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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第7章 ビネンの湖と人攫い
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ギルドからの報告と共闘

こんな時間ですが出来上がったので更新します。

そんな拙作ですが、読んで頂けたら幸いです。


サブタイトルを変えたつもりが変わってませんでした……

内容に変化はありません。

「私達だって遊んでいたわけじゃないんですよ?」



 冒険者ギルドトルキス出張所所長が言う。




 調査報告書として纏められた書類を応接室のテーブルに置き、面会に応じた俺達に状況を説明し始めた。


 さすがに口外される訳にはいかないからと、マルーンさんの口添えがあっても俺達への警戒は緩めないようだ。閉じられた扉の前に屈強な男が2人、俺達の真横に女性職員、窓際にも所長の背を守るように1人の男が立っている。


 立っていてはどんな行動に出られるかという心配があるのだろう、全員分の椅子が用意された。おかげで、普段なら余裕があった部屋でも16人も居たらこっち側はすし詰め状態だ。なので、ピーリィは俺が、美李ちゃんは沙里ちゃんが自身の膝上に座らせている。



「ったく、ヒバリ達は大丈夫って言ってんだろぉ?」


 いつもより更に口調が荒れたマルーンに、今はしょうがないからと言って落ち着くよう促すが、どうにも収まらないようだ。本心からしょうがないと思ってるんだけどなぁ。脅されてるわけじゃないし。


 俺は膝の上に座らせたピーリィを撫でつつ所長さんの話を聞いた。




 このトルキスは森の材木と湖の漁業で成り立っている。どちらもそれなりに栄えている。漁業は先に住んでいた町民が子孫へその技を受け継ぎながら行っていた。そこへ町民を守るよう国から派遣された貴族が住み着き、森を伐採して木材にする副業を始めた。

 森は広い上、巡回も兼ねた道の整備も行っていたため町民とも上手く付き合って来れた。


 そこへ伐採加工という林業に目を付けたいくつかの貴族が、我先にと競ってより良い材質・大きさを求めるようになった。そしてその貴族達は自分らの別邸も競って大きく開拓・建造したため、町の大きさは以前の倍にも横長になってしまったそうだ。



 初めに派遣された貴族はパートロフィ子爵。先駆けだけあって、後から来た貴族の追随を許さないほどの安定した木材の提供、町や周辺への治安警備を果たしている。

 そこへここ最近めきめきと頭角を現す貴族が現れた。それがトランシュ男爵だ。林業だけでなく町民に話も通さず漁業にも手を伸ばし、徐々にその漁場を広げている。

 近頃では勢力を強めたトランシュ男爵が町長を丸め込んで巡回警備の上層部に割り込み、町民にまで口を出してきている。




「と……まぁ、ここまではトルキスに居る者ならばある程度は分かる事です。本題はここからになります」


 その前置き話の間ずっとピーリィの頭を撫でていたらしく、俺に寄りかかってぐっすりと眠っていた。しまった、無意識だったけど難しい話の中撫で続けたらそりゃぁ寝ちゃうか。でも、ピーリィなら聞かなくても問題ないかな?


 撫でるのをやめ、手をそのままそっと添えたままでおく。皆も新しいお茶を入れてもらい一息ついてから話は再開された。



「そしてついにトランシュ男爵の裏が取れました。先日殺された冒険者達が保険をかけておいたおかげです。自分達が死んだらこの手紙をここへ届けて欲しいととある町民に託していたのです」


 すっとテーブルに手紙を置く。決して綺麗とはいえない紙だが、数枚に渡って独自に調査した内容が書かれていたそうだ。そして、間に合えば連れ去られた彼らの恋人や妹を救って欲しい、と。


「結果は予想されていると思いますが、男爵は人身売買を行っていました。売り先も勿論貴族です。その人攫いは犯罪集団としてマークしていた”沼の蛇”という集団を雇っているそうです。

 ただ……我々にはまだその沼の蛇の構成員を特定できていないのです。クランとして登録していればすぐに探し出せる出来るのですが。しかし、先程報告を頂けた不審な馬車が攫った人を移送していた構成員に間違いないでしょう。それが分かっただけでもかなりの前進です」


「とは言ってもさ、アタシらは馬車を見かけた程度だよ?どんな奴等かもまったく分からないんだ」


 力説する所長にマルーンが口を挟む。


「恥ずかしながら、我々はその怪しい馬車ですら特定できていなかったのです。ここは漁業の取引に来た商人も多いのです。尾行に気付かれずこの情報を持ち帰ってくれた。大きな前進ですよ

 それにこれはチャンスでもあります。普段なら貴族相手に何か行動を起こすなんて出来ませんが、今ならアイリンか迷宮遺跡前には第二王女と勇者がいるのです!王族でしたらこの危急、駆けつけて下さる筈です!」


「じゃあもう誰かを知らせに走らせているんですか?」


「……それは、まだです」


 普通に聞いたのだが、俺の言葉にそれまで力説していた所長の顔が一気に曇ってしまった。 


「先程言ったように、誰が構成員かも判明していない今、この部屋にいる者以外信用出来る者がいないのです。更にここいいるギルドの者を動かせば確実に敵に警戒されてしまうでしょう」


 んー……それって、俺の鑑定スキルで分かったりしないのかな?今朝の馬車の連中の鑑定しておけばよかったなぁ。勇者が居たからそっちに集中しすぎて忘れてたよ。でも護衛してた奴等の魔力は多分次に会えば分かるはず。その時鑑定してみよう!



「そこで貴方達にお願いがあるのです。これはギルドからの依頼という形になりますので、当然報酬もあります。マルーンさん達にはまた迷宮遺跡に戻るという名目でトルキスを離れ、迷宮遺跡かアイリンに滞在されている勇者と王女へ救援を伝えて頂きたいのです」


「アタシらは動いても大丈夫なの?」


「元々トルキスの者ではないのでただ帰るだけです。ただ、多少警戒されるでしょうから、道中油断ならないのは変わりません。それならこの町が初めてのそちらの方々のほうが良いかと思いましたが……」


「まぁ……アタシらより強いのは確かだ。女ばかりだから危ないっていやぁ危ないが、実際に奴等の馬車を見たのはアタシとヒバリだけだしなぁ」


 自らの手で解決したいのか、マルーンが悩んでいた。



「それでしたら、マルーンさん達はすぐにここを発ち野営地へ急ぐべきだと思います」


 所長とマルーンさんの会話が途切れた所で姫様が発言する。


「勇者一行は、今日も森を探索する予定だと聞いているので、夜には野営地に戻ります。もしすれ違いでアイリンに戻られたら更に時間を取られる可能性が出てきます。もし後をつけるような者がいるなら、暗い森を行くより明るい今向かうべきです。当然ギルドから馬車をお貸しいただけるのですよね?」


「勿論です。森から野営地までの悪路でも走れる物を用意します」


「それでしたら、時間も無い事ですしすぐに行動すべきです」


 自分の話は終わったとばかりに俺のほうを見る姫様に頷き、俺も沙里ちゃんとトニアさんを見てからマルーンさんを見る。ちなみにピーリィは俺の上で、美李ちゃんは沙里ちゃんの上で寝てる。話が長かったからしょうがないね。



「……分かった。ここはアンタらに任せるよ。道中の飲み食いの物そろえたらすぐに出発する。いいね?」


 マルーンは仲間の3人へ告げて決定した。


「ああ、食料はこちらで分けますよ。朝ご飯と似たようなものになるけどいいですよね?往復になるだろうから、最低2食分ってとこですか」


「ああ!あのオニギリってやつかぁ。アレは美味かった!」


 ……なんか、もうちょっと多めに用意した方がよさそうだな。



 それから所長と姫様が話を詰め、色々と段取りを決めていった。俺はマルーンさん達の弁当を用意するために沙里ちゃんと2人で馬車に戻ってせっせとおにぎりを作っている。ピーリィと美李ちゃんは姫様達のいる応接室の長椅子に寝かせてある。これから歩いて調査するだろうから、休めるうちに休んでもらったほうがいいしね。


 マルーンさん達の乗る馬車はすぐに用意され、そこにおにぎりや水を入れたバッグを乗せる。バッグは後で返してもらうとして、中にあるおにぎり弁当3セットのうち1セットは勇者一行に渡して欲しいと伝えた。これを見せれば俺達だと分かってくれるし、町に着く前に乗り物酔いを回復したらお腹が空くだろうし。

 マルーンさん達は悪路の馬車なんて慣れてるって言ってたから、途中で食べても吐く事にはならないだろう。どうせ酔うのは勇者だけだ。



「じゃあ行って来るよ。アタシらがぶん殴る相手も残しておけよ?」


「さっさと片付けておいて、来た時には勇者の接待の続きを任せますよ」


「言ってくれるね!……ほんと、無茶するんじゃないぞ」


 最後にぐっと左肩を引き寄せられて小声で言われた。




 こうしてマルーン達は馬車で町を発った。1人怪我をしていて、治療ついでにアイリンに戻るという話にしておき、怪我人役となったロウジュは、俺が作った袋製マットの上で寝ながら運ばれた。というか、本当に寝ていた。軽く空気を入れてるからクッションとして寝心地がいいと言ってすぐに寝てしまったからだ。


 そしてギルド出張所では今、簡易鑑定宝珠で一斉鑑定を始めた。


 表向きの理由としては「簡易鑑定宝珠に不具合があった様で、先程直った。それがきちんと機能するかせっかくだから全員鑑定させて欲しい。これはギルドからの依頼として銀貨1枚報酬を出す」と言って受けさせた。


 たった数分の鑑定を受けるだけで銀貨1枚だなんて、普通は受けない方がもったいない。臨時のお小遣いとしても嬉しい話だ。



 そう、なにも後ろめたい事がない人にとっては。


 まずはギルド職員全員に受けてもらい、それから所内にいる冒険者達の番だ。ちょうどここにいて運がいいなどと言って浮かれている。何度鑑定しても壊れないのを確認するために、町にいる他の冒険者達にも声を掛けていいと言ったから、仲間にも伝えるぞ!と鑑定が終わった冒険者がいい笑顔で銀貨を受け取っている。


 その一方で、鑑定を行うと言ったらすぐに外へ出る者、どんな内容か聞いてからそっと出て行く者がいた。俺はそっとレーダーマップのマーカーにチェックを入れて鑑定する。


「んー……」


 鑑定結果を姫様達に伝える。勿論所長達には内緒だ。普通の鑑定なら名前くらいは分かるが、詳しい内容なんて分かるわけがない。俺の鑑定を使えば何か情報が掴めるはずと踏んでのこの作戦だ。

 勿論ギルドの方でも逃げ出した奴に対して尾行と鑑定を仕掛けている。人物の特徴と名前だけでも分かれば警戒しやすい。俺も”普通の鑑定を持っている”とまでは告げているので、二重であぶり出す作戦というわけだ。



「その貴族……えっと、トランシュ子爵?あ、男爵ですか。そこに雇われているかは分かりませんね。あと、クランってやつにも登録してないから、沼の蛇って所属もないです。

 ただ……犯罪歴に誘拐、恐喝、強姦、そして殺人があります。もう疑いようもないです。もう1人もそう変わらない犯罪歴があります」


「やはりそうですか。では、所長に声を掛けて私達も町へ出ましょう」


「所長へは自分が伝えてきます」


 傍にいたトニアさんがすぐに向かう。



 ここから俺達は町を散策しながら怪しい人物がいないか俺が鑑定しまくる段取りだ。そしてレーダーマップにてマーカーの色を変えて、その人が要注意人物であるとメンバー全員に言わずとも伝える事が出来る。皆にはマーカーの色が変わったら十分注意しつつも、決して直接睨んだり怯えた目を向けないようしっかりと話した。


 まずはマルーン達が出たはずの東門へ向かう。トルキスに入る時は北門を通った。この他にも貴族専用の西門と、湖から伸びて貴族と町民の区画を分ける川沿いに作られた南門がある。

 貴族の区画は湖の南側にあるトルキスの中では川に掛けた橋で繋がっているため、おいそれと貴族のいる土地は踏めない。湖を大回りして北から行くか、南へ下って別の橋を渡ってから北上する以外はトルキスの町民には手段がない。唯一漁師だけは船で対岸へ行けるが、その先は岸辺だけ降りることを許され、それより陸側は柵で覆われて入れない。

 そして、真っ直ぐ貴族区画へ向かっては橋を渡る分目立つ。朝見た馬車もおそらく目撃されるのを避けるために湖を回って貴族の下へと向かったのだろう。



 そして俺達は東門へ着いた。


 その間も鑑定は続けていたが、特に怪しい人物は見付からなかった。門番も暇だったのか、周囲を警戒しつつも2人で談笑している。鑑定したが特に怪しい所は無かった。


「こんにちは。ちょっとお聞きしたいんですが、マルーンさん達はもうアイリンへ向かって通りました?」


「ん?マルーン……ああ、赤毛の姉さんか。知り合いか?」


 ちょっと怪しまれたのか、1人に聞き返された。


「はい。ロウジュさんが怪我をしていたので、無事に出立出来たか心配になったんで」


「ああ、そういうことか。うん、ちょっと前に出て行ったよ。怪我人も顔色がよかったから大丈夫だろう」


 事情を説明したら警戒を解いてくれ、きちんと答えてくれた。


「なんだ?誰か怪我をしたのか?」


 もう1人の門番は知らなかったのか、俺と話してた門番に聞いてくる。


「さっきお前と交代する前に女性パーティの1人が怪我をしていてな、大事には至らないが一応アイリンで治療を受けるって出て行ったんだよ」


「ふーん。まぁ今からなら明るい内に行けるか」


 ……ん?ちょっと待った。


「あのー、門番ってこんな時間に交代するんですか?」


「いや、普段は早朝と日暮れ過ぎだ。丁度さっきの話の馬車が出て少ししたくらいに腹が痛いと言って1人帰っちまったんだ。で、急遽こいつが呼ばれたってわだ」


「俺も休みだったが給料日前で特にすることがなかったんでな。割り増しで臨時収入になるから引き受けたってこった」


 うわ、これビンゴじゃないか?ちらっと横を見ると姫様も同じ考えみたいだ。 


「その人大丈夫ですか?俺達が運んできた丸薬に腹痛に効くのがあったから、宣伝がてらに届けましょうか?」


「ああ、君達は商人だったのか。ぼったくりや詐欺じゃないと誓えるなら届けてやってくれ。衛兵の宿舎にいるはずだ」


「はい、そこで効果を見てもらえたらとてもいい宣伝になりそうですね!ありがとうございます」



 近くで遊んでいた美李ちゃんとピーリィ、それと見守っていた沙里ちゃんを呼び戻して、場所を聞いた衛兵の宿舎へと向かってみる。


「たぶん、例の人達の仲間でしょうね」


「はい。宿舎にいなければそうでしょう」


「マルーンさん達、無事に着くといいんですけど……」


「ヒバリさん、彼女達には馬車を止めずに野営地へ向かうよう言ってありますし、野営地に着けば周りは知り合いばかりになるのでおそらく問題ないでしょう」


「はい。それに、勇者一行と合流出来たら姉様もいます。それこそ心配は無用ですよ」


 姫様とトニアさんに言われたが、それでもなんとなく不安が残る。でも何が出来るわけでもないし、今はこっちの事に集中するしかないのかな。



 その後宿舎に辿り着いて経緯を説明し、件の腹痛で早退した衛兵を呼んでもらうがやっぱりいなかった。新人だが特に問題行動も無く勤務していたらしく、周りの衛兵も不思議がっていた。


 経緯を話す時も周りにいる衛兵全員を鑑定したが、結局ここでも新たに怪しい人物は出てこなかった。





 一旦ギルドへ報告へ行く途中で、それを見付けた。



 あまり大きくない路地で、大きめの麻袋の様な物を担ぐ3人の作業着の男と、その近くを警戒するように歩く冒険者風の男が2人。決して一緒に行動してはいないが、着かず離れず同じ方向へ歩いていた。



「見付けました。朝に見かけた馬車の護衛をしていた1人だと思います。今レーダーマップのマーカーの色を変えましたが鑑定で犯罪歴がありました。なにより、3人が担いでる袋に……気を失った人が入っています」



 さて、どうしようか……



一気に書かないとうまく内容が噛み合わない場所が出て来ちゃいますね……

なるべく早めに次も更新出来る様頑張ってみます。

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