第九話 ホント
風が強いので、一旦屋内に入って風が落ち着くのを待つことになった。
そこでは生徒たちみんな談笑していた。
少し遠くで彩那と彩那と同じクラスの女子が話している中から僕の名前が聞こえてきた。
「ねぇ彩那ちゃんって入学して一ヶ月しかまだ経ってないのにもう彼氏作っちゃったんでしょ、彩那ちゃん可愛いからモテてるしいいなー」
「そうよ、遥希は私の彼氏。ずっと好きだったんだから」
「えぇーそうなのー」
「そう、中学は別だったけど高校で偶然再会したの」
「へぇーロマンチックねー」
はぁ彩那が俺のことが好きだった!?
いったいいつから?僕は少し動揺した。
僕もとりあえず翔と喋ろうと翔のとこに歩き出したら前に桜が現れて、僕に話しかけてきた。
「ねぇ遥希ちょっと話さない?」
「いいけど」
「遥希って彼女いたことあるの?」
「ないよ、そんなにモテなかったしね」
「そう、あと聞いていいかわかんないんだけど、なんで遥希って中学の時学校あんまりこなかったの?」
「それは……それは」
僕は必死に言い訳を考えた。本当のことを言いたくなかったからだ。
「それはね、まぁ色々な理由があったんじゃないかなー、僕もよくわかんないや」
結局濁した言い方しかできなかった。
「そうなの、なんか辛いことがあったら教えてね、私はいつでも遥希の味方だから」
「う、うん」
そう言いながら桜の言葉に聞き覚えを感じる。かつて僕に同じことを言った奴らが逆に僕に危害を加えてきた。
だから僕は人のことをあまり信用できなくなって、メンタルも弱くて、自己防衛ばかり意識している。
「遥希、遥希、おい大丈夫か」
僕は翔の声で我に帰った。
「あぁ大丈夫、ごめん心配しないで」
「風がおさまったから、カレー作り再開だってさ!」
「わかった!美味しいカレーつくろうな!」
こうして僕はカレー作りに戻った。
翔が火を起こして、睡蓮寺さんと桜が米を用意して、僕と彩那がカレーを作る。
「結構器用なのね、私の彼氏さんは」
僕が野菜を切っていると彩那が言ってきた。
「そうだな、僕は結構器用みたい、家でも結構自分で作ってるからかな」
「そうなの、尊敬するわ」
僕と彩那が何気ない会話をしていると、なぜか桜から強い視線が来たように感じたが、気のせいだろう。
「いただきまーす!」
カレーが出来上がったのでみんなでいただく。うちの班は他のどの班よりも早く出来上がった。
「うめぇー」
翔がそう言ってみんなもそれに続いて各々の感想を言った。
こんなほのぼのした光景を今の僕は大切に愛してる、昔の僕は退屈だとか思っていたけど。
少しアクシデントがあったが、バスに乗って宿泊施設へと向かう。




