表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第5章 北の国境街から副都市へ
50/156

魔力操作と制御の訓練

通算で50話いきました!


自分、頑張ってる!

 その日の晩はきのこと鴨肉を使って作ってみた。ご飯の話をしたらルースさんが「教えるのは明日でよいな!」と、投げられてしまったのだ。すっかり気に入ったようでなにより、かな?




 数種類のきのこを醤油ベースで炒めてから白米に入れた混ぜご飯、白身魚と昆布だしとマツタケを使った土瓶蒸し、あとは鴨南蛮うどんだ。


 昆布だしとは言ったが、実際には昆布に近いものだ。しかも海草じゃなく湖に生息する水草だった。まさか海からじゃなく淡水から見付かるとは思わなかったなぁ。若干味が足りないが、だしとしての役割は果たしているので十分だ。

 あとで椎茸の乾燥もお願いしてあるから、これで3種類のだしが取れる事になる。やっとここまできたかぁ。



「この土瓶蒸しはまずスープを味わってください。その後で中身もどうぞ。あ、柑橘を少し絞って入れるのもオススメですよ!」


 試しに作ってみた土瓶蒸しは物珍しさと作法?が分からず戸惑っていた皆に見せながら教えた。確かこれで合ってるはず。



 そして姉妹はマツタケの網焼きに夢中だ。半分くらいに裂いたマツタケを直接網で焼き、そこに醤油を垂らしてがぶり。すっごく満足そうだ。


「はぁ〜……美味しい」


「おねえちゃん、これ全部食べていいんだって!すごいねぇ」



 俺たちも少しは食べたんだけどね。やっぱり姉妹以外はあまり進んで食べようとはしなかった。ルースさんとピーリィはあれば食べるようだが。

 あ、でも土瓶蒸しくらいほんのりとした香りだと、全員に好評なようだ。どちらかと言うとだしに喜んでいたのかもしれないけどね。



 この昆布もどきのだしは、まず生の物を買ってそれを沙里ちゃんの魔法で乾かしてもらう。ドライヤーの魔法便利!そしてそれからだしを取ったんだが、これをナイフで薄く削ればとろろ昆布も作れた。懐かしいなぁこれ。 

 おかげで鴨南蛮うどんも味がよくなってさらに和食が並ぶようになった。もちろん宿の食事もまだ全種類食べてないから頼んでるのだ。



 つまり、皆よく食べるなぁ……



 晩ご飯も元気いっぱい食欲旺盛なのはいいことなのかな。そう思う事にして、片付けをしたり備品補充をしたりといつもの夜を過ごした。





「ではさっそくじゃが、おぬしに魔力操作を教えるぞ!」


 翌朝、ご飯前からさっそく教えてもらえることになった。



 夕べは姫様とトニアさんだけ居住袋で寝てもらった。袋さえ閉じれば破壊されない限りは権限がないと開けられない。これならトニアさんも気を張らずに寝られると思ったからだ。

 姫様とルースさんも分かっていたようで納得してくれた。でも、風呂を気に入ったルースさんが「あれは使わせてもらうぞ!」と、そこだけはしっかりと主張してた。こちらの世界では肩まで浸かる湯船は珍しいそうだから、ルースさんもすっかり俺達の生活に馴染んでる……いや順応早すぎ!




「ほれ、集中せい!」


 まずはダークミストから見直すと言われ、普段使っているよりかなりの魔力を籠めて細かい情報を探る。鑑定は使わないで、だ。ターゲットを絞り込む練習らしい。

 それが出来る様になったら、今度は目眩ましをターゲットだけに使う。今までは範囲”全て”に使っていたのだ。そりゃあ魔力食うわけだ。それを指定したものだけに使うなら、その消費は極微量の魔力でいい。持続時間も相当なものになる。



「今まではブラックアウト……目眩ましと言ったか?これを使うのに魔力を100使っていたとすると、指定で使うだけなら1人に付き2か3の魔力で済むじゃろうの」


 てことは、これまでは毎回30〜50人分を使ってたってことか。許可印設定してない人にも影響を及ぼさないで済む事も大きい。



「もっと緻密に認識できるはずじゃぞ。しっかりせい!」


 狭い範囲とは言え、完全に空間内全てを掌握するような精密な情報を得られるまでこれを続けるらしいが……きつい!無理矢理頭の中に色々詰め込んでるようでギリギリと頭痛がしてくる。

 さすがにこの状況を皆に味合わせるわけには行かないので、今はルースさんだけに許可印を設定している。そのルースさんは全然平気なのか……さすがだなぁ。



 結局30分ほど連続で発動した所でバデた。


「これ、は、集中力、が、いります、ねぇ……」


 ぜぇぜぇと息を荒くしたまま仰向けに倒れる。宿屋のベッドの上だったので気にせずそのまま呼吸を整えるために深呼吸を繰り返した。


「わしとて今日1日で出来るとは思っとらん。じゃが、これが出来る様になれば指定して発動なぞわけなく出来るじゃろう。後は毎日己自身で鍛えるがいい。さあ次じゃ!」


「はーい、朝ご飯できましたよ〜」


「よし、ご飯が先じゃ!」


 沙里ちゃんの一言で一転して即座にご飯に変わった。この人、少ししたら帰るって言ってたけど大丈夫なのかな……?

 後で教えてもらったお礼に何かお土産をと思っていたけど、食べ物の詰め合わせを作っておくのもいいかもしれない。時間見て作ろう!





 朝食後も訓練を再開し、今度はカモフラージュを武器や矢に使ってみたり、袋作製の問題点も自身の想像を強固にすれば可能性があると教えてもらった。

 結局行き着くところは魔力制御であり魔力操作、そして想像力か。そうなるととにかく頭を使ってどうにかするしかないんだろうなぁ。


 俺が集中力の訓練に戻った事で少し手の空いたルースさんがピーリィの魔法適正を見てくれていた。


「……ふむ。おぬしは固有スキルで風を操っておるのだから、その風をもっと自分のしたい事に乗せれば上手くいくじゃろうの」


「したいコトー?」


「そうじゃなぁ……その翼で風を送る時に、吹っ飛べ!と気持ちを籠めて扇いだり、もっと早く飛びたいと念じながら飛ぶのもよいの」


「ん〜……とぶの、ここじゃできいカラ、はねでかぜだスノ、やってくルー!」



 そう言いつつピーリィが居住袋に入って袋を閉じた。なんとなくそれを目で追っていた俺の視界が、無意識に感知範囲を居住袋の中へと進んでいく。


「お?」


 ルースが軽く声を上げるが、集中しているためかヒバリには届かない。



 居住袋の中でピーリィの反応が練習部屋へと飛び込んで行く。キッチンでは沙里ちゃんが、畑用収納袋では美李ちゃんがそれぞれ頑張ってくれている。姫様とトニアさんは和室というか本来は俺の部屋なんだが、そこにいるようだ。



「なんじゃ、えらく集中出来ておるようじゃの」


「……え?そうですか?」


「ヒバリは閉じた袋は魔力が遮断されて通らないと言っておったではないか。じゃが、今はその中も見えておる。それだけ魔力操作に集中出来ておるということじゃよ」



 ……おお。そういえば何となくピーリィを目で見ていたはずが、いつの間にか感知で追いかけていたのか!これは自身の袋の魔力とダークミストを繋ぐ事が出来たって証明だ。


「今ほどの集中力を維持出来るのであれば、生物に流れる魔力を正確に感じ、そしてその形もある程度感知出来るはずじゃ。やってみぃ」


 まずは目の前のルースを視る。見るではだめだ。集中して、その姿形を魔力から捕らえるよう視る。チリチリと頭痛が始まるが、もう少し!もう少し頑張ってみよう!


「ふむ。人型とはならぬが、ただの点よりは動きが見えるようになってきおったの」


 そう言いつつ手を振ったり部屋の中を歩いたりして自身の動きが反映されるか確認してくれている。大の字が動いてる程度にしか分からないが。


「ッ!……ぶはぁ!はぁ、はぁ……」


「これも毎日の修練を怠る事なく磨けば、より鮮明になるじゃろう。ああ、だからと言って裸身を視るようなハレンチな事はせんようにな?」


 ニヤニヤと笑いながら倒れた俺を見下ろすルースさんに、呼吸を整える事で精一杯の俺は何も言い返せなかった。そもそも許可印を全員に設定するんだから、そんな事したら身の破滅だわ!



 この訓練をした後で分かった事だが、集中したからといって消費魔力を増やしたわけじゃないようだ。魔力が大量に抜けた脱力感が無かったから気になってステータスを見て、もう一度集中した後で確認したらいつもどおりの消費量だった。

 これをルースさんに話したら、「同じ魔力でも使い方次第で差が出るのは当然じゃ!」って、何で訓練してるのかを一から説教されてしまった。そうか、本質を理解せずにやってると思ってなかったのか。不肖の生徒で済みません……




 そんな俺の訓練に感化されてか、居住袋の中では姉妹もトニアさんに教わって訓練してるようだ。確か、木で出来た槍と刺突剣で扱い方から習っているらしい。さすがに魔法はこの中じゃ危ないからね。街にいる限りは俺みたいな魔力制御と操作を覚える方がいいのかもしれない。



 昼には出かけて、今日は食材以外の雑貨の買い物だ。服に使う布や糸、気に入った既製品の服も。この世界では服はそれなりに高いが、一般市民にも手が出るくらいには紡績業も発達しているらしい。

 トイレットペーパーもどきや紙も普及しているのは、こういった繊維からの技術があってこそだろうからね。



「意外とこの世界は技術関連も発達してるんだよねぇ」


「ああ、それは召喚勇者様のおかげなんですよ」


 俺の呟きに姫様が答える。相変わらずの物知りさんだ。



 召喚された勇者の中には工業や農業等の産業技術を持った成人もいたらしく、その人達がこの世界でも快適に過ごせるように惜しみなく広めていったそうだ。

 醤油や味噌もそこから試行錯誤で作られ、そして帝国から伝わった品である。他にも様々な生活水準向上に手を尽くしたそうで、人々に歓迎されるのも過去の偉人達のおかげだ。


「その割には戦闘スキルが無いと手の平を返されるってのは納得いかないなぁ。技術的に利用価値がある可能性は見ないんですかね?勿論利用されるのは勘弁ですけど」


「今回は姉上の命による策略であったため、一般国民にはそういった反応は無いのですが……ご迷惑をおかけします」


 やっちまった。思わず愚痴が出ちゃったせいでまた姫様を落ち込ませてしまった。


「でも帝国ではそういった事はないんでしょ?まずはそこに逃げ込ませてもらうわけだし、そっちで迫害が無ければ問題なしですよ!」


 近くを歩くトニアさんは何も言ってこなかったが、姫様を心配してるのはわかる。落ち込ませてごめんなさい、と目配せだけしておいた。



 他の4名がきゃっきゃと買い物している姿を眺めながら、今日受けた訓練の報告で話題を変えつつそのまま姫様達と雑談して時間を潰した。途中からはルースさんとピーリィが戻ってきたので、姫様達を服選びに送り出す。俺の相手してたら何も選べませんでした、なんて申し訳ないし。




 今日の買い物はここだけなので、帰りは色々寄り道をしながら街の観光をしていく事になった。今日は馬車ではなく徒歩なのでゆっくり帰っても丁度陽が暮れたか暗くなる前には宿に戻れるだろう。


 大きい街だから全てを回るのは時間がかかるだろうが、買い物をする店は通りごとにまとまっているので見て回るには楽でいいね。危険や用事の無い区画に入らないようにだけ気を付ければ問題はなさそうだ。




「2人はよく飽きないねぇ」


 宿に帰ってからの晩ご飯。姉妹はまたマツタケの網焼きを作っていた。他の人は土瓶蒸しなら食べるが単体はいらないと言う人だけなので、2人が食べたいだけどうぞと言ったところだ。しかもここじゃ安いし。


「普段出来る事じゃないですからね!」


「あたしも好きになっちゃった!」


「きのこだから体にはいいだろうし構わないけど、他のものもちゃんと手をつけてね?」


「「はーい」」


 姉妹はこれでいいとして、残ったメンバーは野菜炒めとラーメンと炒飯と言う中華セットと宿で注文した炒め物や煮物を食べている。ピーリィは手の問題からフォークだが、ついにルースさんも箸デビューしてた。

 皆と同じものを使えないピーリィがちょっと寂しそうだったので、今日もパンケーキを焼いてあげたら喜んでくれた。さすがにこの時は皆フォークだからお揃いだしね。


 後は風呂に入って寝るだけだが、今日も寝る前に袋作製と仕込みといった作業をせっせと行う。短い時間で効率よくさっと終わらせるぞ!



 これで後は依頼した道具が明日完成してれば、街を出るかまだ残るかの会議をした方がいいな。ルースさんもだろうけど、俺達だって早く帝国に行って助力を得ないといけない使命があるからね。





 さしあたって……


 今日も風呂場に乱入しようとするピーリィを止める作業が待っているようだ。



 もう寝る場所に関しては宿だろうがここの中だろうが結局乗っかってくるからそこは受け入れたよ。やっぱり早めに修行の成果を出して、居住袋を作り直そう。和室が狭い!



 内容としては途中ですがここまでを第5章とし、次の更新は閑話を挟みたいと思います。


 閑話は1話ずつは長くしないつもりですが、書きたかったのでお付き合い下さるとありがたいです。


 それと資料として袋詰めスキルのまとめと、簡単(というか下手ですが)にではありますがケロ口さんの展開絵と居住袋の間取り画像で1話掲載予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ