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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第3章 濡れ衣と第一王女
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城内の現状と決意

第3章開始しました。

「殿下、ご無事ですか!」



 叫びながら家の中に入っていく旦那様。なんとか追いついて後から入った俺の前では、驚く3人と落ち着いてる1人、そして姫様が見当たらない事に焦りキョロキョロと見回している旦那様の姿だった。



「えっと、旦那様。姫様はこちらにいますよ。変装しているだけです」



 そう言いつつ姫様とトニアさんのカモフラージュを解除する。姫様の無事な姿を確認できて力が抜けそうな旦那様をトニアさんがそっと席へ案内して座らせていた。



「ああ、すまないね。ちょっと、いや、かなりの緊急事態ゆえ、余裕がなくてな」


「事前に説明しておかず済みません。そのままの姿というのは危険かと思い、俺の魔法で変装させてました」


「うむ、確かにな。そして今回火急の知らせ故の無礼をお許し下さい。そして時間も惜しいのでこのまま報告をさせていただきます。」




 そう言って語りだした内容は、



 第一王女であるスロウスティ殿下が己の親衛隊とともに国王に今の国の在り方に異議を唱え、それに賛同する貴族と共に対立する立場を宣告したらしい。

 幸い武力行使に出たわけではないので、現在は国王と王子は騎士団に守られつつ第一王女と議論を交わしているそうだ。おそらく国のためを思っている、争いは望んでいないというアピールなのだろう。


 しかしここ最近第一王女の過激さ危ぶんでいた貴族が何人か不審な死を遂げているらしく、しかもそれが起こりだしたのは召喚儀式が行われた後、つまり本当に最近であるということだ。


 そして城内でトニアさんが狙われ始め、姫様と共に城外へ避難してすぐのこの行動。全てがそうなのかは分からないが、ある程度は計画されていたことなのでは?と思わざるを得ない。

 召喚された勇者のうち半数近くが親衛隊へと移り、さらに第一王女の嫌う亜人と闇の適合者を罪人に仕立て上げ己の支持を高めるために利用する可能性すらある、と騎士団長を通じて王子から警告を受けたそうだ。



「おそらく次の召喚を行わせないために、召喚の宝珠は姉上の手に渡ったと考えるべきでしょうね。ですが、光の適合者は城内にはおりませんでした。再度召喚する事はないでしょう。

 そして、現在召喚された方々に、帰る手段があると言って忠誠を誓わせた可能性も否定できませんね。でなければ、戦闘を断った方々がこの時期に親衛隊に入った理由など考えられません」


 これは初めて聞いたが、戦闘スキルを持ったからといっても、戦う事を拒んだ者は給金は俺達と同じで少なくとも城内では暮らせていたらしい。

 そんな人たちが今更戦闘要員として志願するなんて、確かにそういった餌がない限りはありえないだろう。そして気がかりなのは、



「ひとついいですか?その第一王女は亜人と闇の適合者に手を出してくる可能性があるってことですかね?それって俺もトニアさんも危ないんじゃ……」


「うむ。スロウスティ殿下は亜人嫌いで有名なのは以前話したと思うので理解が及ぶだろうが、闇の適合者を狙う理由は適合者に魔族に多い故、その者を魔族に仕立て上げて断罪し、民衆に正義は我に有りと示したいのだろう。魔物に親しい者を殺された民は多いのだよ。魔物か魔族かどちらであったか?関係ないのだろうよ。恨みをぶつける対象があればよいと、な」



 つまり、個人の嫌悪で亜人を、民衆アピールのために闇の適合者を悪人に仕立て上げて処刑したいってことか?どこの魔女裁判だよそれは!?

 答えてくれた旦那様に怒りをぶつけるわけにもいかず、理不尽な現状に苛立ちが募っていく。



「ヒバリ様。もしこのまま姉上が実権を握るような事になっては、おそらくここにはいられないでしょう。今思えば、もう一方いらっしゃった闇の適合者が姿を消したのも姉上の手のものかもしれません。それにニング卿の下にいることはすぐに調べがついてしまうでしょう。

 そこで私は、この国を出る事をお薦めいたします。そして行き先は隣国であるノロワール帝国です。こちらは亜人と友好な関係を築いているので、闇の適合者であろうが差別というものがかなり低いのです。

 そして……もし出国なさるのでしたら、私も参ります。帝国は言わばこの国の親国。現状を報告と相談に行くことがよろしいかと判断しました。

 私だってトニアに何かあってから後悔はしたくありません。トニアとはこれからも共にあることを願っています」



 急に国を出ろと言ったり更には自分も着いて行くと言ったり、ちょっと頭が混乱してきたぞ……ただ分かってるのは、このままだと危険だということか。



「沙里ちゃんと美李ちゃんはどうする?2人は亜人でも闇属性でもない。ただ暮らすだけなら正直無理に国を出なくても匿ってもらえる伝手はあるかもしれないし」


「……それでも、戦闘職になれなかったわたし達が城の人達を信用しろと言われても無理ですし。あっ!ノーザリス姫様とトニアさんは別ですよ!旦那様の下を出て、もしその第一王女が何かしてきたらと思うと……でも外は魔物が多いと言うし、そんな場所を旅できるのかも、不安です」


 隣にいた美李ちゃんを抱きしめて黙ってしまった。


「んーと、お姉ちゃんたちとヒバリお兄ちゃんがいるなら、あたしは大丈夫だよ?お城は、あたしたちを変な目で見るからやだもん」


「申し訳ないが、あまり猶予はないと思うぞ。正直いつ武力行使で動くか、騎士団長もかなり心配しておってな。なるべく話し合いで引き伸ばして、こちらも準備はしておく、とのことだったのだ」


 旦那様から厳しい現状を告げられ、そしてこちらを伺う皆の視線が集まる。



 これはもう、他に選択肢ないよなぁ。



「俺は、帝国に行きたい。ここでくすぶっててもおそらく悪い事しか起こらないと思う。沙里ちゃんと美李ちゃん、もし行ってみたいと思えるなら一緒に行こう。姫様とトニアさん、こんな頼りない護衛でいいなら、一緒に帝国を目指しましょう」


 俺の次に、美李ちゃんが答えた。


「ここのお家を出るのはさびしいけど、みんなと離れ離れは、もういやだよ。だから、ヒバリお兄ちゃんたちについていきたい!」


 それを引き継ぐように沙里ちゃんが答えた。


「正直魔物とか他の人はまだ不安で一杯です。でも、ここにいても不安は消えないでしょうから、それなら旅に出ます。一緒に連れてってください」


 姉妹の決意を見届けてから姫様が答えた。


「私としてもこの国の王女として直接帝国に報告に向かわねばなりません。ヒバリ様の事は頼りにしていますよ。そして、帝国に行けば帰還魔法についても何か文献が残っているのではとも思ってのことです。トニア共々、よろしくお願いしたします」


 そう言ってトニアさんと共に頭を下げてきた。



 これで、この国を出る者すべての意思は固まった。



「さあ!そうと決まれば時間がありませんぞ!まずは5日以内に準備を済ませましょう。食材や馬車、身分証はこちらで用意しましょう。あとは必要なものを列挙して――」



 旦那様の力の篭った声に促されて、これからの事を決めていくのであった。




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