翼をもらったツキ。 第12話
一巻の終わり、か?!
この小説は、ブルガリア民話をもとにしたすこしふしぎ小説です。
【重複投稿】【二次創作】
第12話
利の「自分を落着かせるスポット」は、近所の公園だ。
子供が興奮して遊びだす遊具が置かれていて、子供が帰宅した
夕方以降、『市蔵』のふたりが漫才やコントのネタ合わせをする所。
蛇足ながら、現在この公園は、危険性を指摘された遊具は撤去され、
漫才のネタ合わせをすることは禁止となっている。
利は滑り台のスロープで、斜めに寝っ転がっていた。
だんだん日の光が消え、夜のネオンが台頭してくる。
「あの野郎…一発殴ってやればよかった!」
頭をぼりぼり掻きながら独り言を言う。
しかし、その瞬間、大橋の勝ち誇ったようなにやけ顔
が脳内に浮かび上がる。
「いや…殴らないほうが良かった。」
「誰を殴らないほうが良かったの?」
「!…お前」
いきなり拍手の音が響く。
『どうもこんにちはー、いっちぞーでっす!
よろしくお願いしまーす。
…いやね、利君。男はときに、あてのない旅に出たくならない?』
『青梅君、いきなりどうした?』
『男一人旅って、かっこいいでしょうー、
男はあえて荷物は持たないんだよ。』
『なかなか、恰好いいじゃないですか』
『左手には百均で買った鍋敷き、
右手には「うる星やつら」8巻、
それだけあれば…』
『おいおい、ちょっと待ちなさいって』
言いながら、利のこわばっていた顔がほころんだ。
「……青梅、お前それ、俺らが最初に社長に披露したネタだべや!」
「超懐かしいね!もうこの時点で社長、どっかへ行って
いなかったしね」
「しかも、お前、本当にあてのない旅に出やがったしな。
洒落になんねーよ、なまら腹立つ」
ごめんごめん、青梅が手を合わせて謝った。
しばらく、二人で笑っていた。
久しぶりのことだった。
やっと、魂が休まった気がする。
青梅は昔からこういうところがある。
ひとがうだうだ悩んでいるところを、関係のない話題で
その緊張から解き放つのだ。
「いやー利君、綺麗な灯りだねえ」
青梅の話は、また別の星へ移動してしまった。
「なんの灯り?」
「家の灯りだよ。様々な事情を抱えた人たちが、
今日も様々な色の灯りをつけて、
『今日も生きてるぞー!!』
『明日もこの灯りをともすぞー!!』
…って自己の存在を証明しているってゆうかさ。
そんな感じ、しない?」
「いや、この中には、一つ大切なものが足りない。」
「?」青梅が三白眼をまるくして驚く。
「この中で最も高く、優しく、全ての生き物を包み込むような
やわらかい光が……」
利の両の眼から涙がこぼれていた。
澄んだしずくだった。利は傍にいる相方にお構いなしで
ボロボロ涙を流した。
涙は頬を伝い、その瞬間!
涙は、次々と大粒の真珠に姿を変えたのだった。
(続く)




