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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第2章 従業員、増えました
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素振りと不穏な情勢

少し短めですがよろしくお願いします

「ほれ、また重心が高い!それと重心は少し前にじゃ!顎を引いて背筋は伸ばしたままを保てぃ!少し振るとまた戻っとるぞ!」


 一夜明けて午前中の製造後、昼ご飯を食べて休憩を挟んでからさっそく源さんの指導による訓練が始まった。もちろん昼はここで食べてた。よく間に合わせたなぁ。




 実は3人の中で一番筋力(STR)が無いのが俺だった。姉妹2人が一生懸命素振りしている横で、俺だけへばりながらも振っている状態だったのだ。先程の源さんの声もすべて俺だけに向けられたものだったりする。


 くそー……袋作ってばかりで体作りまったくやってこなかったのがここに来てきつい!沙里ちゃんは店で力仕事もやってたらしいし、美李ちゃんに至ってはいじめ(本人は気付いていなかった)も含めて畑で力仕事しかしてなかったんだったなぁ。



 とにかく初日は用意してもらった刃を潰した剣の素振りだけでいくと言ってた。まずはついて行くしかない。この後は本来の片手に戻して、盾での受け流し方をするらしい。まずは武器を持つことに慣れて、その後は攻撃を食らわない技術を叩き込むそうだ。

 美李ちゃんは槌だが、初めは皆と一緒であとから槌を扱える騎士を連れてきて教えてくれるそうだ。美李ちゃんの筋力なら片手でも槌を扱えそうだが、本来は両手持ちだから盾は篭手に固定の方がいいのかなぁ?バックラーだからそういった使い方は出来るかな?


 と、訓練を初めてすぐはそんな事を考える余裕があったのだが、



(器用さの数値はあっても体力がついていかない!理想は分かっても身体が動かない!)



 しばらくして休憩になったが、声も出せないほど呼吸が乱れてそのまま倒れこんでしまった。なんとか横に首を向けると、飲み物を用意する姉妹が見えた。


(こんなに差があるのかぁ。保護者的立場である俺が一番弱いんじゃないか…)


 後半も素振りの続きだが、姉妹はそれぞれの武器にしての素振りして手に馴染ませていくそうだ。俺はまだ振る姿勢が安定するまではこのままいくわけで。疲れて武器に流されながら振っては叱られ。

 細かい繰り返し作業なら得意なんだが、それで上がったDEXも応用出来なきゃ持ち腐れになってしまう。やっぱりステータスだけ高けりゃ強いってのは間違いだったと気付けただけでも今日はいい収穫だ。素振りが上手くいかない言い訳じゃないよ?




 夕方になって姉妹がお風呂に行ってる間に源さんに呼ばれて席に着く。やっぱ俺だけ訓練が遅れてるから座学みたいなことするのかな?と思いつつ引き締めていると、訓練の時と違った真剣味を帯びた目で話し始めた。


「実はの、今の城内はお前さん達が考えている以上に危うい均衡を保っておる。話は聞いたと思うんじゃが、騎士団の立場は第一王女の勢力によってかなり削がれ、逆に勇者を団長に置いた親衛隊は正義の行いだと言う事を聞かん者には魔族と繋がりがあるなどと理由付けしては連行しようとする……

 第三王女と第一王子がなんとか凌いでくれてはおるが、第一王女は侍女のトニア殿を標的にしようとしての、闇討ちを仕掛けてくる事が多いらしい。これはトニア殿の方が腕が上ですべて返り討ちにしとるそうじゃ。

 おかげで親衛隊の勢力を下げてもらっとるが、亜人嫌いの第一王女にはよほど我慢がならぬ様子でのぉ。下手をしたら勇者を嗾けん勢いなんじゃよ。トニア殿なら負ける事はないが、相手が勇者とあっては傷付けたとあれば問題じゃ。

 トニア殿を城から出せば一時凌げるじゃろうが、そうなると第三王女であるノーザリス姫様の護衛が務まる者がおらん。そこでなんじゃが……」



 あ。なんか分かっちゃった。これ面倒臭いやつだ。いや、恩は返したいけど!



「しばらくノーザリス姫様とトニア殿を匿って欲しいのじゃ。城を不在にする理由は第一王子より”素性の知れぬ闇討ちが多く危険なため”として国王に許可を取ってある。

 明日は朝から城を出て、昼過ぎまでわざと色々寄り道をしてからここに来るつもりじゃ。朝にはニング卿からベッドその他が大した量ではないが届くでの、受け取って欲しいんじゃよ」


 ……すでに決定してました。

まぁしょうがない。色々尽くしてもらってる恩を返せる機会ということだな!


「分かりました。そうなると……部屋は遠藤姉妹と同じにしていいですかね?部屋数はもう一杯ですし、男である自分のそばというのも外聞が悪いですし。ちょっと4人では狭いかもしれませんが、なるべく荷物は屋根裏部屋を利用してもらえば大丈夫かと」


「うむ。引き受けてくれて感謝するぞ!それと、トニア殿もおるし分かっておるとは思うが……

決して手を出すんじゃないぞ?さすがにワシも庇いきれんからの?」



 さすがにそんな恐ろしい事出来るわけないでしょ?王国の姫様どころか他にも手を出してないんだからね?夜遊びだってしてないよ!?


 ……うん、決して足が無くて行けないってわけじゃないから!




 次は源さんと一緒に鍛えてくれた従士さんを順に風呂に送り俺は最後に入る。一応晩御飯の下ごしらえくらいは済ませて、後は沙里ちゃん達にお願いして急いで風呂に入った。俺が遅いと晩御飯も遅くなるから仕方なく早風呂だ。

 食後のお茶をしたあとに源さん達は帰って行った。そして先程言われた事を2人にも伝えるために、お互い疲れてはいるが残ってもらった。



「――と、言うわけで明日から姫様達が来ます。しばらくこの家で暮らすらしいので、申し訳ないけど、2階の部屋にベッド等運んで4人でって事になっちゃうんだ。

 さすがに俺の部屋に来てもらうのも作業場をすぐ改装するわけにもいかなくてね。一応すぐに使わない荷物を屋根裏部屋に入れてもらって、それでもどうしても狭いようなら、作業場の一角を区切って俺がそっちに行って、姫様には俺の部屋を使ってもらうから、そこは遠慮なく言って欲しい」


「お姫様とトニアさんと一緒に暮らせるの!?あたしはいっしょの部屋がいいです!」


 おおう。美李ちゃんが元気良く手をあげた。ていうか、最近美李ちゃん会話が減ってきてる気がするからか、こんなにテンション上がる姿は久々じゃないか?少し困ったような安心したかのような。この話は沙里ちゃんも賛成で、


「正直信頼できる人が側に増えるので心強いので、是非一緒の部屋がいいです。あ、でも姫様の方がそれでよければ、ですが」


「うん。姫様達はここの家の構造を知ってるから、よければ2階で一緒にと言っていたそうだよ。明日の午後には来るらしいから、明日は製造が終わったら片付けしないとかな?2階は任せるから、俺は屋根裏部屋を片付けるね」



 話がまとまったところで「わー!」と部屋に走っていく美李ちゃんに階段気を付けるよう声をかけた沙里ちゃんをそっと呼び止める。


「あのさ、見間違いかもしれないけど、最近美李ちゃん元気がない気がするんだけど。今は姫様の話で元気に見えるけど、よく考えたら前はいつもあのテンションだったよね?」

 

「……はい。内緒にしてましたが、最近は両親に会えない事でたまに夜泣きをするんです。黙っていてすみません。余計な心配をかけたくなくて言えずにいました」



 考えてみたら、小学生がいきなり知らない所に飛ばされ、命の危険があると脅され、一生懸命働いている。むしろ今までよくやってきた方だろう。沙里ちゃんだって本当は寂しいし不安も大きいのかもしれない。


「そうだよね、沙里ちゃん達学生の気持ちに気付いてあげられなくてごめんね。うちは親なんてーってのがあったから気にしてなかったからなぁ。大人のくせに鈍いのはもうバレちゃってると思うし、出来れば溜め込まないで言ってもらえると助かるから、改めてよろしく頼むね!」


「ヒバリさんは結婚されてなかったんですよね?でしたら家庭を考えるのは難しいですから仕方ないですよ。わたしもなるべく言うようにしますから、お互い頑張りましょうね」



 おっと、ちょっと結婚経験無い事が分かってる上にぐさっときたぞー。

とはいえそんなことはさすがに言えないから笑うしかないがな!一応学生の時に彼女いたことあるんだからな!


 きょとんとした顔でこちらを見てる沙里になんとかバレずに済んだ事にほっとするやら、さっそく言えてないことにもやっとするやら。ごまかすように、


「沙里ちゃんも俺相手なら敬語じゃなくていいからね?毎日堅苦しくしてても疲れちゃうからさ、慣れたらでいいからやってみてね!」


「えっと…すぐには無理だと思いますけど、努力します…」


 ちょっと照れつつ、美李ちゃんに呼ばれたのをこれ幸いとおやすみの挨拶をして2階へと上がっていった。うむ、可愛いものを見た。俺も早く寝よう。





 明日は製造と姫様の出迎えと修行と忙しいんだろうなぁと考えつつベッドに横になり、そしてすぐに意識を手放したのだった。



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