翼をもらったツキ。 第8話
そして、物語は急展開!
この小説は、ブルガリア民話をもとにしたすこしふしぎ小説です。
【二次創作】【重複投稿】
第8話
「月に帰りたい!?」
「ハイ………。」
ルナは利のアパートで、正座をし、
泣きそうな顔をしながら上目遣いで利を見ている。
「それはあれだろ、」利は腕を組んで胡坐をかいて
言った。
「ルナが月からやって来たって、俺たちの
コントの中の設定だろ」
「それはキャラなんかじゃありません!
……本当にガチンコに私は月の住人
だったのです。」
ルナは静かに語りだした。
私はアパート隣の大橋 由宇一さんの
お兄様が、生涯最後に制作された、メイドの
お人形です。
由宇一さんのお兄様、優さんは、
新人のころから人形職人たちから
注目されていた、天才作家でした。
私を作ったとき、まだメイドフィギュアは業界で
認知されていませんでしたが、生涯の終わりに優さんが
私を作ると、周囲は騒然とし、人形作家界の有識者が
「これからは、この人形をきっかけとして、日本の
サブカルチャーが世界に受け入れられるだろう」と
発言したほど、絶賛されたのです。
優さんは、亡くなるまで私を手放さず、
大事にしてくださいました。
持ち主に心から愛された人形には魂が宿り、
その魂は月に昇るという伝説があります。
私もその一人です。
私は月へ行き、月を回し、太陽から分けていただいた
光を地上に届ける役目を、先代から受け継ぎました。
「……私は地上に下りるとき、月の住人達に
月の光を届ける方法を引き継ぎしてここに来ました。
でも、やっぱり私がいないと月は昇らないのです。
ご主人様!私を月へ帰してください!
お願いです!!」
「オネガイシマス、だと!!」
利は苛立ちを抑えきれずに立上がった。
「だったら、最初から人間になってこっちに
来なければよかっただろう!?」
「でも、私はご主人様の力になり…」
「力もニボシもねぇよ!」
利は隣近所のことなど、まるで考えず
ありったけの大声で怒鳴った。
「明日の営業どうするんだよ!」
「お前らが勝手な行動することによって
俺がどんなにつらい思いしているかわかってるのか?!!
色んな人にペコペコ頭下げてお詫びして!
お前ら、
青梅もお前もどいつもこいつも、
俺のことまるで何も考えてねえじゃねえか!
どうせ俺は型にはまったネタしか書けない
つまんない男だよ、
でも!
俺は俺なりにお前らのネタが最大限に活きるよう、
必死こいて突っ込んできた!!
そんな奴弄んでなにが楽しいんだ!」
「…そうだよ」利はルナが握っていた大きな羽箒の
羽の部分を鷲掴みにした。
「このホウキで、毎晩毎晩人形に戻っちまうしよ!!」
「返して!」
ルナが全力で羽箒にしがみつく。
「これがないと月へ帰れないの!!」
ルナが柄をしっかり握って取り返そうとするが、
成人男子の力に及ばない。しかし、
ルナは華奢な両腕からは考えられない力で
取り戻そうとした。
羽箒の取り合いがしばらく続いた。
必死にしがみつくルナを振り払おうとしたそのとき、
羽箒が、ぼきり、とくの字に折れてしまった。
「!」
と、同時に、ルナが倒れ、意識を失ってしまった。
ぴくりとも動かない。
「おいっ、ルナ!? ルナーーー!!」
(続く)