ルースさんからの依頼は、昨日送った携帯をもう1つ欲しいとの事だった。理由は、ちょうどピーリィの母親のお墓にいるらしく、どうせならここに予備の携帯と共有鞄を置いて、何かあった際にはここに来れば誰かと連絡を取れる様にしたいそうだ。


 確かに、もしこの国に戻って来た時に誰かとはぐれたり携帯を無くしていた場合には、そこを頼りに行くのはアリか……

 それに、カモフラージュをかけて隠しておけば、俺達だけが見つける事が出来るからかなり安心だし。


「じゃあ、返事は俺も書くから後でまた交換日記届けてね?」 


「はーい!」


 隣に座ったピーリィがさっそく書き込み始め、俺も袋作成を開始した。と言っても、以前に作ってるやつだからさっくり作れちゃうんだがね。




 そして2時間後。


 晩ご飯と依頼品と俺も返事を書いた交換日記を共有鞄に入れて、俺達も晩ご飯になった。宿で4人前頼んで、残りは沙里ちゃんと俺が作ったマスの塩焼き・茄子の味噌汁・だし巻き卵・肉じゃがの和食攻め献立を食べた。



 茄子の味噌汁で皮を入れるか、肉じゃがは豚肉か牛肉かでユウと意見が分かれたが、こんな事で住んでいた地域の差が出るとは思わなかったなぁ。



 うん、そういうのも面白いな。




 さて。


 明日は鍛冶屋へ行ってから、すぐに準備を整えて出発だ!

今日みたいに寝坊しないように気をつけないとだな。




 時計に目覚まし機能あればよかったのにね。


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