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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第8章 南の国境街へ向けて
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変装とリフォーム

第8章の始まりです。


拙作を読んでいただけたら幸いです。

トルキスの町を出て数時間。


 初めは東門から出たが、ルースを見送った後にすぐ南へと進路を移した。このまま湖から町を横切り南へ流れるビネン川に沿って海まで出る道のりだ。

 一旦海まで出たら南東に向かい南の国境街を目指す。北の国境街からトルキスの町まで行くのと同じくらいで、休まず馬車を走らせれば1日半と言っていたから、距離にすると1000km以上あるのかもしれない。



 まぁそんな事をすれば馬が先に潰れちゃうからやらないけどね。



 そして海はまだ見えてこないが、今日は休憩含めて半日かけて海まで出て、近くにある村で1泊する予定だ。その1回目の休憩での昼ご飯でユウが聞いてきた。


「前から思ってたんだけどさ、ヒバリ達って髪染めてるの?ここで黒髪ってボクだけだし気になっちゃってさー」


 ハンバーグを箸で割ってご飯と一緒に食べながら言う。


「ユウ、食べる時は、食べる。話は、その後!」


 口に物を入れてしゃべるユウにベラが窘める。


「むー。分かったよー」


 うちの子達は食べる時はそっちに集中しすぎておしゃべりするなんて無かったから、確かに珍しい光景だったのかも。ベラとしてもしゃべらないで食べるのが当たり前みたいだし。



「で、どうなの?」


「ベラと同じ、獣人いるはず。でも見えない。なんで?」


 しっかりと食べ切り、俺が淹れた紅茶を飲んで一息ついてからさっきの続きを2人に促された。


「えーっと……俺が闇の適合者って騒がれたの覚えてるかな?」


 ユウの方を向いてから話し始めた。


「確か2人いたんだよね?ヒバリってその内の1人だったんだ」


「そう。で、その闇魔法でカモフラージュっていうのを使ってるんだ。これは全く別人にはなれないけど、違和感が無い程度だったら姿を誤魔化す事が出来る魔法なんだ。

 だから俺達日本人は髪の色を金色に、ニアさんやピーリィは獣人の特徴を誤魔化すように使ってあるんだよ」


 ちょっと手を出して、とユウとベラの手に指先で印を付与する。


「わっ!急に変わったよ!?それに、ほんとにお姫様だ!」


 驚くユウとピーリィの翼やトニアさんの頭上の耳をじーっと見つめるベラ。この2人、動と静ってくらい行動が真逆だなぁ。


「今のは俺の魔法の影響を受けないように印をつけたから本来の姿が見えるようになっただけだよ。印の無い人には今もカモフラージュで映した姿にしか見えてないから。

 でもピーリィみたいな翼は触ると分かっちゃうんだ。だからユウ達と会ってから今まで触らせないようにそっと気をつけてたんだよ」


 先ほど触れた場所をまじまじと見つめてるが、別に刺青みたいに刻み付けたわけじゃないから見えるわけないんだけどね。


「じゃあボクも髪の色変えたい!ベラはどうする?耳が見えなければ変な奴にも絡まれないと思うよ?」


「ベラは……この魔法、あとで、ちゃんとなくせるのか?」


「うん。俺じゃなきゃ出来ないけど、いつでも消せるよ」


 少し考えたベラは、こちらを見て頷いた。どうやらそれが返事のようだ。


「えーっと、希望があるなら聞くけど?」


「髪!ベラと同じ赤がいい!」


 ベラに抱きついて元気よく言うユウと、


「耳と尻尾。これ、隠せれば、だいじょうぶ」


 やっぱり静かに話すベラ。



 うん。なんとなくこの2人のことが分かってきたね!




 希望通りの容姿に見えるようにカモフラージュをかけて、一旦印を解除してお互いの姿を確認してもらう。その後は俺のスキルをざっくりと説明して、使用権限をつける相手の魔力の質を知らないと付けられない事、それはさっきのカモフラージュの印を付けた時にもう大丈夫な事も伝える。

 今の状態では居住袋どころか食材用も別袋で作った扉も開閉出来ないが、近いうちに全部作り変えると言っておいた。でもさすがにトイレ用の居住袋と排泄入れの黒袋だけはこの後すぐに作り変えた。生理現象問題は真っ先に対処しないとまずいでしょ。


「トイレや風呂の使い方はもう分かったと思うけど、荷物入れる鞄だけでも先に容量増やしておく?鞄の中身出して渡してくれればすぐに出来るよ?」


「へー。そんなこともできるんだ!ヒバリってすごいねぇ」


「ただの便利屋さんだよ。その分戦闘能力がないんだから」


 中が別空間になった鞄の中に物を入れては手を入れて出したり仕舞ったりとベラが無言で繰り返す。耳がぴーんと立ってるあたり、どうやら楽しんではいるみたいだ。




 休憩を終えて再度馬車が走り出す。今回はトニアさんに御者を交代してもらって、俺は居住袋の中で色々作成だ。沙里ちゃんは家事や仕込みを、美李ちゃんとピーリィは畑仕事をしている。

 今朝は早くからルースさんを見送って、そのまま俺達も出発したから今の時間に日課の作業を済ませるわけだ。

 今は居住袋の扉はいつでも声が届くよう閉めていないが、馬車にはトニアさんと姫様が残った。2人はいつもどおり袋製クッションを使っている。皆には個人用として模様違いを作ったんだけど、それぞれ気に入ってくれたらしい。


 そしてユウとベラには先にローブを作ってあげると言って、沙里ちゃんとトニアさんが2人の体格に近いから同じサイズで作ってみた。それと急ぎの女性用トイレもだ。


「はい。これがローブね。耐久値を超える攻撃を受けたとしても最低1回は防げるから、いざとなったら盾代わりに使うといいよ。まぁ、この袋を解除するような魔法があれば怖いけどね。

 後の装備は寸法測ったりしないとだからちょっと後回しね。トイレはこの個室の袋を設置して、中のトイレを移動させて、後はトイレ用黒袋も新しいのと交換してくてくれるかな?俺がやるのはさすがにまずいからさ。沙里ちゃん、ちょっと手伝いお願い!」


 ローブを着てみた2人が動きを確認してて今の話を聞いてなかった。仕方ないからもう一度ちゃんと説明して黒袋を持たせて、沙里ちゃんと一緒に設置させる。持って帰ってきた袋はその場で全て解除して消しておいた。さっきと違って自分達でも開閉出来る感触が楽しいのか、何度も繰り返して遊ぶ。いやそれトイレ用だからさ……



「あーもー、遊びたいならいくつか袋あげるよ!これに空気入れればクッションになるから試しててね?」


 おもちゃをもらった子供みたいにソファに座って何度も袋をいじって遊ぶ2人。なんだ、対称的な2人だと思ってたけどそっくりじゃん!


「あの2人もああしてると姉妹みたいですね」


 横で仕込みをしていた沙里ちゃんがくすくすと笑いながら話しかけてきた。まるで美李ちゃんとピーリィみたいだと言ったらもっと笑っていた。そして、トレイ用の黒袋は沙里ちゃんが片付けてくれた。ユウ達の方が年上なのに逆にしか見えないなぁ。




「さて、やっちゃうか!」


 集中したいからしばらく1人で作業させて欲しいと言って和室に篭った。これから新たな居住袋を作るためだ。


 今回はルースさんとユウとベラの3人にも権限を付けたものにする。更に作り方を変えて、玄関〜ダイニングキッチン〜廊下をベースに作って、そこに部屋ごとの居住袋を付けてみる予定だ。

 これならいつ部屋の模様替えをするにしても、ベースさえあれば部屋1つの作り直しで済む。作成の消費魔力もかなり抑えられる分強度を増すのもいいかもしれない。



「まずはベースになる部分か。今回はもう少し全体を広くしよう」


 玄関となる縦長のチャックのような形を作る。開く時は馬車が通るくらいは広げられるのをイメージする。そこから馬屋以上の長さの通路を経て、ダイニングキッチンを形成させる。今回は8人いるわけだから、その分今より広くイメージ。その先の廊下は2人が余裕ですれ違える広さは変えなくても大丈夫かな?ただ、以前より長めにイメージする。


「よし。後はこのつくりを固定して、権限と模様、カモフラージュ、それと、外の様子が見える窓……ここは、外からは居住袋の中が見えないようにマジックミラーみたいな感じで……後は、えっと、外の景色と同期させるとなると……レーダーマップを皆にも見せた印みたいに窓に……これで、どうだ!?」


 強化分も含めて魔力を多めに注ぎ、イメージを具現化して固定する。そして目の前には2mを超える縦長の袋が出来上がる。そして、ごっそりと魔力を消費した影響で一瞬ふらつき膝をつく。


「ふぅ……よし、これでいいはず」


 試しに壁に立てかけてから居住袋を開けてみる。


 作り自体は今のと変わらないが、明らかに一回り大きくなっていた。これなら8人が動いても大丈夫かな?奥の廊下も5〜6mだったのが10mくらいになっていた。よしよし。


「じゃあ次は、和室を1部屋と女性部屋は……一応2部屋作ってみるか。それとピーリィの訓練部屋をもっと広く高くしてっと。馬屋はあのままでいいとして、最後に風呂を考えるか。あ、だめだ。馬屋も作り直さないとユウとベラが開けられないじゃん!」


 ボケ突っ込みコントのような独り言を呟きつつ、順番に作っていく。馬屋とトイレは同じ物を作るだけだからさっさと終わらせた。もちろん馬屋にも窓もどきを追加してみた。太陽光って大事だよね!

 女性部屋も和室っぽいのと洋室で2つ、本来男性部屋のつもりで作った和室もちょっと広めに作り直す。


 いや、別に皆と寝たいからっていうか、もし来たら狭いよりは事故少なく済むようにした方がいいじゃん?今の部屋で8人って定員オーバーだったし。


 ……って、誰に言い訳してるんだか。


 

 後はピーリィの訓練場は全体を窓というかビニールハウスをイメージして、広さにしたら4倍くらいにしてみた。今回で1番魔力を使ったのがこれだった。


「ぜ、全体を透過させるって、きっつぅ〜〜〜!まだ風呂場が残ってるけど休憩しないと無理だぁ!」


 バタッとその場に倒れて呼吸と眩暈が落ち着くのを待つ。

さすがに一気にやりすぎた反動が!




「……さん、ヒバリさん、大丈夫ですか!?」


 なんか、体が揺れるー?


「どうしたんですか!?……えっと、寝ちゃっただけですか?」


 あー、なんだっけ?俺どうして……いや、今何時だ?


「沙里ちゃん?えーっと、今何時?」


「あぁよかった……寝てただけなんですね?今は夕方前ですよ。2時間くらい反応がないから部屋に入ってみたら、倒れたような形で寝てたんですよ。心配しちゃったじゃないですか!」


 ああそっか。俺、居住袋作ってたんだっけ。あー……思い出した。

魔力使いすぎて倒れたんだこれ!やっべ。これは黙っておこう。


「居住袋作ったら安心して寝ちゃったんだ。ごめんね?

……って、そういやまだ風呂場出来てないんだった!」


 がばっと起き上がって散らばった袋たちを見る。

よし、他のはちゃんと作ってから倒れたんだな。あとちょっとだ!


「無理して倒れたんじゃないんですよね?」


「大丈夫。それにあと1つだけだから!」


 じーっと見てくる沙里ちゃん。これ、見つめてるんじゃなくて、あれだ、じと目ってやつだ!ここは笑って誤魔化しておこう。


「さーて、さくっと風呂場作って終わりにしようかな〜。この間のでちょっとアイディア浮かんだんだよね」


「もう!もしそれを作ってふらついたら……分かってますよねぇ?」


「だ、大丈夫だってば!これだけだから!」



 一旦目を瞑って意識を集中する。


 雰囲気が変わったからか、沙里ちゃんも静かになった。



 イメージするのは、男爵邸で作った落とし穴。あれって浅ければ湯船にもなるよね!それと、和室を作った時の床の段差。あれも利用して……


「これで……どう、かなぁ?あはは〜」


 膝立ちでやってたが、やっぱり力が抜けて体勢が崩れた。


「やっぱり無理してたんじゃないですかー!」


 沙里ちゃんはいつでも支える準備をしてたのか、気付いたら真横にいてすぐに抱きかかえて倒れないようにしてくれた。


(うわぁ!女の子のいい匂いと柔らかさが〜〜〜でも動けん〜〜〜)


「このまましばらく休んでください!だからあれほど無理しちゃダメって言ったのに!」


 沙里ちゃんは俺を抱きかかえたまま態勢をずらして、膝枕にした所で俺の頭を固定した。そして額をぺちぺち叩いて叱ってくる。


(あー、ダメだ。動きたくないけど動かなきゃいけないけど、もう意識が……)




 こうしてヒバリは本日二度目の失神をした。



 2度目はいい思いをしながらなので、気持ちよく落ちた……らしい。

正直よく覚えてない。もったいねーーー!



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