翼をもらったツキ。第13話
物語はいよいよクライマックス!
この小説は、ブルガリア民話をもとにしたすこしふしぎ小説です。
【重複投稿】【二次創作】
第13話
「直径17.5mm…これも、これも?!」
大橋の自宅。
大橋は、利が持ってきた涙の真珠に、
真珠以上に目を丸くした。
「どぉーだ、大橋!この真珠達を売ったら200万円には
なるだろう」
「市蔵ちゃん、悪い事は言わんから持ち主に返してやれって、
偸盗はよくないよ?」
「盗んじゃいないさ、これは俺が自分の力で手にしたものなんだ。
な、青梅?」
青梅は亀のような目で、傍らで沈黙している。
「……………。」
「わかったよ、俺の負けだ。」大橋は膨れ上がった
名刺ケースを物色し始めた。
「ここへいけば、ルナの羽箒の柄を作ってもらえるだろう」
名刺には、埼玉の住所と、『有限会社 チレリイ』
『ホーキ・モップならおまかせ!専門店』と書かれている。
―
『有限会社 チレリイ』に向かった『市蔵』の二人。
そこに待っていたのは意外な人物だった。
「サヤトさん?!」
「来たな、お騒がせコンビ!今回の騒ぎで『夏目式』とかにも
支障きたしているんだぞ」
ふたりは、素早く頭を下げる。
「この度は、どうもすみませんでした!」
「ご、ごめんなさい、サヤトさん。」
「うむ、説教はあとだ。…でだ。ルナちゃんの恰好、
どこかで見たなと思ったんだけど、優の作品だったんだな」
サヤトと大橋の兄は知り合いだったのか?
びっくりしている利に、青梅が小声で解説する。
「サヤトさんと大橋 優さんは子役のころ、キッズアートグループの
メンバーとして活動していたんだよ、『南極スケッチ』。」
「あれ、関東ローカルだったからな。かがっちは知らないか」
サヤトは作業着の袖で汗をぬぐいながら言った。
「そう、ルナの羽箒、チレリイ的に言えば羽ブラシは、
優に頼まれて俺が作ったものだ、俺はこの工場の長男だからな。
今回は人間サイズだけど、すぐに作ってやるよ」
こうしてルナの新しい羽箒は、完成したのである。
―
利と青梅、そしてルナは、いつもの『ネタ合わせ公園』に来た。
「ご主人様、いよいよお別れの時が来ました。」
ルナは、羽箒を天にかざした。
次第に羽箒、そしてルナの身体がまぶしく光りだす。
蔓状の光の帯が、ルナのメイドさんドレスを豪華にしていく。
おそらく、それが月でのルナの装束なのだろう。
利は、ルナは急に遠くの存在になった気がした。
「元気でな、ルナ」
ルナは少し瞼を伏せ、決意し利に言った。
「ご主人様!…あの、もしよかったら、私と月へ昇って、
お笑いコンビ続けませんか?」
ルナの周りに光の粒子が飛び交っているのだが、
その時だけ光の軌道が、ほんの少し乱れた。
利は「ありがとなルナ。でも」といい、こう続けた。
「俺とルナじゃ、実力差がありすぎでないかい。
俺は地球で頑張るさ」
ルナは柔らかい笑みを浮かべてこう言った。
「相方に二回も逃げられて、仕事すっぽかした芸人に、
明日の営業はもう来ませんよ?」
利は少し笑った後、こう言った。
「…気持ちはありがたいが、俺は青梅がほっとけない」
「ご主人様……」
「利君…」
ルナの靴が地面を離れ、宙に浮く。
ルナがどんどん真っ暗な空へ向かいだし、
二人のもとを離れていく。
「お世話になりました!さようなら!ご主人様、青梅さん!」
「ルナ!お前のことは一生忘れない!」
「ルナちゃん!元気でねー!」
ルナの姿は次第に豆粒のように小さくなり、
少し経った後、東京の空に再び優しい月が光りだした。
月の光を浴び、二人は安堵した。
これで、いいんだと。
「利君、ルナちゃん、帰っちゃったね」
「そうだな。行っちまったな」
少し余韻に浸った後。
「僕たち…これからどうしようか?」
青梅が、いつもの能天気な声で問いかける。
そうだな、とりあえず関係者全員に、土下座して回るか。
(おわり)
この小説は1998~2002年ごろに書いた自作漫画を大幅に加筆修正したものです。
商業向けとか肩肘張らず、あくまでプロの作品を十倍楽しむための実験作品でした。
創作は楽しいです。
次回作の励みになりますので、お気づきの点、ここがよかったとか感想があればよろしくお願いします。




