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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第7章 ビネンの湖と人攫い
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救出と解放

少し短めですが、読んで頂けたら幸いです。

 他の建物より明らかに頑丈な作りになっているその建物の扉を叩く。


「おーい!新しい女はこっちに連れて来いって言われたんだが、誰かいるかー?」


 ゴンゴンとあまり強くは叩いていないが、鉄製の扉は重い音をたてた。


「……今日はもう終わりだ。後でにしろ」


「ちょっと待ってくださいよ!俺、今日金貰えないとやばいんですって!」


「うるせーな。何人だ?」


「えーっと……」


 振り返って数える。それを扉の覗き見窓から見られている。


「5人っすね。上玉でしょう?」


「……よし」


 中で他の男に声を掛けて何か準備している。

少ししてガゴンと杭を外すような音がして、扉が開いた。


「その縄を寄越せ」


 中の男にも見えるようにペコペコと頭を下げて、手前の男に縄を差し出す。


が、


「……ぐぁ?」


 受け取ろうとして出て来た男をブラックアウトで意識を刈り取ってからそのまま横からタックルを仕掛けて地面に叩きつけた。


 ヒュッと背中に風を感じて振り返れば、沙里ちゃんを中心に風の防御壁を展開し終わっていた。そして守られている中にトニアさんとピーリィの姿は無い。


 すでに建物の中に飛び込んでいたからだ。


 慌てて俺も建物の中に進む沙里ちゃん達に続くと、

1人はすでにトニアさんによって踏み潰されていた。残り1人は……


「ちくしょう!こんな時に!」



 ああ、そういうことか。鑑定したら分かった。


「そいつ、魔力が尽きかけてますよ」


 元から少ないんじゃなくて使用後だったのか。ならさくっと意識刈り取って終わらせよう!


「ぐぁ!」


 って準備してる間に、天井で待機してたピーリィがケロ口さんの枠で男の頭を叩いてしまっていた。

……命に別状はないからいっか。


「へへー!」


 どうだ!と言わんばかりの得意顔のピーリィに苦笑しながらも頭を撫でておいた。

まさか捕まえるんじゃなくて叩くとは思わなかったけど。



「あとは……大丈夫そうですかね?」


 意識の無い男3人の武装を取り上げて、先程縛っていたフリをする時に使ったロープで縛り、また1人ずつ別の袋に放り込む。捕まっている女性達は隣の部屋にいるようで、男の1人が持っていた鍵で扉を開けて中に入る。

 


「ヒバリさんは待ってください!」


 トニアさんの次に入った沙里ちゃんが急に大きい声を出す。


「沙里ちゃん、大声はまずいって!で、中の人は無事だった?」


 ひょいっと部屋の中を覗き込む。沙里ちゃんが俺の前に立つけど、身長差で頭一つ上の俺には関係なかった。


「あ……」


 その次の瞬間バシッ!と顔を叩かれた。


正確には俺の顔を手で覆うつもりの沙里ちゃんの両手が勢いよすぎたから叩かれたようになってしまったわけで。


「えーっと、すみません。隣で大人しくしてます……」



 中に居た女性は全員裸だったのだ。


 ああ、逃げられないように、武器を隠し持てないようにするためね!

なるほどね!怯えていた女性とも目が合っちゃったからすごい罪悪感だ。


「ん……リさん…………ヒバリさん!」


「あ、はい?」


「どうしました?」


「いえ、なんでもありません。何かありました?」


 まさかさっきの光景が目に焼き付いちゃったとは言えない!

姫様に怪しまれつつも何とか落ち着く努力をした。でもきっとバレてる。


「12人のうち最近連れて来られた4人は隷属印はありませんでした。あの勇者様が自身の体で魔道具に抵抗し続けたおかげのようです。

 しかし、勇者様を除く7人がすでに印を付けられこの場から動けず、ルースさんが2人の印を破壊してくださったのですが……」


 言葉を切って隣の部屋の扉へ目線を送る。俺も釣られて振り向くと、美李ちゃんとピーリィに肩を借りたルースさんが連れて来られた。


「ヒバリ……あとを、任せてよいかの?」


「魔力の使いすぎですか。あの、引き継ぐのはいいんですが、女性達の服と男がそっちに行く説得は大丈夫ですか?あとやり方がわからないです」


「服は沙里が沢山持っておったので大丈夫じゃ。説得は勇者ユースケの仲間で先行部隊だと言ってある。やり方は……印に触れて闇の魔力を注げば勝手に壊れるから問題なかろう。おぬしの馬鹿げた魔力をちっと使うだけじゃよ」


 話しは終わったとばかりに椅子に腰掛けたルースさんは、俺が渡した水を飲み干し「ふう」と息を漏らしていた。




「時間もないし、やってみるか」


 隣の部屋へ顔を出すと、やっぱり怯えた目を向けられる。

全然説得できてないじゃん!ほんと、いいのかなぁ?


「こちらの男性が残りの隷属印を壊します。あなた達同様、ちゃんと解放され家に帰れます。安心してください」


 先に解放された女性達は、まだ隷属印をつけられ動けない女性達を囲むように一緒に座っていた。どうしようかな……


「1人ずつ行うので少し時間がかかります。その間食事をされてはどうでしょう?ちょっとこのテーブル借りますね」


 そう言っておにぎりとスープ、それと果物を並べておいた。その匂いに釣られてか、ここに突入する前にご飯を食べたはずのピーリィが真っ先に隣の部屋から飛びついて食べ始める。


「ピーリィのご飯じゃないんだけど……まぁいっか。あ、皆さんもどうぞ。今は体力を取り戻すためにも無理をしない程度に食べてください」


 くきゅうううぅ〜〜〜、と誰かのお腹の音が鳴った。


 そこは聞かなかったフリをしよう。他の人も食べるなら、ともう少し追加でご飯を出しておいた。あとはピーリィの要望でプリンを出した所で、遠巻きに見ていた女性達がご飯に手をつけてくれた。



「ヒバリさん、時間がありませんので解除を」


「あ、はい。えっと、隷属印に魔力を流して壊すイメージ、でしたね」


 トニアさんが1人目の女性の背中をこちらに向ける。


「えっ……背中にあるんですか?えと、服がその」


「これは仕方ありません。隷属印は抵抗されぬよう押さえつけて行うので、必然的に背中になるのです。そして、決して他は見ないよう気を付けて下さい。いいですね?」


「はい。で、では……いきます」


 20cmほどの刺青のような魔法陣に手を触れて、イメージする。



 ……柔らかい。


 いや、そうじゃなくて!


「印を壊す……注ぐ、イメージ……」


 コップに水を注ぐのをイメージしながら目を閉じる。


 やがて、コポコポと水が流れるような感覚がしてきた。さらに注ぐと、コップの方に限界がきてパキッとひびが入った音が聞こえた。


「あっ」


 コップの限界が見えた瞬間、隷属印が砂のように崩れる。それを感じたので、目を開けてみる。そこには刺青などない綺麗な背中があった。


「はい、ヒバリさんは後ろを向いてください」


 俺にも出来た!やった!などと喜ぶ暇も無く沙里ちゃんに首を掴まれて強制の回れ右である。それを繰り返す事4回。合計5人の隷属印を壊し、自我が回復した人から飲み物や、食べられるなら果物かおにぎりを口にしている。



「ねー、ボクにもご飯ちょーだい。こんないい匂いしてるのに食べられないの辛いよぉ」


 横に寝かされていた勇者が声を掛けてきた。といっても、姫様の回復魔法で外傷は無いが魔力欠乏は時間が解決するため動けないらしい。


ああ、なんか存在すっかり忘れてたな。



「私達に危害を加えないと約束してくださいますか?」


「途中からだけど話聞こえてたからだいじょーぶ!」


 ごろんと横になってこちらを向く。


 おそらく沙里ちゃんよりも長い髪をポニーテールにした髪型で、身長は俺よりちょっと低いだけじゃないかな?女子にしては高い。きっと後輩女子とかにもてたんだろうなぁという感想だ。


「分かりました。ヒバリさん、追加をお願いできますか?」


「はい、分かりました」


 そう言って彼女に近づいて、鞄の中から取り出すフリをしておにぎりと味噌汁を出す。


「え……?なんで、おにぎりが?」


 ……しまった!同郷の人におにぎりなんて出したら正体明かしてるようなものじゃん!そっか、テーブルに並べてあるのは寝そべってる彼女には見えてなかったのか!


「こ。これはゴルリ麦と言って、帝国の方で食べられてるんデスヨー」


「へぇ。やっぱり日本人はこれが食べたくなるよね!キミ、よく見つけたねぇ。ボクは諦めてたよ」


「ハハハ」


 やばい。どうしよう。



「あ……」


 そう声をこぼした彼女が、食事を準備する俺の耳元で囁く。


「もしかして、日本人って秘密にしてるの?それならボク黙っとくよ?」


「ど、どうし……」


「しーっ!だって、髪はちょっと違うけど声聞いたことあるもん。キミも勇者の1人なんでしょ?」


「……俺は勇者じゃないよ」


「んー?」



 さて、どう答えたものか。


「ユウコ様」


 全て言うべきか別な事で誤魔化すか嘘を言うか……

そんな風に悩んでいたら、隣に姫様が膝をついて彼女の側に座る。


「あれ?ボクのこと知ってるの?」


「はい。こちらの事情をお話してもよいのですが、それにはユウコ様がどうして王都を出てこのようなことになったのか説明して頂けないでしょうか?」


 姫様はどうするのかと思って静かに聞いていたが、事情次第で対応を決めるって事かな?確かに彼女がなんでこんな事になったのか知りたい。


「……うん。分かった」


 大分動けるようになったのか、上半身を起こして胡坐をかく。



「その前に……


 先におにぎり食べさせてよ!さっきから目の前でお預けって酷くない!?」


「あ、あら。ごめんなさいね、どうぞ召し上がってください」


 そりゃそうだ!


 せっかくだし出来たてを出し直すか聞いたらこれでいいって言われた。

酷いことしてごめんね?




「いただきまーす!……うわぁ、ほんとにお米だぁ!

んぐ、これ、んぐ、塩鮭入ってる!もご、ん、おいひぃ……やっぱ鮭はこれだよねぇ」


 ピーリィに負けないくらいのもっきゅもっきゅ顔で食べる彼女を沙里ちゃんが面倒を見てくれた。特に危険はなさそう……かな?

 正直同郷とはいえあまり勇者達にいい印象がないから、どうしても信用しきれない。まぁ彼女の事情を聞いてからの判断だから今は食べさせてるけど。


 本当は魔力譲渡も少しは出来るけど、体力も魔力も回復したら途端に……

なんて思ったら怖くて出来る訳が無い!




 それに、あまりのんびりとする時間はないから、食べ終わったらすぐに彼女の話を聞くことにした。



気付けば12万PV、150人以上のブックマーク。

しかも評価までつけていただいてありがたいです。


そ、そろそろ次の展開へ向けて話を進めますので!

拙作にお付き合い頂けると嬉しいです!

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