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stay...  作者: LINLIN
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1.会議室

初投稿作品です。

稚拙な部分もあると思いますが、ご容赦ください。

連載ものなので、少しずつアップしていきたいと思います。

はっきりとではありませんが、性的描写がありますのでR15指定です。

ご感想いただけるとありがたいです。お願いします。

目が覚める。

果てしなく盲ろうとする意識と格闘してベッドから起き上がる。

隣りでは私が起きたのに気付かないのか、まだスヤスヤと寝息を立てている人がいる。

恋人?

ではない。

どちらかと言うと兄妹に近いかもしれない。

お互いに辛く苦しい事があるとぴったり寄り添って苦しみを分かち合う。

ただそれだけ。

いつからこんな関係になったのか。

最初は私の恋人の友人。

そして何時の間にか恋人の代わりになった。

最初は体の関係もあったが、今ではそんな事も無く、只々抱き締め合って眠る。

「家族のような大切な人」が一番しっくり合う気がする。

こんな日がいつまでも続くわけないと分かっていても、何と無くお互いにお互いを求めてしまう。

この何と無くがもう3年も続いているのだ。

何と無くが終わりを告げる時が近い事を、私も彼もこの時はまだ予期していなかった。

ある一人の男によって、自分の生活や気持ちが劇的に変化してしまう事など、全く考えていなかった。






1.会議室


「それでは、企画会議を始めます。」

やっと始まった。

今日私はこの時間だけを楽しみに出社したのだ。

私は名取 梨香、25才。

このデザイン会社へ就職して早2年とちょっと。

やっと自分の仕事にも慣れて楽しく仕事が出来るようになった。

もうすぐ、新人研修を終えた新入社員が配属されてくる。

今年、先輩として初めて教育係を任されることになり、どんな新人が来るのか少し楽しみにしているのだ。

とは言うものの、この会議に参加している以上は議題である企画について考えなくてはいけない。

少し頭をコツコツと叩いて邪念を追い払う。

私が企画会議に参加するのはこれで2回目。

初めて参加したのは去年の10月頃だった。

初めての会議でドキドキしながら先輩に連れられて、この部屋に入ったっけ。

ふと、思い出してまたいかん、いかん。

と少し態勢を変えた。

集中しなきゃ。

ふとホワイトボードを見ると、何時の間にか話しは進みこの企画の主旨説明に入ろうとしていた。

「それでは企画の主旨を企画部チーフの天宮君、よろしく。」

司会進行の企画部部長に指示されて、会議室の全員がその「天宮」という男に注目する。

私もその彼を見つめていた。

天宮 紘斗。

彼の名をこの会社で知らない人はいない。

史上最年少で企画部チーフの座に昇り詰めるほど仕事が出来る上に、容姿端麗と来たら、もう誰も彼を放っておく人などいないだろう。

身長は悠に180センチ以上はあるし、肩や胸板辺りの筋肉も凄いだろうなぁ。

っと。

これは単に自分が美大でデッサンしていた時の観察グセなんだけどね。

まぁ、デザイン部の私は遠目からしか見たことは無いが、女子社員の約99パーセントは彼のファンだと思う。

残り1パーセントは私と私の親友で社長狙いの美人秘書ってとこかな。


まぁ顔はいいけど、私はどちらかと言うと...

チラッとその人物に視線を向ける。

身長は天宮さんに負けないくらいある。

顔は人懐っこそうで、口も調子いい奴だけど、根は真面目。

話も聞き上手だしね。

同期入社の橘 拓海だ。

彼もまた企画部に所属していて、「天宮2世」なんて呼ばれているが、本人はどうも気に入らないらしく、たまに愚痴をこぼす。

まぁ2世なんて呼ばれたくない気持ちは分かるけどね。

そりゃ顔が好くて、仕事出来ると来れば2世って呼ぶ人もいるよね。

あ、また話聞きそびれてる。

慌てて資料に目を通す。

今回私がこの会議に出席したのは、デザイナーとしてこの企画に参加するからである。

前回は先輩がデザイナーで、私は勉強がてらの見学者だった。

今日は気楽にって訳にもいかない。

私はパラパラと資料を捲った。

今回の企画は女性向けの化粧品パッケージで年齢層はと...

ん?

年齢層の記述が資料に一切載っていない。

重要なのに...

この資料誰が作ったんだろう?

天宮さんならこんな簡単なミスしないはずだし。

そのままパラパラと資料を捲り裏記載を見た。

企画担当に天宮さんの名前...

資料作成に橘 拓海と書いてある。

...

天宮さん、拓海に勉強させるためにわざと資料直させなかったな?

仕方無いな...

「...以上がこの企画の主旨です。続いて、皆さんの質問や意見を伺いたいのですが、どなたかありますでしょうか?」

いつもはクールな天宮さんなのに、もうこれでもかってぐらい一生懸命な笑顔になっている。

きっと企画部長に圧されたな。

それにしても笑い方を知らないなんてどんな人よ。

少し拓海を見習うとかさ。

...でもあそこまで行くとクール好きには痛いか。

ちょっと吹き出しそうになりながら、これまたいかんと、自分の太腿を抓った。

そして年齢層を聞くべく挙手をした。


天宮さんの視線が私に向けられる。

うわっ、まつげ長いなぁ...

デッサンモデルやってくれないかな...

全然違うこと考えてる自分の顔が複雑な表情だったのか、私と天宮さんの距離が近かったからなのか。

彼がフっと吹き出しそうになりながら、息を整えたのを私は聞き逃さなかった。

んっと声にならないように咳払いをして、

「では、お願いします。」

天宮さんが私を指した。

...なんだ。

笑えるんじゃない。

勿体無いな。

私は破顔しそうになる思いを抑えて、椅子から立ち上がった。

「デザイン部の名取です。先程説明いただいた資料で、ひとつ補足していただきたい点が...」

そう切り出すと、拓海が「あっ...」と声をあげそうになる。

でもそんな様子を天宮さんが目で制すように拓海を見やった。

私は話が途切れないように続けた。

「女性向け化粧品のパッケージとのことですが、企画をする上でターゲットの年齢層の把握は必須だと思います。女性は特に年齢によって好みが異なることが多いです。年齢層についての説明をお願いします。」

発言を終えて、ふと拓海を見ると顔に「やっちゃった」と書いてあるような複雑な顔をしていた。

ちょっと可哀相だけど...

「年齢層については先方からの指示で20代後半向けでとありました。資料に至らない点が有り、申し訳ありません。」

拓海の代わりに天宮さんが頭を下げて説明した。

なんか、私が申し訳なく思えてきてしまったわ。

「ありがとうございます。」

申し訳無さを隠す為に、わざととびっきりの笑顔で返した。

後で拓海にはフォロー入れなきゃかな...

その後は淡々と会議は進行して、司会が終わりの挨拶をした。

「...続いて担当者は顔合わせを行うので、第3会議室に移動お願いします。」

顔合わせまでやるのか...

フゥっと息を吐いて席を立ち、部屋を出ようとする人の波に乗ろうとした時拓海に声を掛けられた。


「梨香」

少し落ちた顔をしている。

まるで御主人様に叱られた犬みたいにしょげている。

「さっき、サンキューな。指摘されたのが梨香でよかったわ。」

私でよかったなんて言われてドキッとした。

少し照れくさいのを隠す為に、肩下まであるセミロングの髪を少し耳に掛けた。

「どういたしまして。...なんて変ね。まあ、失敗は成功の素よ。大丈夫。ねっ?」

そう笑いかけると拓海もホッとしたのか、ははっと笑った。

「やっぱ、梨香には敵わないわ。俺が担当じゃないのが残念。一緒に仕事したかったんだけどなぁ。」

そう言われてさらにドキドキしてきた。

「...次、一緒に仕事出来るの楽しみにしてる。また、飲みに行こう。じゃあ、またね。」

これ以上顔が赤くなるのを見られまいと早口でしゃべり、手を振った。

「おう、じゃあな。」

拓海も笑顔で手を振ってくれた。

急がなきゃ、と思い振り返ってドアに向かって歩き会議室から出ると、

ドンっと人の背中にぶつかってしまった。

身長156センチプラス7センチのヒールで頑張ってはいるが、正直長身ではない私は昔っからよく人にぶつかってしまうことがあった。

「ひゃぁ」

自分でも間抜けな声だなと思った。

「すみません。」

と顔をあげると、綺麗な顔が私の方を向いた。

天宮さんだ。

すっごくじーっと見られて思いっきり顔を背けたくなってしまう。

でもきっと失礼だろうし、と思うとそのまま見つめ合う格好になってしまった。


「...別に。」

一言だった。

本当の一言。

天宮さんはすぐに踵を返すとスッと第3会議室の方に向かって行った。

と、思ったらすぐにこちらを振り返った。

「早くしないと、皆を待たせることになるよ。名取さん。」

すごく淡々とした瞳で呼ばれた。

嫌な人なのか良い人なのかよくわからない。

そもそも、この人の表情筋はどうなっているんだろうか。

「すみません、すぐ行きます。」

早足で天宮さんの後を追った。

この時はまだ知らなかった。

天宮さんが私の人生で重要な人物になることを...

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