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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第1章 異世界で食品製造はじめました
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食材と試作品



 鍛冶師に道具作成依頼をしてから2日経った。


 明日ついに器具たちが届くらしい!




 この2日間準備をして待っていたぞ、ミンサー!


 具体的に何をしていたかというと………


 まず昨日は、大量に届いた食材や調味料を冷蔵庫に、入りきらなかったら作っておいた保存用の袋(時間経過無・繰り返し有)に、常温可能なものはその脇にと仕分けと味見に追われた。鑑定スキルがなけりゃあれ全部味見して覚えなきゃなんてぞっとしたわ!

 この世界の食材は俺たちの世界の食材と生の味も調理後のも似ているが、見た目が若干違っているから中身が同じもとのは限らないんだよなぁ。俺の場合は分かってて手を出してるから大丈夫だけどね。


 調味料や油も鑑定して味も確認してあるからそんなには味に違いはない。やっぱり種類が少なかったのは仕方ないのだろう。俺の知ってる異世界モノだと調味料の開発からだったし、それに比べれば味噌や醤油はあるし、酢も砂糖も塩も胡椒もある!欠点といえば、ちょっとばかり高価なものらしいから下手に大量には使えない事だろう。

 酒は麦酒とワインと蒸留酒、あとは亜人の間にはまた別な酒があるらしい。といっても俺は酒は飲めないので、アルコール飛ばして料理に使うだけだ。飲み明かすつもりはないのでこれだけあれば十分!


 ハーブはさすが子爵家の農園だけあって、この世界にある8割くらいは育てているらしい。唐辛子やニンニク、ショウガはもちろん、バジルやミントといった生ハーブ、クローブやナツメグのような乾燥ハーブも製造していた。旦那様は道楽で経営してるなんて言ってたが、ここまでしていれば堂々と名乗れるのにもったいない。

 いくつか知らないものもあったが、俺自身がすべてのハーブを使っていたわけじゃないので、こちら特有なのかはちょっと判断が付かない。鑑定は出来ても俺が知らなければ意味が無いって事が分かったのは思わぬ収穫だ。



 そしてメインの肉と魚!


 やはり牛肉・豚肉・鶏肉は高価らしい。味見をしてみたが、どれもちょっと脂身が少ないくて硬いが、そんなには変わらなかった。出来れば豚の脂身も頼んでおくべきだったなぁ。あと骨は捨てているようなので、これはどの骨も確保したい!


 ここから一般の人がよく食べている肉として、冒険者が狩りギルドが買い取っているビッグボアとイエロークロコダイル。つまりは猪とワニ。どちらも安いだけあってかなりの硬さとちょっと癖のある匂いがある。

 普通は安いハーブ液に漬け込んで干し肉や燻製、又は生のものを濃いタレに漬け込んでから串焼きなどにしているらしい。害獣でもあり値段が豚や鶏の半額以下だからある程度は消費されてもそれ以上に持ち込まれるようで、需要と供給が崩れているのである。



首都の場合の取引価格は、


肉の値段(1kgあたり

牛:100ゴールド(銀貨1枚

豚:70ゴールド(大銅貨1枚と銅貨20枚

鶏:50ゴールド(大銅貨1枚

猪:20ゴールド(銅貨20枚

ワニ:10ゴールド(銅貨10枚

 

となるらしい。

 屋台の串焼きが肉を100g使って20ゴールド前後という話だから、どうしたってワニか猪使うしかないわけだなぁ。牛が高すぎる!


 魚の方は首都が海からさほど遠くないため、高いが生のものも手に入る。この世界では海の隣で住んでいない限りは新鮮な魚は望めないそうだ。しかも生で食べる習慣はない。大体は干物か塩漬けになっているほっけのような白身魚だ。

 貝類はまだマシで海水の中に入れられて生でも届く。ここに届いた貝類(アサリ・蛤・ムール貝はあるけど鮑はなかった)もまだ生きている。さっそくアサリを味噌汁でいただいたが、ここにはだしが無くて味気なかった。海草も開拓しないとなぁ。


 ちなみに午後は、


 この日は姫様は来られなかったけどトニアさんが俺達3人の魔法指導をしてくれた。相変わらず2人は上達しまくってるが、俺の闇は深い。つまりダメだったってこと!次は頑張るよちくしょう!




 そして今日。


 まず朝に猪肉を塩水に浸してから料理店に行き余った骨を貰い、帰ってからは鶏骨をじっくり煮込んでだしを取る。煮込みつつもワニ肉を麺棒でひたすら叩いて柔らかくする。猪肉も引き上げ水気を切ったら同じように麺棒で叩く叩く叩く!

 叩いた両方の肉を切り分け、今度は包丁でひたすた叩いてミンチにする。これはミンサーが来るまでの試作だからやってるが、これは後で使うため、時間経過無しの袋に入れてしまっておく。下働きの人には申し訳ないが二度としたくない!



 午後は姫様とトニアさんがやって来て、また魔法指導をしてくれた。

トニアさんが姉妹を、姫様が俺をみてくれるらしい。



「本日はヒバリ様に闇魔法について調べた事をお話します」



 ……もしかして、昨日来られなかったのは闇魔法を調べてくれていたんじゃ?

てっきりさすがの姫様も毎日は来られないだろうから、これからもたまーにくらいなんだろうなって思ってたが、ほとんどの時間をこちらに割いてくれているんじゃないか?


 そんなことを考えていたが、せっかく姫様が調べてくれたんだからと姿勢を正して聞く事にした。



「闇属性の特徴は隠匿と説明しましたが、他にも空間という特性もあったようです。闇だから暗い程度に考えていましたが、空間と隠匿ともなるとその手段はかなり恐ろしいか便利かと両極端な気がいたします」



「空間………隠匿………」


(ああ、ゲームではよく忍者系のキャラが影に隠れたりするのも空間だったのかな?

確かあの技の名前は、)





「ハイディング」



 すーっと座っていた椅子の影と一体化するように存在が薄くなっていくヒバリに姫様が思わず声を荒げる。それを聞いたトニアがすぐに駆けつけ、遅れて姉妹もやってくる。

 そして俺はその様子を少し遠くからの景色に感じていたが、やがて意識を前に押し出すと、文字通り椅子の影に隠れていた身体が元に戻った。



「あぁ………ヒバリ様……よかった」



 椅子から立ち上がっていた姫様は、力が抜けたようにすとんと腰を下ろした。さりげなくトニアさんが支えていたから滑り落ちる事も無く静かに座り直していた。



「すみません、おどかしてしまったようですね。でもおかげさまで闇の魔法をつかめました。暗くしたりするイメージばかりだったのが、姫様から聞いた話のおかげで、自分で空間を作ってそこに隠れるってイメージにしてみたんです。そうしたらそばにあった椅子の影に隠れていました」


「お役に立てたようでなによりですが、存在そのものが消えかかったように感じてはしたない姿を見せてしまいました。お恥ずかしい限りです……」


 うむ。照れまくってる姫様はなかなか見られるものじゃない。じっくり見ておこう!





「ハッハッハ!実は俺はNINJAだったのだッ!」


「ひばりお兄ちゃんNINJAなの!?しゅりけんなげてー!」


「…く!かくれんぼしかできないんだ……ッ!」


 その後、1度覚えたら影相手限定だがハイディング出来るようになっていた俺は、美李ちゃん相手にNINJAごっこをしていた。そして今日はおどかしてしまったお詫びも兼ねて、俺が晩御飯を作る約束を取り付けておいた。さすがにあのままじゃ姫様に悪いしなぁ。



 料理の方は沙里ちゃんとトニアさんも手伝ってくれるとの事だったので、パン粉と食器類の準備をお願いしておいた。そして俺はまたひたすら牛肉と豚肉を麺棒で叩く叩く叩く!包丁で刻む刻む刻む!そしてまた包丁で叩く叩く叩く!ミンサーよ、早く来ておくれーーー!


 ハンバーグのタネは基本に忠実な塩・胡椒・卵・少量の牛乳を吸わせたパン粉・炒めて冷ました玉葱・ナツメグ・油。これを牛と豚を混ぜた挽肉に入れてねばりが出るまで手早くこね、1つずつ空気を抜きながら成形して並べておく。

 その横で沙里ちゃんに醤油・酒・少量の砂糖を混ぜて一旦火を入れてもらう。アルコールを飛ばしたら火を止め、そこに酢とレモンらしき果物の絞り汁と酢を入れて器にあげておいてもらう。ほんとは昆布等だしがあればよかったんだけどなぁ。

 そしていよいよ焼き始め。温めたフライパンに油を引いてからタネを並べ入れてすぐにフタを閉じる。中火(?)で片面に焼き色が付くまで焼いたら、フタを外してもう片面にも焼き色を付ける。最後はオーブンで10分ほど焼いたらメインは完成だ。


 盛り付けは同時に作っていた茹でたじゃがいも・下処理して一緒にオーブンで焼いた人参・コーン・トマト・茹でたブロッコリーだ。そしてハンバーグを盛り付けたら、その上に大根おろしと刻んだバジル・最後にポン酢のソースをかけて和風ハンバーグの出来上がりだ!

 今回シソは見つからなかったので、同じシソ科のバジルで代用してみた。さすがにデミグラソースまでは作る時間はなかったので、一番簡単な和風ソースを選んでみたってわけだ。おしいのはご飯がないのでパンで食べること。お米、見付けたい……!




「さあおまちどうさま!これも一応故郷の味に入るのかな?和風ハンバーグを召し上がれ!お口に合うといいんですがね。あ、ソースが足りなかったらまだ残ってますからね。あとハンバーグも」


 自分も席に着き、いただきますと挨拶してさっそくハンバーグから口に入れてみる。あー、たった数日なのに懐かしいなぁ。特にこっちに来てからはとにかく濃い味が多かったから、これぐらいで丁度いいや。野菜類も元がいいからうまいなぁ。じゃがいもはバターあってもよかったかも。


「これは、あっさりしてますが美味しいです!挽肉料理ってただぼそぼそしているだけでスープ以外ではあまり好んで口にしませんでしたが、これはすごく柔らかいのに肉から美味しさが溢れてきますね!」


 少し興奮した姫様の言葉を皮切りに、他の3人からも高評価をいただけた。沙里ちゃんは自身のスキルでモノにしたいから後でまた教えてほしいと頼まれたくらいだ。基本のレシピだから、ここからは彼女の好みで変化させてくれたら面白いだろうな、などと考えつつも今の食事を楽しんだ。



 余談だが、4人とも全員もう1枚平らげた。あとで全員ちょっと恥ずかしそうにしていたのであえて突っ込まないでおいた。あと外に居た従士さんたちにも振舞ったら背中を叩かれつつお礼を言われた。




 いやぁ、作ったものを食べてもらえるってのは嬉しいねぇ。元の世界の工場だと直接食べてもらえないし顔も見えない。実家に居た頃は父親がたまに無言で食べてただけだった。


「こういうのも、いいなぁ………」


 皆が帰った後、片付けながらそんな事を考えていた。




さあ、明日からが本番だ。頑張って行こう!!!



自分にしてはちょっと短め(?)です

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