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3.緩くいこう

「おはよう」

 色がない肌は、まだ健康的とは言えないが昨日よりは良さそう。


「⋯おはようございます」


 目を合わせはしてくれないけれど挨拶は返してくれた。


 昨日、ちゃんと話そうかなと思っていたけど、遅い時間だったのもあり今日に持ち越した。


 ただ、レインさんが早朝から王都より呼び出しがかかってしまい不在である。


 どうしようかなぁ。私、実は子供が苦手なのだ。では何故、子供のサポートに力を入れているのとツッコミがきそうだけど。


 とにかく二人きりで話をしてみるかと周囲に目配せすれば、察しの良い彼らは静かに退出してくれた。


「リオール君、昨日今日で落ち着かないわよね。ただ、少し決めておかないといけない事があるの。あ、食べながら聞いてね」


 デザートへ手を伸ばした彼は、サッと手を引っ込めたので遠慮なく食べてと促せば、また手は伸びていき苺に似た赤い果物を口に入れた。


「昨日、私も考えたんだけど、レインと私の子になる気はある?勝手に決めちゃうのは良くないから聞きたくて」


 ただ、一つ気がかりはあるのよね。


「まだ、此処に着いて一日しか経っていないのに、とても難しいと思う。ただ、グラニー家の子供として手続きをすると親戚や他の家門から君を守れるのは確かなの」


 ついでに口にはしないけれど、立ち位置が明確になれば、この屋敷で働く者達の態度も違ってくるはず。


 この世界では、私が生きてきた場所よりも立場による線引きが厳しいから。


「あと、うちのコになっても私の事をお母さんとか呼ばなくていいからね。あ、でも、オバサンやババアは悲しいかなぁ。何て呼んでもらおう」


 いや、世間からすれば、立派な?オバサンかもしれないけれど呼ばれ方で、すっごく老けた気がしてくるのよ。


 そんな事を考えていたらレインに似た青い綺麗な目が、瞬きをしながら私を初めて見た。


 その顔には、先程までなかった少しの驚きが浮かんでいる。


「そうね。レインが5日後に帰宅する予定になっているから、それまでに決めてもらおうかな」


 短いけど、しょうがない。早く決めないといけないから。彼は言葉を濁していたけれど、どうやら強引に連れ出したと推測できる。なんなら、一発くらいぶん殴っている気がするなぁ。


「⋯んで」

「ん?」

「僕なんかに⋯なんでそんなにしてくれるんですか?」

「え?まだ何もしてないけど」


 ご飯とお風呂くらいよね。まぁ、衣食住は大切よ。


「僕は、掃除は少しできます。他は何もないです。マナーや知識も」


 何でも今にも息絶えそうなくらい暗いのよ。


「え、リオール君って、9歳でしょ?一桁しか生きてないのに」


 それより掃除が出来るってどういう事?平民ではなく坊っちゃんよね?


「うーん、知識は学びたいなら先生を探すし、マナーも私から見れば問題ないかと思うけど。あ、私も勉強中だから一緒に受ける?」


 彼の目がまん丸になった。


「私、リオール君より知識もマナーもなってないの自信もって言えるわ」


 いや、自信もつなよと心でツッコむ。


「一つ約束して欲しいの。もし、何か困った事があったら私か貴方の身の回りのお手伝いを頼む予定のミラちゃんと騎士のルマンドさんに聞いてね」


 困ったら人に聞いたり、お願いするは、実は難しい。コミュニケーション力が必要だから。


「あとは、よく遊び、よく食べる。あ、三つになっちゃうか」


欲張りすぎるかな。


「まぁ、緩くいこうよ」


 私は、君の表情が変化したのを見れただけで今日は満足ですよ。


 あぁ、レインさん居て欲しいな。保育園の勤務はしていたけれど、主に行動範囲は調理場だったし。子供の接し方で何が正解なのか、分からない。


 何度でも呟くけど、子供は苦手だけど嫌いじゃない。



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