表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第2章 従業員、増えました
11/156

順調な販売と袋の検証

第2章開始です。よろしくお願いします。

「ひいいいいいいいぃ!忙しいいいいいいいいいいいぃ!!!」



 ここ”ヒバリ食品加工所”(借り物の作業小屋)からは家主の叫び声が響く。



「ほんとどうしてこうなった!?もう社畜マシーンにだけはならないと誓ったはずなのに!誓ったはずなのにッ!」







 無事に製品を売り出し始めて5日目。今日の売上は、


猪バーグのタネ 47袋 7050G

ワニつくねタネ 68袋 6800G

売上合計 13850ゴールド也(俺個人利益 5580ゴールド


 と、なっている。これは取引先が約2倍の12件&発注量の増加が要因である。



 そしてなにより、俺の見込み限界である2倍の製造量を上回って3倍の発注が来てしまっていた。嬉しい悲鳴といえばそうなんだが、まだ5日でどうなってんだ!?おかげさまでもう純利益貯金が金貨16枚超えちゃったよやったね!(血涙


 あまりに増えた受注に、これ以上の増加は少し厳しいと旦那様に泣きを入れ、納品もあちらの配達員がうちに取りに来るようになった。今の所少し遅れるかどうかで作り上げてはいるので、なんとか回ってはいるのだ。



 今日も無事に納品でき、代わりに受け取った発注した食材と売上金を片付け、やっと作業器具の片付けを始めた。最近は昼食もこの片付けをしながら余ったタネでハンバーガーを作って食べている。


「こういう時はファストフード形は楽だなぁ。しかしこれはいよいよどうにかしないと…」




 片付けが終わる前には、すでに姫様の馬車が到着していた。ここ2日ほど忙しくて午後の修練に食い込んでしまい、片付けを手伝ってもらっている。これはほんと申し訳ない。ただのこっちの都合で付き合せちゃってるんだから、あとで何かお礼を考えないといかんなぁ。


 無事片付けが終わった後、今日も魔法の練習に励む姉妹。そして俺は自分のMPを半分消費することすら儘ならない総量に唸っていた。だって4000あるMPの半分って2000でしょ?袋2000枚もいらないよ。ただでさえ今までの在庫だってほとんど減ってないし!


 いつもの袋を500作り少し闇魔法の練習をしたが1000も減っていなかった。


「うーん……これ以上の使い方かぁ。あとはでかい袋か、厚い袋を作るか……


 そうか!まだ初めての頃に分厚い袋にチャレンジしてぶっ倒れたが、今なら目一杯厚いの出来るじゃん!袋として機能するか分からないけど、やってみる価値はあるな!」



 厚さは、まずは5mmでいこうか。さらに繰り返し有りの時間経過無しで大きさは1m四方。ここまでで25P消費予定。更になるべく魔力を消費するように意識していると、過剰分が表示されるようになった。



(なんだこれ…?25+1,2,3,4…どんどん増やせるのか?まずは25+25Pの50Pで作ろう)



 決定するといつもの淡い光が手から出て、袋が出来上がる。確かに分厚いが、追加のMPがどうなったか分からないな。ちょっと鑑定してみるか。



魔力袋

作成者:木沼 雲雀

時間経過 無し

開閉使用者 本人のみ

繰り返し設定 有り

魔力蓄積量

25P



 なんか知らない項目がある……で、詳しい情報はっと、


魔力蓄積量

 魔法に関してのみ、蓄積された魔力分の魔法を破れず防ぐ事ができる

 ただし、魔法によって飛ばされた物(石や木)等魔力を帯びていないものは防げない。

 (例えば、魔法で出来た炎・水・毒・氷等にも有効。 



 …え?厚さで物理的な防御が可能なだけじゃなかったの!?魔法で作ったから魔力を無効化、か?ちょっとよく分からないな。実験するしかないか。確か以前魔石コンロに当てちゃった時は煙や有毒ガスは出なかったけどすぐに穴が開いちゃって袋が消えちゃったんだよな。あれがMP1も蓄積されてないやつだったからなのか、そこからだな。


 まずは袋を用意しよう。蓄積MP1・蓄積MP3・蓄積MP10、そしてさっきの25Pか。魔法を当てやすいように全部1m四方の大きさにしたから、こいつでちょっと確認だ。


「おーい沙里ちゃ…沙里さーん!まだMPに余裕があったら手伝って欲しいんだけど、いいかな?」


「この間も思いましたが、ヒバリさんが呼びやすい方でいいですよ。それで、なんでしょう?」


 いつもちゃん付けでいいのか迷ったり無意識だったりで統一感なかったんだけど、本人から許可貰えたのならちゃん付けでいっか。


「ん。じゃあ沙里ちゃんで。えっとね、この袋どうやら作る時に魔力を蓄えさせると、魔力で出来たもの、つまり魔法に耐性が出来るらしいんだ。蓄えさせた魔力以下の魔法なら、っていう条件付きだけどね」


 近くで聞いていた3人も寄ってきて、俺の話を聞き始めた。



「で、本当にそれが可能なのか、沙里ちゃんの火魔法で試してみたいなーって。MPに余裕はあるかな?鑑定で確認して欲しかったらするけど」


「はい、だいじょうぶです。そういうことでしたら協力させてください」



 姫様とトニアさんは用意した袋をいじりながら、そんな事が可能なのか半信半疑のようだ。まぁこんな反対側も丸見えの透明な薄いビニールが、って誰もが思うよね。俺だってそうだもん。


「でしたら、ミリ様には水魔法の準備をしていただきましょう。もし延焼などしたら大変ですからね。それとトニアは風魔法を使えますから、周りの風は防いで起きましょう」


「かしこまりました」


 おっと、火事や延焼のことまで頭が回らなかった。これ忘れてたら大惨事だったかもだ…


「姫様もトニアさんもありがとうございます。美李ちゃんも、フォローよろしくね!」



 まずは蓄積MP1の袋を転がっていた板を立ててそこに掛けて離れる。


「これは蓄積MP1の袋だから、MP1を使った火でおねがいね!はい、どうぞ!」


「いきます!」


 ボッという音と共に指先から火の玉を出して袋へと飛ばす。着弾した瞬間袋はメラメラと燃え広がり、あっという間に無くなる。しかし、立てかけてあった板の方はまったく焦げ後もなかった。


「凄いですね…袋だけが燃え、まったく後ろに通してません。普通ならありえません」


板を見つめて語る姫様にトニアさんも頷いていた。



「じゃあ次は蓄積MP3の袋に、同じMP1の火をおねがい!じゃあ、いいよー!」


 同じ大きさの火の玉をまた袋に撃ち込む。今度は袋に当たってから少し広がった火の玉がそのままスッと消えてしまった。袋の蓄積MPを確認すると、1減っている事が分かった。


「すごーい!全然もえてない!」


「さっきと見た目は変わらない袋なのに、なんともないんですね…」


 駆け寄って袋を突く美李ちゃんと、さっきと違う結果に驚く沙里ちゃん。


「えっとね、結果はちょっと想像と違った。蓄積MP3の袋に撃ち込んでもらったら、確かに防いだけど蓄積MPが2に下がってるんだ。防いだMP分の蓄積を消費するみたいだね」


「…なるほど。つまりあとMP2分の魔法を当てると、あの袋は消滅してしまわれるということですね?ヒバリ様」


 そして予想どおり同じ火の玉を2発沙里ちゃんに撃ってもらったらあっさりと消滅した。もちろん後ろの板は焦げても熱くもない。同じ結果を受けて、今度はトニアさんと美李ちゃんが魔法を当てたいと言い出した。トニアさんの主張は珍しいのですぐに実行してもらおう!



 次は蓄積MP10の袋を掛けて、そこにトニアさんのウィンドカッターをお願いする。初めにMP5で、次にMP3で撃ってもらい防いだのを確認し、最後はあえてMP3で撃ってもらった。

 

 結果はもちろん板ごとばっさり!気持ちいいくらい綺麗に斬れたなぁ。


「やはり蓄積MP分を超えると後ろに通してしまいましたね。しかし、MP2分の威力を防ぎ、残りのMP1分だけが板に当たったようです。軽減させるだけでも凄い事だと思います」


 トニアさんの分析に頷き返した。それは確かに面白い。蓄積MPの残りが少なくなったものを重ねて盾にしたら、合計値の魔法は防げるってことだもんな。計算めんどくさいけど。



 ドスン!と音が聞こえて振り向けば、美李ちゃんが板を立てていた。美李ちゃん…?キミ今素手の一発刺しで板を立てませんでしたか……?


「さー!つぎはあたしのばんだよー!どかんとやっちゃうよー!」


 促されるまま最後の厚さ5mm・蓄積MP25の袋を板に掛けて、美李ちゃんに声をかける。


「これは蓄積MP25の袋だから、まずは水魔法のMP10くらいでやってみよう!」


「いっくよー!せーの!」


 水鉄砲を撃つように構えて、そこから高圧洗浄機のような水が一瞬にして袋へと飛んでいく。周りに水を跳ね飛ばしながら、袋は無事だった。残りは15P。


「次は石でいっちゃうよー!どーん!」


 同じポーズで今度は野球ポール大の石がピッチングマシーンのようにズバンと飛んでいった。結果はボスンとも言えない様な軽い音を立てて石が崩れながら下に落ちていった。



 ……沙里ちゃんの魔法は火と風だから凄いのは想像ついたけど、美李ちゃんの魔法だって十分凶悪じゃないか!隠れるだけの俺の闇魔法ってほんともう、


「じゃあもう1発いっくよー!どーん!」


 ちょっと考え事をしていたら、美李ちゃんがおそらく同じ威力で撃ってしまっていた。残りの蓄積MP5だったはず!案の定袋を突き破って、後ろの板も軽々と粉砕し、その先にある樹木まで行っちゃう!


「やばっ…!」


 と声を出す事が精一杯だったが、石はその手前で削られるようにぼろぼろになって消えていった。

なんだ?木も俺達にも被害なしか?いったいなにが…



「私が風魔法で周りを囲んでおりましたので。これぐらいの事でしたら想定内でございます」


 当たり前だと言わんばかりにトニアさんが涼しげに答えてくれた。よく見ると姫様も焦ってなかったのか。驚いたのは俺達3人だけ。これは経験の差も大きいんだろうな。



「美李!ちゃんと確認してから魔法を使わないと危ないでしょ!怪我をしたらどうするの!」


「う……おねえちゃんごめんなさぁい…」


「わたしだけじゃなく皆に謝りなさい。出来るわよね?」


「うん。あぶないことしてごめんなさい……」


 もう今にも泣きそうな美李ちゃん、しっかりとお姉さんとして言う事は言っておく沙里ちゃん。姫様やトニアさんは次から気をつければいい、と謝罪を受け入れていた。


「今回のは、実験最中にぼーっとしちゃってた俺も悪かった。ごめんなさい。だから、これからはお互い気をつけて魔法を使っていこうね?」


「……うん」


 そのまま沙里ちゃんのところに駆け込んで、抱き上げられたまま家に入っていった。ちょっと休んだ方がいいから、ここはそっとしておこう。




「えーっと。まずはトニアさん、ありがとうございました。それと実験結果は以上になります。思ったより面白い事になりそうなので、あとで応用とか話が出来たらと思います。」


 例えば、LV2の力で鞄に付与する時蓄積出来るのか、付与+蓄積が出来たら同じように防げるのか、蓄積MPが尽きたら中のものはどうなってしまうのか。この辺りもあとで実験したいところであるが、今日はもうやめておこう。


 今夜の晩御飯は美李ちゃんの好きなものでいい、と言ったらオムレツと牛豚のハンバーグのリクエストを貰ったので、沙里ちゃんと分担で作って2人で食べさせてあげたらやっと上機嫌になってくれた。この子には悲しそうな顔よりムードメーカーである笑顔の方がいいよね!


 とりとめなく話しているついでに、1人用の浴槽は普通に売ってないのかな?ということを姫様に聞いたら、庶民で風呂はやっぱり厳しいらしい。鍛冶師に依頼すれば作れるらしい。価格はそれなりの武器と一緒の金貨4枚辺りではないか、とトニアさん。


「あたしもおふろはいりたいです!お湯にはいりたいです!」


「わたしもたまにでいいので入りたいですね。ずっとお湯とタオルで拭くだけではさすがに…」


 当たり前のように毎日風呂やシャワーを使っていた俺達としたら、そろそろ我慢しきれなかった思いは一緒だったようだ。李美ちゃんは元気一杯手を上げたままだし。ここはお兄さん頑張っちゃおうか!


「ではランブさんにお願いして作ってもらいますか。最近の売上でかなり金銭の余裕が出来ましたからね!体の方はちょっと疲れてますが、これも嬉しい悲鳴ということで」




 そこからはどんな浴槽がいいか賑やかな討論が繰り広げられた。そして明日ランブさんの所へ伺うという話にまとまって、今日はここまでと皆を見送ってから明日の準備や実験用の袋作成、小物入れへの魔力蓄積+袋付与を行い、体を拭いて一息入れていた。


「ふう……この小物入れに蓄積魔力の防御が効くか、壊れたらどうなるか、ちょっと楽しみだな。あとはランブさんへの図面どうしよっかなぁ…」





ドンドンドンッ!


「夜遅くにごめんなさい。ヒバリさん、今夜こちらに泊めていただけませんか……?」



 慌てて入り口の扉を開けると、そこには寮に帰ったはずの沙里ちゃんが、大量の荷物を抱えて泣きそうな顔をして立っていた。



売上1桁間違っていたので修正します……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ