ビール
皆伐雅美は、寝苦しさを感じていた。
祇園の店を任されて、花との接触が多くなった。
今夜は、黒澤と花の所帯に泊まっているのだが、花の布団に寝る前に、「新しいシーツじゃけ」と、花が言ったこと、これは、皆伐に取っては、残念なことであった。
(匂いくらいかぎたい・・・)
皆伐は、花の布団と言っても、まだ真新しい掛布団に身を包んでいた。
隣の部屋には、黒澤と花が一緒の布団に寝ていると思うと悩ましい気持ちになる。
(やばいな・・・)
皆伐は、自分のペニスが勃起するのを感じた。
花は、黒澤がキスをしてきたので、目を閉じ、寝たふりをした。
花が寝返りをうつと、黒澤が、「ベッドがいい?」と聞いて来た。
「ベッド?」
花は目を開けた。
「そうじゃけ」
花は、黒澤の方に寝返りをうち、「ベッドがいいじゃけ」と答えた。
皆伐がいきなり、「いいベッド屋を知ってる」と言った。
「東京じゃけ?」と花が聞くと、「いや、違うとこ」と皆伐が言い、黒澤が、「京都の西陣織のベッドの会社が倒産したじゃけ。そこのベッドを安く買うた」と言った。
「ええ?どこじゃけ?」
皆伐が半分起き上がると、黒澤がその横を取りぬけトイレに行った。
花はもう一度布団の中に入った。
新しいとは言えない布団は、少し重く湿っている。
花は、肩が重苦しくなり、少し寝巻の浴衣の肩をはだけた。
「花が今度から俺の判を押すじゃけ」
皆伐は、天井を見てから花の方を見た。
「何かいいことあるじゃけ?」
花が聞くと、皆伐が、「印鑑は世界に一つじゃけ」と言った。
名前を刻むこと、それは遠い過去では、印鑑だった。
花は、宝石のような印鑑を見たことがある。
黒澤がトイレから出てきて、冷蔵庫をのぞいている。
中古でレトロな冷蔵庫は、黒澤の趣味だ。
黒澤は、ビールを一缶取るとプルタブを開けた。
一口飲むと、花のところまで持って行った。
花が、「いいじゃけ」と言うと、黒澤が無理矢理ビールを口に含み、花にキスをしてきた。
ぬるいビールが花の口に広がる。
「あらら・・・」と、皆伐は、「やっぱり三・・・」と言った。
黒澤が、「仲良うしたバツじゃけ」と言い、もう一度花にキスをすると、皆伐が、「男の嫉妬じゃけ」と背中を向けた。
黒澤が花のクリトリスを指で撫でた。
「これからじゃけ」
黒澤が言うと、皆伐が、「花との契りは永遠じゃけ」と、背を向けながら言った。
花は、不安を振り払うように、体が重くなっていった。




